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第15話 残された時間

~第14話までのあらすじ~

 ひびきのアパートに訪れた、前オーナー杉野ヤヌ。彼が響に見せた「杉野ヤヌ理論帳」には、ヤヌが記したオーナー時代の出来事があった。それは響たちにとって、とてもつらいものだった。

 しかし、ヤヌは自身のオーナー時代の記憶だけでなく、姉がいたことすらも覚えていなかった。


「多分姉は、禁忌を犯すと記憶が消えることを言わないでくれたんだろう。言ったら尚更、俺が禁忌を犯しにくくなるからな」


杉野ヤヌはそう言った。禁忌を犯すと...記憶が消える...。


 実際は、バグに関するすべての記録と記憶が、全世界から消えてしまったらしい。杉野美心も4次元に行ってしまったことで、始めから3次元に存在しなかったものとされたのだ。つまり、記憶が消えたのではなく、もともと存在しなかったことにされた...!


 これでは、いま彼が神楽美心に会ったとしても、それが姉だと認識できない。手の届かない世界へ姉が行ってしまった、弟の傷をいやす唯一の特効薬、姉との再会。それが失われただけではなく、そもそも彼は、傷を負っていることを知らないのだ。


「俺が教えられるのはここまで。あとは自分で答えを見つけると良い。」


そう言い残して、ヤヌは帰っていった。


 響は杉野ヤヌのおかげで、当時の彼より早い段階で情報を得ることができた。禁忌を犯すことと、禁忌を犯さずに時間制限(タイムリミット)を迎えること。しかし響は気付いてしまった。それが行き着く未来がどちらも残酷なものであることに。

 自分がオーナーであることを他言し、禁忌を犯すことを選べば、全世界からバグに関する記録と記憶が消え、糸葉が4次元へ飛ばされ、糸葉が存在したこと自体を忘れる。

 時間切れ(タイムリミット)を待ち、禁忌を犯さないままオーナーを終えること選べば、自分が世界から消される。これがオーナーとしての役目を果たせなかったことへの罰なのか。


頭が真っ白になった。


 時間切れ(タイムリミット)まであと4日。猶予があると思っていたが、これが自分に残された時間と考えると、あまりに短すぎる期間だ。


(...いや、待てよ?そもそもオーナーとしての役目って何だ??)


 ふと響は思った。オーナーには、何かするべき役割があるのだろうか。そうでなきゃ、この結末はあまりに不条理だ。


「お風呂、いいかな」


 永久野とわのが落ち着いた声で言った。響は時計を見た。0:30を過ぎている。理論帳を読むのに集中していて気付かなかったが、その声をきっかけに、体に猛烈な疲れが押し寄せるのを感じた。それもそのはず、朝早くからオトナと知り合い、慣れない飛行板に乗って自然石の場所まで行き、帰ってきたら杉野ヤヌと出会って彼の過去を知る。伊奈瀬いなせと永久野に初めて出会ってから、まだ1日も立っていないことに驚くほど、響は時間を長く感じた。


永久野、伊奈瀬、衣央いおの順に風呂に入った。

オレが出会った順番と一緒だな、などと考えながら、響は無機質なアパートの天井を眺めていた。



 お客様用の布団を総動員して寝たのは、その夜が初めてだった。それでも響が寝る布団がなかったので、伊奈瀬に気付かれないよう、端で寝ていた彼女の背後で息をひそめながら寝た。



*人物*

国見響くにみひびき  :物語の主人公で、県内の高校に通う男子高校生。妹とアパートで2人暮らし。

国見糸葉くにみいとは :響の妹。県内の中学校に通う女子中学生。

王那おうな      :3次元世界の神様。第1話で登場した、謎の少女の正体である。

神楽美心かぐらみこ :神社に仕える巫女。

角末かくすえ伊奈瀬いなせ:17歳の女子。入れ替わりにより4次元から転移した。

永久野とわのあい:17歳の女子。伊奈瀬とは幼馴染。

科戸衣央しなといお :16歳の女子。いつでもどこでも誰にでも敬語で話し、素直な性格。

・杉野ヤヌ(すぎのやぬ) :響の前にオーナーをしていた、20代前半の男性。口調は軽め。

・福田あいり:バグ調査組織RGBの副リーダー。

篝茶緒かがりちゃお  :バグ調査RGBのサードリーダー。

中野旗音なかのはたね :響と同じクラスの女子高校生。成績・人柄ともに良く、男女どちらからも人気が高い。

仕立したてハルヤ:響と同じクラスの男子高校生。響の仲の良い友達である。


*発生したバグ*

・空白の半日

 2028年2月28日の昼12:00~夜24:00までの12時間の記憶を持つ者はいない。

・国見糸葉のオトナ化

 国見糸葉は身長およそ230cmのオトナになった。

・中野旗音の消失

 2028年2月28日を最後に、中野旗音は姿を消した。

・神社の違和感

 3次元と4次元をつなげる神社。

契約成立ディール

 4次元の住人は3次元世界において武力での戦闘を起こすことはできず、これに従い決着をつける。

・言語の統一

 バグに直接関係しないものはすべて、日本語に統一された。

・2月30日

 存在しない日。響とオトナなどのバグに関する人間以外は、その運動を停止する。

・謎のインターホン

 自然石の近くに出現したインターホン。響の呼び出しに応答はなかった。


杉野ヤヌは、記憶が無くなったのは禁忌を犯したためだと言い残し、帰っていった。

響は彼の本のおかげで、バグのことがまた少しわかったのだった。


次回からは少し雰囲気が変わり、コメディ中心になるかと思います!

響たちの愉快な数日間をお届けします。


小ネタ)

本作品では

飛行板=フライングボード、時間切れ=タイムリミット

などの、英語での読みが使われています。その理由は、バグに関連しない言葉が日本語に統一されたため、それらと区別するためです。英語が使われている言葉があれば、それはバグに関係しているということです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ただ今追いつきましたー。 最初に言っていた通りめっちゃ考え込まれているのがわかります! 無理のない程度に更新よろしくお願いします!
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