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34.大樹の手記 六章(閑話)

 六.トラスの地理


 この世界は平面であり、太陽も大地も動いていない。世界の中心になにか特別なものがあると言うこともなく、ただその真上に太陽が存在しているだけだ。便宜上太陽と呼んでいるが、実際にはただの光源のようであり、世界の中心での端でも明るさや気温に違いは感じられない。


 朝になると光は徐々に明るくなり、夜に近づくと段々と暗くなる。その周期はおよそ12時間で年間を通して一定である。四季のような季節の移ろいもなく、通年25度程度が保たれているが、別途記載してある世界地図上で北と記した側には雪山が存在しており、その地方の気温は通年氷点下である。


 その北側は雪山と雪原が中心であり、普通の生物が暮らすには適していない。そのため寒冷地を好む生き物ばかりが集まっている。雪山の奥にはトラス最大の生物であるフロストドラゴンが生息しており、不用意に近づくと氷のブレスを吐かれ凍死は必至である。幸い言葉は通じるので敵意のない事を示しながら近づけば観光は可能である。


 南側には海が有り、その水には塩分が含まれている。海の先には高い山が有るが、頂上へたどり着く前に魔素なのか酸素なのかが薄くなり登りきることが出来ない。これはトラスの外周全てに共通している。


 海には固有の海洋生物がおり凶暴な動物や魔物が多く生息している。船のように移動場所が限られる場所で襲われた場合には、立ち回りに十分な注意が必要である。南の海にはクラーケンという巨大タコや海竜の一種であるシーサーペントが多数生息し縄張り争いをしているため巻き込まれないよう注意したい。


 東側には平野部や森林が多く、住みやすい土地と言える。豊富にある水源地を中心に、様々な種族が集落を作り暮らしている。この屋敷のある()村も東側に属しており、中心地から見て東北東へ馬で七日程度のところにある。


 我らがコ村に生産業は何もないため必要な物資は全て交易によって賄っている。とはいえ魔人が生きていくうえで必要なのは魔素だけなので、村中央に鎮座している巨大なアンクが健在であれば交易すら必要ない。そのため交易で入手するのは嗜好品や娯楽品の類くらいである。魔素が非常に濃い土地なので死亡体験にもお勧めの住みやすい村である。


 西側は山岳地域と深い山林、荒野が中心で住み辛い場所が多い。元々は天神信仰が盛んだった地区のため人間を主体とした村や街も多い。人間たちはむやみに開拓を進め森林を浸食し、自然の中で暮らしていたエルフや精霊たちとのいざこざをわざわざ作った過去が有り、天神信仰同士でもあまり良好な関係ではないようだ。


 世界の中心から西北西に位置するトラストという街が最大都市で、現在の天神信仰の中心地である。トラストでは過去に一人の人間を王として祭り上げ打倒魔神信仰を掲げていたが、今では弱者が身を寄せ合っている街のような印象が強い。冒険者を名乗る人間たちは大抵トラストを拠点としており、この街から各地へ出かけて行って魔物の虐殺をしたり遺跡の盗掘をしたりしている。


 トラスの大地には地磁気が存在しない。そのため方位磁針は使用不可である。陽の傾きも自転も公転もないため方角を見失うことがままあると考えられる。土地に慣れてしまえば開けている場所へ出て風景を見ることで方角はわかるようになるが、不慣れなうちはあまり遠出をせず深い森への出入りも控えた方が無難である。魔人であれば空腹等で行き倒れることはないが、一人彷徨うことによる心細さはなかなか辛いものだ。私は最長で六日間彷徨ったことが有り、いい歳して泣く寸前だったこともある。


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