65.内緒のお茶会
雷人が学校へ出かけている日にはメイドたちによるお茶会が開かれる。それは別に主のいない間にサボって休憩するためではない。
「あー、マコさま、おかえりなさいなのにゃ」
「メンマちゃん、またシーツ持ってきたよ」
「ありがとうですにゃ。これがないとメンマの仕事が少なすぎるにゃ」
こっそりと帰ってきている真琴の元へ次々とメイドがやってくる。メンマの次に長い耳をゆらゆらさせながらやってきたのはマーボである。
「マコさま、お茶とクッキーを持ってきたのでございます。ちゃんとお持ち帰り用もご用意してございます」
「マーボちゃん、ありがとね。退屈だからついおやつ食べ過ぎちゃうんだよー」
「それならば戻ってくればよろしいのではないかと思うのでございます」
「でも今はさ、お兄ちゃんが凄い頑張って強くなってきてるでしょ? きっとそれってマコがダメなことしてるから止めたいってキモチなんだよ」
「マコさまはなにかダメなことをしているのですか? ライさまは、マコさまはゲームをしているだけだとおっしゃっていたのでございます」
「うん、それはあってるけど残酷ゲームだからやってほしくないんだって。マコも飽きてきたからもうやめようかなって思ってるけどね」
すると黄色いもふもふのしっぽを右へ左へと振りながら近寄ってきたルースーが話に加わる。
「ルースーはマコさまと一緒にお庭の手入れたしたいのです。今はいつ戻ってこられても大丈夫なように一人で手入れしていてさみしい思いなのです」
「ルースーちゃんは偉いよね。こうやってきれいになってるとお茶が余計においしく感じるもん。柵の野ばらもだいぶ増えたよね」
「ロミさまがこまめに運んできてくださるからなのです。マコさまが戻ってくるのをお待ちしているのはルースーたちだけではないのです」
「そう言われると戻ってこないとダメな気がするね。でももう少しダンジョンを強くしてからね。今はまだボスとおもちゃの兵隊しかいないからさ」
「先日やってきた人間たちは相当に弱くて歯ごたえがなかったんだもの。もっと修行して強くなってもらいたいとマコさまが思うのは当然だもの」
「チャーシちゃんもそう思うでしょ!? あの人たちって元の世界ですっごい高いお金払って遊びに来てるんだってさ。だったらもっと頑張らないと損だと思う」
「どうせならチャーシもやつらと戦って懲らしめてやりたいと思うのだもの。ライさまが強くなってから出番がなくて退屈だもの」
「まーた戦闘凶がおかしなこと言いだしてるにゃ。これだから全身隅から隅まで筋肉でできてる狐は役立たずって言われるにゃ」
「誰が役立たず!? 誰もそんなこと言っていないんだもの。ライさまが真に頼りにするのはこのチャーシに決まっているのだもの」
「そうやってすぐにケンカ腰だから役立たずなのにゃ。メンマのように上品な猫こそお役にたてると言うものにゃ」
「ぐぬぬ、確かにチャーシは平穏時にはあまり役に立てないのだもの。でもいざというときに必要となるからこそダイキさまが創造なされたはずだもの。その否定はダイキさまを愚弄するも同じだもの」
「ち、ち、ちがうにゃ! そういうことじゃないにゃ!」
「まったくこの長毛種はおバカなのだわ。そういうのを藪蛇と言うのだわ。猫の代表みたいに思われるのは迷惑なのだわ。やはり短毛種こそダイキさまの最高傑作なのだわ」
「ナ、ナルは最高傑作なんかじゃないにゃ! メンマが最高に決まってるのにゃー」
こうしていつものようにメイドたちはお互いをけなしあい、常に自分が一番だと言い合うのだが、一人の時間が長くなっている真琴にとっては楽しいひと時だった。
「うーん、マーボの作ってくれたクッキーは最高だね」
「マコさま!? メンマの用意したシーツが一番ですにゃね?」
「いいや、ルースーが手入れしているお庭が一番なのですよね?」
「お留守を預かるチャーシが一番頼りになるのだもの。そうですよね?」
「ライさまのお世話をしているナルが一番なのだわ。ですね?」
「うーんとね、みんな一番だよっ! もちろんポチもいい子」
「ワシはこんなバカどもと同じくくりにされたくないわ。まったく騒がしいったらありゃしない。それよりマコ? お茶もいいがダイキの蔵書からモンスター図鑑を持っていくのを忘れないようにな」
「そうだった。あれがあればもっとダンジョンを面白くできるもんね。楽しみー」
そんな騒ぎを経て、真琴はまたダンジョンへと戻っていった。




