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第26話 バグ調査組織RGB

~第25話までのあらすじ~

 王那おうなとの関係が進展したひびきたちは、ゲーセンで別れたあとアパートへ帰った。到着したのは夜11時前だった。


―2028年3月3日(金)―

「あっ、おにいちゃん元気~?久しぶりだね~」


 電話の音で飛び起きた響は急いでスマホを開いた。そして朝11時。寝起き3秒で妹との電話である。


「おはよう、糸葉いとは。オレはいつも元気だぞ。糸葉も相変わらずか?」

「私は今日もピンピンです!あ、あとお誕生日おめでと」


(...いや遅いんだが!?)

「ありがと糸葉~!」

響は大人の対応をした。


「あとね、おにいちゃんに言っておきたいことがあるの」


 響に少し緊張が走った。トーンはいつも通りだが、何をそんなに改まって言うのか。


「リリーさんがね、今日おにいちゃんに会うんだって」


 えっ?リリー?

 一瞬その名前にピンとこなかった。しかし響は思い出した。

 一昨日、妹が電話越しに言っていた名前。RGBのリーダー、とどろリリーだ。

 

「だからね、今日はおにいちゃん、家にいてほしいの!」


 糸葉がRGBに連れ去られてから今日で3日目。よほどよくしてもらってるのか、初日の糸葉から感じた危機感は、今となってはその面影もなかった。


 自分を連行しようとしたバグ調査組織RGBの、リーダーと対面する。

 その状況に響は恐怖と関心を覚え、脈拍が早くなるのを感じた。


 電話の声が少しうるさかったのか、寝ていた3人も目を覚ました。


 みんなで洗顔を済ませ、4人で朝食を食べる時間。響は糸葉からの電話の件について、3人に話した。

「てなわけで、オレは今日、連行されます!」

「えええぇっ!」

 驚きを隠せなかった永久野とわのに対し、

「轟リリー...なんでひっきーを狙っているのかしら」

と冷静な伊奈瀬いなせ。そして

「響くん、何か悪いことしたんですか?」

と純粋な疑問を投げかける衣央いお。この3人は、RGBについても、もちろん轟リリーについても初耳であった。一昨日おとといのベランダでの盗み聞きは、どうやら失敗していたようである。

「オレは特に悪いことはしてませんが、えーと...その人はたぶん、オレのことが好きなんだと思います」

「なっ!」「えっ!」「んっ!」

3人は同時に声を上げた。

「冗談です。オレはまだリリーに会ったこともありません」

「ひーくんの意地悪!」


「そこでです。連行されても良いように、オレの位置情報を携帯に登録してください」

「そんなことしなくていいわよ。私がひっきーを守るんだから」

「そこを何とかお願いします。相手の戦力が分からない以上、準備しておくに越したことはないんです。それに、オレがどこにいるか分かるのって、便利じゃないですか?」

「...ひっきーがそこまで言うなら」


 響の1人勝ちであった。


 朝食の時間が終わり、響は3人がそれぞれ持っている携帯のGPSアプリに、自分の位置情報を追加した。

「これで響くんの居場所がわかるんですね!」

と衣央は嬉しそうに言った。


「あっ、それで、轟リリーって人はいつ来るんですか?」

「さあ、それは分かりません。糸葉からは何も聞いてな———」



 響が話していたその瞬間、4人は別の場所へ移動していた。

「...え?」

 何かの施設だろうか?大広間だ。施設、施設...


「うわっ、ここどこ!?急に何が起きたの?」

 そう言う永久野だけでなく、伊奈瀬や衣央も突然の出来事に理解が追い付いていないようだ。


「初めまして、だね。国見響」


 急に後ろから声が聞こえ、響たちが振り返ると、そこにいたのはオトナ...

 ではなく、響より小さい10代前半の女の子だった。そしてこれが声の主だと、響は直感でわかった。

「キミは...?」


 彼女の答えに、響は自分が思い違いをしていたことを知る。

「私は轟リリー。この組織のリーダーだよ」


(...この子が轟リリー?)

 篝茶緒かがりちゃお福田ふくだあいりの上に立つ轟リリーを、響はオトナだと思い込んでいた。しかし実際は、自分より目線の低い、響と同じ3次元の住人だったのだ。


「私はね、オーナーである君に会いたかったの」


「響くんを、どうするつもりですか?」

 衣央は彼女をかなり警戒しているようだ。響の前に立ち、リリーを見つめている。


「どうもしないよ。そこをどきなさい」

「嫌です」

 リリーの強い命令を拒否した衣央の隣に、伊奈瀬と永久野も並ぶ。響を守る鉄壁が完成した。



「ふ~ん、あなたたちは私の邪魔をするのね。それに何も知らなそう。それならあなたたちに用はないわ。またね」


 そしてその空間から、伊奈瀬、永久野、衣央の姿が消えた。


*人物*

国見響くにみひびき  :物語の主人公で、県内の高校に通う男子高校生。妹とアパートで2人暮らし。

国見糸葉くにみいとは :響の妹。県内の中学校に通う女子中学生。

王那おうな      :3次元世界の神様。第1話で登場した、謎の少女の正体である。

神楽美心かぐらみこ :神社に仕える巫女。

角末かくすえ伊奈瀬いなせ:17歳の女子。入れ替わりにより4次元から転移した。

永久野とわのあい:17歳の女子。伊奈瀬とは幼馴染。

科戸衣央しなといお :16歳の女子。いつでもどこでも誰にでも敬語で話し、素直な性格。

・杉野ヤヌ(すぎのやぬ) :響の前にオーナーをしていた、20代前半の男性。口調は軽め。

・福田あいり:バグ調査組織RGBの副リーダー。

篝茶緒かがりちゃお  :バグ調査RGBのサードリーダー。

中野旗音なかのはたね :響と同じクラスの女子高校生。成績・人柄ともに良く、男女どちらからも人気が高い。

仕立したてハルヤ:響と同じクラスの男子高校生。響の仲の良い友達である。


*発生したバグ*

・空白の半日

 2028年2月28日の昼12:00~夜24:00までの12時間の記憶を持つ者はいない。

・国見糸葉のオトナ化

 国見糸葉は身長およそ230cmのオトナになった。

・中野旗音の消失

 2028年2月28日を最後に、中野旗音は姿を消した。

・神社の違和感

 3次元と4次元をつなげる神社。

契約成立ディール

 4次元の住人は3次元世界において武力での戦闘を起こすことはできず、これに従い決着をつける。

・言語の統一

 バグに直接関係しないものはすべて、日本語に統一された。

・2月30日

 存在しない日。響とオトナなどのバグに関する人間以外は、その運動を停止する。

・謎のインターホン

 自然石の近くに出現したインターホン。響の呼び出しに応答はなかった。


バグ調査組織RGBのリーダーである轟リリーは、オトナではなく響と同じ3次元の住人だった。

彼女に用はないと言われた伊奈瀬たちは、どこへ行ってしまったのか。


小ネタ)

 響たちが突然アパートから施設へ移動したのは、本作で何度か出てきている空間転移によるものです。3次元に住む私たちが紙(2次元)を切り貼りできるように、4次元道具を操るリリーにより、3次元世界の響たちは空間ごと切り取られ、施設内に移動させられました。


轟リリーをアナグラムすると、

とどろりりい→いろとりどり→色とりどり

となります。バグ調査組織の略称RGBはResearch Group of Bagsです。

RGBというのは、RED-GREEN-BLUEの三原色のことも意味するので、「色とりどり」にしました。

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