一触即発
第一空母打撃軍。
大日本帝国の誇る最新鋭かつ、最強の艦隊だ。
旗艦は戦艦大和。終戦後も何度も近代化改修を施し、今なお第一線を担っている。
主砲は今なお46センチ砲。しかし、砲弾も最新鋭のものだ。
射程は150キロ。GPS信号を受信しつつ目標に向かう。
もはやこれは砲弾ではなくミサイルだ。
甲板の15,5センチ副砲は撤去され、代わりに10×10のVLSが設置されている。
対空火器群の高角砲や機銃はCIWS高性能20ミリ機関砲や魚雷発射管、対潜グレネードランチャーなどが装備されている。
速力も、現代の駆逐艦や空母に随伴できるよう、30ノットを誇る。
現代戦の主役たる空母は二隻「赤城」と「加賀」だ。
この二隻は、ミッドウェー海戦で喪失した空母の名前を踏襲した二代目だ。
一隻当たりの航空機搭載数は約60機。 哨戒機や警戒機などを除いた戦闘機の搭載数は50機だ。
搭載機は22式艦上戦闘機、通称F-22だ。
高いステルス性能と対空、対艦、対地など幅広い任務にも対応可能だ。
また、最新鋭の攻撃システムである「クサナギシステム」も備えている。
日本神話に登場する宝剣の名前を冠したこのシステムは、あらゆる敵を撃破することができるまさに世界最強の攻撃手段だ。
そんな第一空母打撃軍とドイツ海軍の空母打撃軍がにらみ合っている。
事態はまさに一触即発。
第一空母打撃軍司令の鈴木中将はゴムボートで接近し、警告射撃を命じた。
ー駆逐艦「島風」搭載高速艇ー
「ドイツ海軍に次ぐ、貴艦隊は大日本帝国の領海に接近している。至急反転せよ!反転せよ!!」
度重なる警告を受け入れる気配はない。
「やむを得ん、重機関銃での警告射撃を実施せよ」
艇長の古川大尉が銃座に座る。
「弾数100、警告射撃、撃て!!」
ダダダダダダ!!
銃弾が海面に突き刺さる。
直後、ドイツ海軍駆逐艦の機関砲が高速艇を狙った。
「来るぞ、面舵いっぱい!回避せよ!!」
懸命な回避運動にもかかわらず次々と被弾。
高速艇は炎上し、沈没した。
ー「大和」艦橋ー
「司令、このままでは孤立している島風が危険です!我々も攻撃しましょう!」
「うかつに撃つな、この小競り合い、下手をしたら世界大戦になりかねん」
そうだ。世界の二大国の全面戦争となると、核の発射もあり得る。
この戦いは局地戦で勝利しなければならない。
「レーダーに反応、ミサイル多数、向かってきます!!」
先に撃ったのはドイツ軍だった。
護衛の駆逐艦や巡洋艦が一斉に対空ミサイルを発射する。
「大和より各艦に通達。空母を中心とした輪形陣を組め!一発も被弾するな!!」
司令の指示を受け、すぐに輪形陣が組まれる。先陣を切るのはもちろん「大和」だ。
「ミサイル接触します。3、2、1、今!!」
クサナギシステムを潜り抜けるミサイルはいない。鈴木司令にもその確信があった。
しかし
「撃ち漏らしました!数12、向かってきます!!」
「対空ミサイル発射用意!」
「間に合いません!CIWS、射撃開始!
ブーーーーーーーーーーーーーー
機関砲が一斉に発射され、次々にミサイルを撃墜する。
「一基が大和に接近!」
「間に合わない!」
「総員、衝撃に備えろ!!」
ドオオン!!
ミサイルは「大和」の右舷舷側に命中。装甲の厚い部分に命中したため、損害はなかった。
「戦艦が簡単に沈むか!!」
「司令、敵空母から艦載機の発艦を探知、数50、向かってきます!!」




