信濃の初陣
「旗艦『信濃』抜錨!!両舷微速、呉を出撃する!」
数カ月前に艤装工事を終えた「信濃」は海軍司令部の下命を受け、呉を出撃した。
艦爆「彗星」や艦攻「流星」などの新鋭機を搭載した信濃艦隊はフィリピンへ舵をとった。
護衛には阿賀野型軽巡2隻秋月型駆逐艦10隻が護衛についている。
―ルソン島沖 80キロー
「涼月の電探に機影探知。距離50キロ。向かってきます」
最前列を航行していた駆逐艦が敵機を探知した。
信濃の飛行甲板から「紫電33型」が発艦する。
「紫電33型」は傑作機といわれた紫電改を艦上機に改造したものだ。
翼内燃料タンクを採用し、自動消火装置も搭載している。航続距離は、零戦よりは劣るものの、艦上機としては申し分なかった。
敵機は双発飛行艇のPBYカナリアだ。
旧式で、防御も貧弱なこの機体は、20mm4門という高火力を前にあっという間に撃墜された。
「偵察機、発艦せよ!!」
紫電に続き艦攻流星が偵察のため発艦する。
こちらは機数で不利なため、先に叩かなければならない。
そして2時間後、7番機が敵の機動部隊を発見した。
大型空母4隻を始めとする大艦隊だ。
補給と給弾を終えた機が次々に発艦していく。
全機が発艦した直後、後方から友軍の編隊が接近してきた。
軽空母艦隊が後方で艦載機を「信濃」に送っている。
大和型で、被弾に強い信濃は、前線に出て中継基地の役割を担っている。
総勢500機の航空機が米軍艦隊を目指した。
数カ月前は新兵とよばれていた若者も、戦場を経験し、今では周りと同じほど練度が上がっていた。
そして、護衛の戦闘機隊がレーダーとVT信管をまたも無効化したため、米軍は仕方なく旧式の対空砲弾で応戦せざるを得なかった。
VT信管に頼り切っていた米軍は有効弾を得ることができず、新型の攻撃機はみるみる距離を詰め攻撃を開始した。
艦攻「流星」の攻撃により、軽空母3隻と大型空母2隻が航行不能になり沈没、その後爆装した「彗星」の攻撃により残りの空母も損傷し、米軍は引き上げた。
しかし、物資を満載した輸送船は足が遅く、硫黄島の防衛作戦を敢行した大和艦隊に捕捉され、壊滅状態に。フィリピンは大打撃を受けたが、アメリカの海兵隊を全滅させられた。
大規模な攻撃が無いことを確信した大本営はオーストラリアへの攻撃作戦を立案した。
インドネシアのジャカルタに陸戦隊を乗せた輸送船団と「大和」「武蔵」
「信濃」を主力とする艦隊が停泊している。
1944年10月4日
オーストラリアへの上陸作戦「ハ号作戦」が発動された。
次回、太平洋最大の拠点オーストラリアへの攻撃が行われます!!