ミラーマンに憧れて
僕はミラーマンに憧れている
ミラーマンとは、僕の住んでいる結界村に昔いたという結界師で
あらゆる攻撃を防ぐのみならず、
鏡のように跳ね返して敵を倒したという村の伝説の英雄である
そんなすごい結界があるんだと、小さい頃は目を輝かせていた
この結界村では村の中心にある結界樹の実を小さい頃から食べるので
住民はみんな結界を張る力を持つ
5才で手のひらくらいの円、10才で体くらいの円、15才で体を覆う半球、
あとは年をとるごとにそれを強く大きくしていく
結界が一人前と認められれば村を護る仕事につくか
村を出て働くか、自由に決めることができる
5才、10才と順調に成長した僕だが、
しかし今年15才となるのに半球型の結界がまだ作れない
結界は平面の円のままで曲がりもしない
もうすぐお披露目会があるというのに、このままでは落ちこぼれ確定だ
ほかの子たちはみんなできるのに、なぜだ
しかも厚みもみんなより薄い気がする
衝撃を受けるとすぐに割れる
ガラスの少年とかガラスの平面とか言うのはやめてくれ
いつか絶対にミラーマンになって(予定)この村を出て、
長老の孫娘のブー子ちゃんの誘惑攻撃から逃げ切ってやる(予定)
そして今日は村の広場でお披露目会
5才の子たち、10才の子たちと続き、落ちこぼれはなし
ううむ、まずいな
あれから夜も寝ないで(ウソ)特訓したのに効果なし
このままでは・・・
はい~、僕だけが落ちこぼれ~、とほほ~、ぽてちん
ああ、ブー子ちゃんの慰めも今日だけはうれしいとか思ってしまう自分がイヤ
私が養ってあげるから、って、いや、それだけは絶対にイヤ~
成長が、きっと成長が遅いだけで、僕はきっと大器晩成型~
将来きっとすごい結界師に、僕はなる!(予定)
え? 長老が呼んでいる?
遠くにも結界を出せるのかって? 出せますよ!
半球は大きくするのは大変らしいですけど、平面の円なんで
見える範囲ならどこへでも~へへへ(言ってて悲しい)
え? 長老のそばに? はいはい。
横にできるかですか? できます回転できます ぐりんぐりん
あ、長老、その手に持った石はなんですか? もしや
叩かないで~、割れると危ないですよ~、叩かないで~
パリーン
ああ~・・・
え? 特別に合格? なんで?
ただし長老の孫娘の婿になること?
ブー子・・・図ったな、ブー子!
ぐぐぐ、しかし、今 村を出る能力も甲斐性もない・・・
く、来るなブー子
結界! (バリーン!) ですよね~・・
ぎゃああ、抱きしめないで~
強い、力が強い、なにかが出る!
だ、だれか、たす・・けて・・
夜、長老宅にて
「長老、なぜあの落ちこぼれを身内に引き込むのですか?」
「村長よ、平面の結界を出せるか?」
「・・・これでいいですか?」
パリーン
「普通の結界は端に衝撃を加えると結界が維持できなくなる」
「はい」
「この石を見よ」
「切れ目が入ってます」
「あの子の結界の端で切ったものじゃ
普通の結界は面で守るものじゃが、あの子の結界は端で攻めるものじゃ
あれは先祖がえりじゃ
実はミラーマンの伝説は隠されたもので、彼は敵の攻撃を跳ね返したのではない
結界を縦につかって敵を切り裂く攻撃結界を操る無敵の英雄なのじゃ
向かってくる敵の前に置くだけで、敵は縦に二つに裂かれて死ぬ
立っている敵の足元から結界を生やせばやっぱり敵は裂かれて死ぬ
(注:スライサーV、シルバークロス 参照)
あれを外に出してはいけない 危険じゃ
また使い方を気づかれてもいけない
目の届くところにおいておとなしくさせておくことじゃ
できれば孫娘と仲良くして血を残してくれればいいがのう
ふぉっふぉっふぉっ」
村長は言葉を失い動けなかった
おしまい