和平交渉
「それでは、これより第一回日米独和平交渉を開始します」
司会の一言で各々の顔に緊張が走る。
外交の戦争が始まったのだ。
アメリカ側はクーデターにより一時的に政権を握ったマッカーサー元帥。
ドイツ側は対米戦司令官のロンメル将軍。
そして日本側は近衛首相が参列している。
最初の議題は米国がどのように降伏するのかというものだった。
日独両国は強大な軍事力を背景に無条件降伏を迫った。
マッカーサーはその案を承諾し、1945年11月2日。
アメリカ合衆国は大日本帝国及びドイツ第三帝国に対し無条件降伏をした。
調印は後日、ワシントンD.Cに入港している戦艦「大和」の艦上で行われることとなった。
次に話し合われたのは戦後の領土処理だった。
アメリカとイギリスが二つの帝国に対し無条件降伏したため、広大な領土が手に入った。
二か国による協議の末、イギリス本土とアフリカの植民地をドイツのもの、アメリカ全土を50年の期限付きで大日本帝国が領有することになった。
その後は親日独国家として独立させるという話となった。
ハワイは永久に日本領となった。戦略的要衝であったからだ。
また、アジアではソビエト民主主義共和国を独立国としてこのまま維持することを決定。
フィリピンからベトナム、オーストラリアまでの広大地域はすべて日本に併合。
近くのニュージーランドは中立国となった。
東アジア大陸では、中国全土は満州国に併合。なお、大陸海岸は経済特区とし、日本の管理下に置かれた。
中東の油田地帯は日本が現地政府を残しながらも日本への石油輸出を間接的に強制していた。
アフリカのフランス植民地は日本の植民地に移行。そこでの統治は、現地民のことを優遇し、フランスの統治よりも緩くした。
ポーランド、ウクライナ、ベラルーシはすべてドイツ領となった。
ユダヤ人への迫害は止まらず、ドイツ領となった地域からは多くのユダヤ人が満州に逃げてきた。
日本政府は彼らを歓迎し、手厚く保護した。
そこにはあのアインシュタイン博士の姿もあり、特別ビザで日本本土に渡航。東京大学で航空機の設計や核兵器の研究に没頭した。
旧ソ連領はおよそ半分がドイツ領となり、開発途中の戦車や戦闘機の技術はそのままドイツに伝わった。
また、米国で開発されていた原子爆弾のデータは日独両国に渡る予定だったが、研究所の攻撃時に失われたとロンメル将軍が言っていた。
大本営にはドイツとの間である問題を抱えていた。
米軍地下壕に突入した際にドイツ軍の物資援助が確認されたのだ。
証拠もなく、問いただすわけにもいかないが、今後の両国の関係は不透明だ。
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