第8話 バグの正体
~第7話までのあらすじ~
神社境内にある神楽殿にて、響はこの世界の神様である王那と対面する。
俯瞰の間と書かれた部屋に連れられた響は、王那に『オーナー』であることを宣告された。
「ここに到達できるのは君だけなんだ、『オーナー』」
オーナー。所有者。3次元世界を所有する権利を持つもの。言い換えれば、神様である。
響は王那の言葉により、自分が世界の半分の所有者であることを自覚した。
その瞬間、響の中に膨大な記憶が流れ込んだ。
所有権を得たことにより、3次元の世界にバグが起こったこと。
3次元世界の人間と4次元世界の人間の同数が入れ替わったこと。
そして、世界に施された「最適化」というシステム。
今まで起きた異変、つまり旗音がこの世界から消えたことやオトナと呼ばれる人間が出現したことは、これらの記憶を当てはめればすべてつじつまが合うのだ。旗音を含むこの世界の一部の人々が4次元へ移動し、同じ数の4次元の住人が3次元へ移動してきた。それがオトナ。世界がバグった原因は、全て響にあったのだ!
...いや、1つだけ説明できないものがある。糸葉のオトナ化だ。糸葉は入れ替わりで大人になったわけではない。
「君がなぜ『オーナー』になったか。きっかけは分かるかい?」
(オーナーになった、きっかけ......!!)
ああ、思い出した。2日前に触れた、Half of the Worldと書かれた自然石。
あの石に触れたことで、この世界のオーナーであった王那との契約が結ばれ、世界の半分の所有権が響に与えられたのだ。
「思い出したかな?あとは自分の目で確かめてくると良い。それに、糸葉ちゃんのこともね」
そうだ。糸葉だ。今すぐ家に帰って、もう一度あの場所へ行こう。
響は王那に、心から礼を言った。
「今日は本当にお世話になりました」
「またいつでも来るんだぞ」
王那は満足したようにうなずきながら答え、最後に付け加えた。
「それとひとつ。『オーナー』に関するすべてのことを、人に話してはいけないよ」
人差し指を口に当て微笑み、その逆の手を響へ振った。
響が家に帰ると、家の明かりは消えていた。
*人物*
・国見響 :物語の主人公で、県内の高校に通う男子高校生。妹とアパートで2人暮らし。
・国見糸葉 :響の妹。県内の中学校に通う女子中学生。
・王那 :3次元世界の神様。第1話で登場した、謎の少女の正体である。
・神楽美心 :神社に仕える巫女。
・篝茶緒 :バグ調査RGBのサードリーダー。
・中野旗音 :響と同じクラスの女子高校生。成績・人柄ともに良く、男女どちらからも人気が高い。
・仕立ハルヤ:響と同じクラスの男子高校生。響の仲の良い友達である。
*発生したバグ*
・空白の半日
2028年2月28日の昼12:00~夜24:00までの12時間の記憶を持つ者はいない。
・国見糸葉のオトナ化
国見糸葉は身長およそ230cmのオトナになった。
・中野旗音の消失
2028年2月28日を最後に、中野旗音は姿を消した。
・神社の違和感
3次元と4次元をつなげる神社。
・契約成立
4次元の住人は3次元世界において武力での戦闘を起こすことはできず、これに従い決着をつける。
王那から宣告を受けた響は、バグの正体を知ることになった。
きっかけが自然石に触れたことだと知り、糸葉を連れてもう一度訪れるため家に帰ると、明かりはついていなかった。
小ネタ)
「最適化」システムについて説明します。
このシステムは2028年2月28日12:00~24:00の間に行われた「メンテナンス」のときに導入されました。これは、3次元世界に住む響たちの記憶がなかった時間と一致します。
最適化された例は以下の通りです。これ以外にもあります。
・世界の言語が日本語に統一
・「契約成立」の導入
・入れ替わった人々への最適化(生活必需品の配布など)
世界の半分についてですが、これは面積などの物理的な半分ではなく、概念的な半分を指します。
難しい話ですね。自分で考えておいてなんですが、筆者もこれについてはよくわかりません。