西海岸上陸
西海岸の空を大量の航空機が埋め尽くしている。
ハワイから発進した富嶽や連山が編隊を組み、海岸を爆撃しようとしている。
海岸の高角砲が散発的に火を噴くが、高度一万メートルを飛ぶ彼らには当たりそうにない。
遂にその巨大な機体から爆弾が投下された。
武装偵察大隊から提供された座標を頼りに爆撃をした結果、沿岸の主要トーチカや野砲などはほとんどが破壊された。
敵戦闘機による迎撃が心配されたが、飛行場は無力化されていたらしく、敵機の姿はなかった。
1945年6月6日 午前8時
輸送船団からたくさんの兵員を載せた上陸用舟艇と戦車が発進した。
爆撃を回避した野砲が砲撃を仕掛けてくる。
だが、この時の西海岸は荒天。荒波の中を進む艇に砲弾を当てるのは難しい。
大きな波浪も味方し、上陸地点まで着実に近づいていた。
距離が2キロを切ると、沿岸の機銃も撃ってきた。
50口径のブローニング重機関銃は上陸用舟艇の装甲を貫通し、乗っている兵員に大きな損害を負わせた。
だが、先頭の艇は既に着岸したようだ。
上陸のための前部ハッチが開くと、陸戦隊の隊員たちが一斉に展開する。
敵も開いた瞬間を狙って弾丸を叩きこんでくる。
そのため隊員は海に飛び込んで上陸する者が多かった。
発砲している機銃を潰すため、空母から発艦した紫電や彗星が近接航空支援を行った。
紫電はロケット弾を8基、彗星は250キロ爆弾を2基装備し、機銃掃射や爆撃で次々と施設を破壊していった。
敵は海岸に深さ2メートル、長さ80キロメートルもの長大な塹壕を掘っている。
銃眼から機関銃が出てきて射撃を開始。
撃ち尽くすと引っ込んで装てんを始める。
場所の特定が困難な為、航空支援だけでは潰せない。
歩兵の最大火力である対戦車ロケットで敵の陣地を破壊する。
煙を噴きながらトーチカに直撃し、中の兵士は火だるまになって出てくる。
20分もすれば、海岸のトーチカや野砲は完全に破壊された。
だが、ここまでに2000人以上の死傷者が出ている。
生き残った部隊は戦車を盾に前進を開始。
破壊された橋の対岸には立ち往生している敵戦車が列をなしている。
航空隊はそこに容赦なくロケット弾や爆弾を叩き込む。
地上部隊が到着する頃には鉄塊と化した敵戦車が炎に包まれていた。
だが、周囲の林にはまだ歩兵が潜んでいる。
ダダダダダダ!!
森林の一角で発砲音がした。
戦車の周りに火花が飛び散り、数人の兵士がその場に倒れこむ。
「敵襲来!総員戦闘用意!!」
すぐに銃を構え、臨戦態勢に入る。
戦車は榴弾を装填し、対歩兵戦に入る。
ゆっくりと森の中に入っていく。
キャタピラが小枝を踏み潰す音だけがあたりに響く。
その時だった。
ドン!!
戦車が地雷を踏んだ。キャタピラは切断され、移動ができなくなった。
どこに潜んでいたのか、100人以上の歩兵が出てきた。
すぐに激しい銃撃戦が始まる。
戦車は機銃と榴弾であたりを吹き飛ばし、歩兵は木々を盾に距離を詰める。
数人の兵士が標準装備である焼夷手榴弾を投げる。
あたりの木々に引火し、次々と燃える木々が倒れてくる。
多勢に無勢だと悟った米軍はバラバラに撤退を開始した。
帝国の進撃は止まらない。
だが、米軍は新型の戦車を開発・製造していた。
新型戦車T34が新たな盾となり、進撃を阻む。