表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/40

第18話 今日は遊ぶ日(2)

~第17話までのあらすじ~

 庭園を満喫した4人は、ひびきが得意とする大きなゲームセンターに向かった。店内のにぎやかな雰囲気、目を輝かせる永久野とわのたちに、響はそれぞれ千円札3枚をわたし、遊ぶ準備が整ったのであった。




 一番最初に100円を投入してみたのは、永久野だ。ツチノコみたいなぬいぐるみを見て「かわいい...」の一言。響は思った。

(そんなぬいぐるみを見るあなたがかわいいですよ、永久野さん。)


 しかしこの筐体きょうたい(=ゲーム機)、3本爪設定である。この設定は、数十回プレイしたあと、「そろそろ本気出すか~」と言わんばかりに、ようやく景品を持ち上げる力を出すもので、「確立機」と呼ばれている。

 永久野さんは300円分プレイしてみたが、ツチノコは最初の位置とほとんど変わっていない。そして響は思った。永久野さんにかっこいいところを見せたい、と。

 そして次に入れた100円で、響は永久野に、ぬいぐるみをプレゼントすることになる。まだパワーがあまりないアームを使って、どのように景品をゲットしたのか。


 タグ掛けである。ぬいぐるみについているタグに、落とし口から一番遠い爪を入れ、アームの閉じる動きと上昇する動きで引っ張ってくる技。いわば「確率無視」である。3本爪のゲーム機には、操作用スティックと下降ボタンがついている。下降ボタンの中には、アームの下降を停止できる下降停止の役割も兼ねるものもあり、これが非常に重要なのである。


 永久野はツチノコぬいぐるみを胸いっぱいに抱きしめていた。やはり、どっちがぬいぐるみなのか分からないくらい、永久野はかわいいのである。


 そんな永久野に響は見惚れていたので、1発で獲物をしとめた響に尊敬のまなざしを向ける伊奈瀬いなせ衣央いおに、当の本人は気付かなかった。


 次に100円を入れてみたのは、衣央である。狙うは今年で10周年を迎える、人気アニメのキャラクターのフィギュアである。景品が入った箱はとても大きく、デカ箱と呼ばれるそれは、まばらな間隔でフィールド内に固定された、複数本の突っ張り棒の上に置かれている。響の十八番おはこ、橋渡し設定である。


 この設定の難しい所は、デカ箱の場合、その箱の向きによっては、アームが箱の下をとらえきれないことである。衣央もやはり、景品が斜めにはまったような形から抜け出せないようでいる。数回試行錯誤したあと、彼女の目線は響へと向かった。出番である。

 そして今回もまた、響はワンチャンスをモノにした。どのようにしたのか。


 し回しである。デカ箱といえど、箱は箱。パッケージには隙間がある。その隙間に片方のアームを挿し込み、閉じる勢いで景品を投げまわす技。正確なアームコントロールが試されるうえ、100%成功する技ではないが、難易度が高い分、成功したときの気持ち良さは格別である。

 景品を受け取った衣央は、先ほどと同じように、響に目を輝かせている。今度はそれに響も気づき、エッヘンというような顔をした。


 そして最後は伊奈瀬。彼女が狙っている景品は、カップルがお揃いで使えるような、2つのコップのセット。こちらも同じく橋渡し設定である。ただしこちらは疑似箱ぎじばこ設定と呼ばれるもので、ダミーの箱をゲットすることで、欲しい景品と交換できる設定となっている。

 こちらもプレイヤーの実力が試される設定であり、響は再び出番を待っていたのだが...


ゴトン!


その音が聞こえてきたのは伊奈瀬の1回目のプレーの直後だった。いったい何が起きたのか。


 バランスキャッチ(BC)である。アームの先端についている爪はある程度の幅があり、箱の重心を捕らえることで、そのバランスで持ち上げる技。アームが景品を持ち上げてから離すまでの間に、景品はバランスを崩しアームから落下するが、その落下の仕方によってはそのまま突っ張り棒の間をすり抜け、ゲットすることができるのだ。


「フン!どうよ、私の実力は!」


 自信満々な伊奈瀬。橋渡し設定は実力が90%とは言ったが、残りの10%は運。そしてバランスキャッチは、その10%のほうなのだ。

 響は当然それに気付いているが、「めっちゃうまいです!」とだけ言っておいた。重心を捉えられたこと自体は彼女の実力だからである。


 何はともあれ、みんなほしい景品を手に入れることができたのだ。財布にはまだお金がある。

「まだまだ遊ぶぞ~!」


 永久野の言葉は、第2ラウンドの始まりのゴングとなった。


*人物*

国見響くにみひびき  :物語の主人公で、県内の高校に通う男子高校生。妹とアパートで2人暮らし。

国見糸葉くにみいとは :響の妹。県内の中学校に通う女子中学生。

王那おうな      :3次元世界の神様。第1話で登場した、謎の少女の正体である。

神楽美心かぐらみこ :神社に仕える巫女。

角末かくすえ伊奈瀬いなせ:17歳の女子。入れ替わりにより4次元から転移した。

永久野とわのあい:17歳の女子。伊奈瀬とは幼馴染。

科戸衣央しなといお :16歳の女子。いつでもどこでも誰にでも敬語で話し、素直な性格。

・杉野ヤヌ(すぎのやぬ) :響の前にオーナーをしていた、20代前半の男性。口調は軽め。

・福田あいり:バグ調査組織RGBの副リーダー。

篝茶緒かがりちゃお  :バグ調査RGBのサードリーダー。

中野旗音なかのはたね :響と同じクラスの女子高校生。成績・人柄ともに良く、男女どちらからも人気が高い。

仕立したてハルヤ:響と同じクラスの男子高校生。響の仲の良い友達である。


*発生したバグ*

・空白の半日

 2028年2月28日の昼12:00~夜24:00までの12時間の記憶を持つ者はいない。

・国見糸葉のオトナ化

 国見糸葉は身長およそ230cmのオトナになった。

・中野旗音の消失

 2028年2月28日を最後に、中野旗音は姿を消した。

・神社の違和感

 3次元と4次元をつなげる神社。

契約成立ディール

 4次元の住人は3次元世界において武力での戦闘を起こすことはできず、これに従い決着をつける。

・言語の統一

 バグに直接関係しないものはすべて、日本語に統一された。

・2月30日

 存在しない日。響とオトナなどのバグに関する人間以外は、その運動を停止する。

・謎のインターホン

 自然石の近くに出現したインターホン。響の呼び出しに応答はなかった。


庭園をあとにした響たちは、近くの大きなゲームセンターで楽しい時間を過ごしていた。

響は3人に、6年間磨いてきたUFOキャッチャーの実力を披露するのであった。



小ネタ)

キラキラした目で店内をのぞいていた3人も、実はこれが初めてのゲームセンターではない。

第17話で出てきた庭園での会話では、3人は10年以上前の記憶がないと言っていた。

つまり、伊奈瀬たちはゲームセンターに行ったことが無いのではなく、 ...?


伊奈瀬はクレーンゲームで、カップルがお揃いで使えるようなコップのセットを獲得していた。

...誰と使うつもり!?


なお、筆者もクレーンゲームが好きである。兄とよく行く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ