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42.ポンコツ神

 二階の一番奥の部屋、そこはプライベートダイニングルームと言って、身内用に使用するダイニングルームである。来客を含めて食事をする際には一階のダイニングを使うと言う事らしい。


 しかし今はプライベートのほうに来訪者を招き入れていた。


「それで? 今は返してもらえるのかどうかを聞いているんです。

 無くなってしまったのはわかりました。

 理由が本当なのかは知りませんが、それもまあ信じましょう。

 かといって僕たちに残された最後の財産ですよ!?

 それを清算した後に使いこむって一体どういうことなんですか!

 こんなこと言いたくないですけど、ドーンさんって本当に神様なんですか?

 貧乏神なんじゃないですか!?」


 ソファに座っている僕と、テーブル席で笑いながら眺めている真琴のいるこのダイニングルームの床には、正座をさせられている神様がいた。と言うかさせているのは僕なのだが。


「もちろんちゃんと返すわよ。

 今は持ち合わせがないんだけど、これからがっぽりと稼げるはずなの。

 そのための資金としてちょっと借りてしまったってわけ。

 黙ってたのは悪かったけど、きっと移住したばかりで忙しいだろうなって気を使ったのよ?」


「はいはい、そう言うことにしておきますよ。

 それでなんでセレブたちと豪華な会食をする必要があったんですか?

 儲け話って言いますけど、神様にそんなものいらなくないですか?」


「そりゃ必要に決まってるじゃない。

 私が地球で暮らすには当然お金がかかるんだからね?

 儲かるかと思って弁護士やってるけど、下調べとか面倒で時間もかかるからやってられないわ。

 何度その場で死刑にしてしまおうと思ったことか。

 まあそれはともかく、神の力を使いすぎると地球の神がうるさいのよね。

 だから地球人をトラスへ連れてくることを考えたわけ」


「僕たちみたいに移住させるんですか?

 もしかして金持ちを移住させて財産を巻きあげるとか?

 それはそれで酷い話ですね……」


「まさかそんなバカなことしないわよ。

 移住なんてイレギュラーなこと本来は許されないもの。

 君たちは特例だって言ったでしょ?

 雷人はゲームに詳しいみたいだから理解しやすいと思うけど、地球からプレイヤーを連れてくるの」


「プレイヤーって誰のことですか? 地球人?

 もうちょっとわかりやすく言ってもらえますか?」


「だからね、地球の金持ちをゲーム世界だって説明してトラスへ連れてくるのよ。

 もちろん一時的にってことだけど、こっちでRPG体験って感じね。

 連れてくるには魂を分離するんだけど、没入型最新ゲーム機っぽいカプセルを作ったの。

 そこに入ると丸一日仮死状態になって魂はこちらに転生するってわけよ」


「もしかしてそのプレイ代金は高額でセレブじゃないと払えないとかそういう?

 ドーンさんって本当に神様ですか? そりゃ守銭奴な神もいるのかもしれないけど……」


「ちょっと人聞きが悪いわね。

 私はトラスを作る前は下っ端もいいところだったんだけど、天神を倒して出世したのよ。

 あらゆる世界の中で一番贅沢が出来る地球で暮らせるくらい偉くなったんだもの。

 だったら質素に暮らすなんてバカらしいでしょ?」


「はぁ…… 言い分はわかりますよ? でもそれを神様が言いますかって。

 しかも人の金にまで手を付けて!」


「それは本当にごめんなさい、返す言葉もないわ。

 でもすでにお客はついたから返す当てはあるわよ?

 なんと言ってもプレイ料金は100日で10万ドルですもの」


「10万ドルって、ええっと…… 一千万円以上!?

 そんなの払う人いるんですか? いや払えるのかって意味で。

 第一100日も寝てて平気なんですか?」


「何言ってるのよ、こっちの100日は地球で1日よ?

 料金だって世界見渡せば払う人たちがいくらでもいるってば。

 すでに一度体験させたんだけど完全にハマってたわよ?

 まあトラストの辺りでうろうろしただけだったけどね。

 リアルだとか本物みたいだとか騒いでたけどそりゃそうよねぇ」


 どうも非現実さが増しすぎていて理解が追い付かない。つまり1日遊ぶのに一千万円払って100日分の異世界体験をすると。もちろん地球の人間がそのまま来るわけではないだろう。


「RPGって言うくらいだから勇者みたいな強いキャラクターになるんですか?

 そんなの大迷惑じゃないですか」


「基本はこちらの人間族とかわらない、だから生きるだけでも結構ハードね。

 まあ本物の住人達よりは多少優遇されているけど、みんなゲームだからって無茶するのよ。

 絶対勝てそうにない大きな魔獣にも挑んでみたりしてね」


「そんな無茶する人たちばかりだとこっちまで攻めてこないでしょうね?

 やっぱりプレイヤーたちは僕たちみたいに死なないんですか?」


「形式的には死んでしまうわね。

 死んだら荷物を全部失ってトラストの神殿からやり直し。

 お金を稼いで家を買えば荷物を保管出来るし、少量なら宿屋へ預けることもできるわ」


「じゃあ100日間は活動しっぱなしなんですね……

 まったく迷惑もいいとこだ、僕らの村が攻め込まれたらどうするんですか!」


「平気平気、魔人は死なないからなんともないわよ。

 獣とか魔物、魔獣は仕方ないわね。

 もしも出会ったら返り討ちにして持ち物全部取り上げていいわよ?

 そうしたら装備品を整えるのにお金払ってくれるから大もうけできるわ、よろしくね」


「なんでそうなるんですか!?

 装備とかは街で買ったり作って貰ったりするんですよね?」


「それも当然出来るけど、別料金でルートボックスを提供するのよ。

 お金払ってくじを引くと強い武器とかアイテムが当たるってやつね」


「なんかもうこれ以上聞くのが辛くなってきた……

 そんなの世界が混乱するだけじゃないですか」


「だからちゃんと対策は考えてあるのよ。

 雷人と真琴が自由に出入りできるダンジョンを用意しておいたわ。

 地下の監視室から直接行けるようにしておいたから、適当に相手してあげてちょうだい。

 もちろんRPGなんだから彼らを倒せばあなた達には報酬が入るわよ?」


「ちょっと待ってくださいよ、僕はやりませんよ!?

 そりゃ仕事になるのは悪くないですけど……

 でも僕は魔術が使えないんです、絶対に無理ですよ」


 僕は最大の懸念事項を正直に伝えた。金と暇を持て余してこの平和な世界へ進軍してくる奴らなんて相手にしてる場合じゃないのだ。だがドーンの返答は、想像とは異なるものだった。


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