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5.リスタート

 くたびれた和室で角を生やした三人の魔族が座卓を囲んでいる姿はなかなかにシュールだ。ここまで来たらもう事実だと認識するしかなかった。緊張している僕の気持ちを置いてきぼりにするかのように、真琴は大はしゃぎだ。


「早く、早くー

 マコは早く魔法少女になりたい!

 ワクワクで楽しみしかないよー」


「それじゃ早速トラスへ行きましょうか。

 最初はアタシも一緒に行ってあげるからね。

 この家の荷物は屋敷へ転送するから片づけは自分たちでやるのよ?

 これで地球とはサヨナラだけど、他に何か質問は?」


「異世界ってことは電気は通ってないですよね?

 物騒な事とか命の危険とかどんな感じですか?

 それと生活費本当に送って下さいよ?」


「平気平気、屋敷に置いてある説明書読めば全部わかるから心配しないで。

 ただ今使ってるスマホは契約があるじゃない?

 そんな風に地球と結びつきのあるものは消えて無くなってしまうから勘弁してね

 それにしても随分と心配性ね、というか小心者?」


「違います! 真琴に何かあったら大変だから事前に確認してるんです!

 危険がないならそれでいい、正直まだ戸惑ってますけど……」


「あ、そうだ! ドーンさん、マコの髪の毛をピンクにはできないの?

 お兄ちゃんは何色がいいかなー」


「真琴はピンクの髪の毛がいいの?

 それじゃ向こうについたらピンクになるようにしておくね。

 雷人はなにか容姿に希望ある? 瞳の色とかも変えてあげられるわよ?」


「はーいはーい! マコはブルーの瞳がイイ!

 お兄ちゃんも同じ色にして、髪の毛はねえ、赤がイイかな。

 それでそれでマコはナイスバディてお兄ちゃんは細マッチョ!」


「こら、調子のるなっての。

 僕はこのままでいいですから。

 真琴だってそんな派手にしたら恥ずかしいぞ?」


「そんなことないわよ?

 魔族の中でも魔人は結構カラフルだから村にも大勢いるわ。

 獣人族も結構色とりどりね、ガーゴイル族やデーモン族は地味かしら。

 人間族は地味で黒とか茶色っぽい子が多いわね」


「はあ、そんなもんですかね。

 それならマコの好きにしてやってもいいかな。

 僕もそういうの嫌いじゃないし、って魔法少女じゃなくてファンタジーのことだからな?」


「それじゃ意見もまとまったところで行きましょうか。

 始まりの村、()村へ!」


「コ村!? ってまた随分安直な――」


 とまあ、直前のドタバタを経て、僕たちは兄妹はいよいよトラスと言う世界へと連れて行かれることになった。本当に騙されてるんじゃなければこれで地球と別れて異世界で再スタートとなる。僕は大きく深呼吸をしてその時に備えようとした、のだが、瞬きをしたかどうかのうちに知らない家の中へと移動していた。


「はやっ! 一瞬だったねえ!

 ってお兄ちゃん!? あはははっ、本当に髪の毛赤くて目が青くなってる! すごっ!

 マコも変わってる? ねえ、かわいくなった?」


「そ、そうだな、やっぱりこれは派手過ぎたんじゃないか?

 マジであり得ない色してるぞ……」


「それにしても部屋は十もないなんて言ってましたけどまさかねえ。

 こんな窓もない空っぽの部屋しかないとは思って無かったですよ。

 壁を付けたりして部屋割りしないと住みづらいなこりゃ」


「雷人は何を言ってるの?

 ここは物置よ? あの家の荷物は全部置いたから確認しておいてね。

 自分たちの部屋はどこでも好きに決めなさい。

 ここは地下で、この部屋と食料庫に工房と道具部屋、後は使用人室がいくつかあるはず。

 一階は玄関とリビングにダイニング、ダンスホールとキッチンにええっと…… 忘れたわ。

 寝室と客間は二階よ」


「でも十部屋もないって言ってたじゃないですか。

 寝室がそんなにないって意味ですか?」


「違うわ、十や二十なんてことはなくてもっとあるって言ったのよ。

 真琴は広すぎて怖くなっちゃった?」


「ううん! ワクワクしてきた!

 早く見てまわりたいなー、そんでお部屋決めて片づけして飾りつけしてー

 前の家は狭くてお兄ちゃんと一緒だったから。

 でも寝るのは一緒が良いなぁ」


「部屋が何十もあるのになんで一緒に寝るんだよ……

 こりゃ広すぎて落ち着かないし防犯とか考えると持て余しそうだな」


「まあその辺は説明書見たら解決することもあるわ。

 孫のためにってダイキが色々と書き残してあるんだからさ。

 それよりも預かった遺産はもう一つあるのよ?」


「そう言えば二つって言ってましたけど、土地と建物かと思ってました

 この屋敷と土地の他になにかあるんですか?」


「じゃあその辺りは上に行ってから説明しようかしら。

 本当は説明書を読むだけでもわかりそうだけど、渡すまでが契約だしね。

 それにこのまま放り出すのも気が引けるわ」


 ドーンはそう言うと今いる倉庫を出て行った。僕と真琴はその後ろについて部屋を出たのだが、廊下が真っ直ぐ続いていて相当な広さだとわかる。出たところから反対側の壁に向かって歩くと半分ほどのところに階段があり、そこまでにはいくつかの部屋があった。


 階段を上って一階へ行くとドデカい玄関ホールが有り、そこから両側へ廊下が続いている。玄関は吹き抜けになっていて、劇団のポスターにでもなりそうな赤絨毯敷きの階段と沢山の蝋燭が乗ったシャンデリア、さらにはいくつもの甲冑が並べられている。


 玄関ホールから一番近いところには執務室と言う部屋が有り、ドーンからは祖父が普段仕事をしていた部屋だと説明された。


 それを聞くと、急にこの屋敷が身近なものに感じてくるのだった。


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