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麗しのアデリーナ事変

作者: シュー・マキャベリ

初投稿になります。優しくしてください。


これは愛とは何かを考えすぎて、ねじくれて飛び跳ねて矛盾をダイナマイト爆破で解決しつつ、結果美しく着地しちゃった貴族令嬢のお話です。

一部ガールズラブを匂わせる表現がありますが、あくまでも博愛です。ご容赦ください。





告白します。

私、アデリーナには婚約者がいます。



「見て、アデリーナ。あなたの婚約者殿よ。」

「まあ。」




告白します。

私、アデリーナは婚約者を心の底から愛しています。


故に、告白します。




「また、ニーナ嬢と連れ添ってらっしゃるわ。」

「歩いているだけではなく密着してますわね。」



私、アデリーナは今すぐ婚約者のことを殴り飛ばしたいほど憎らしく思っています。












教室の窓際の席に陣取っている3人の少女。

窓の外を眺め終え、それぞれが各々の顔へと視線を移した。

3人が3人、その顔色はとても悪かった。

不都合な現実から目を背けたい。友人が気の毒で仕方がない。気まずい。三者三様に心の中の嘆きが青く透けていた。

そのうちの一人、美しき令嬢、アデリーナの顔色は特別悪く、本来は朝露に濡れた薔薇のような唇は踏み荒らされた枯れ葉の道のよう。色白の頬に息づく桃のような頬は萎んでしまい、目の下にはうっすらとクマがあった。



「私どうしたら良いかしら。」

「アデリーナ。」

「お気を確かに。」



青色吐息のアデリーナに、二人の令嬢がいたましげに声をかける。


「このままだと、私の婚約者抹殺計画ノートが五冊を超えてしまいそうなの。」


そう言ってアデリーナは五冊のノートをカバンから取り出した。タイトルはシンプルにNo.1.2.3.4.5のみだが、真新しい表紙に対して紙の端までびっしりと書かれた文字が見え隠れしている。書かれた単語の不穏さは、内容を読むまでもなく想像がつき、黒髪メガネの令嬢ララは顔を顰める。


「アデリーナ…。」

「本当に、お気を確かに。」

「異常である自覚はありますわ。」


薄く微笑むアデリーナは、顔色と元々の色の白さも相まって青空に溶けてしまいそうなほど儚く見えた。


「そこまで憎いの?アデリーナ。」

「ええ、ララ。だって愛していますもの。あのニーナ嬢に向ける笑顔すら眩しくて、尊くて、愛しくて。その分だけ、虚しくて、辛くて、苦しいの。」


声にも表情にも悲痛さはない。彼女は無表情そのものだ。しかし、アデリーナという風変わりな令嬢の心の叫びは、表面ではなく心の内側に煮えたぎるマグマとなり猛り狂っている。その発散がノート五冊にびっしりと紡がれていた。ララと呼ばれた少女が恐る恐る中身を見れば、几帳面にも日付が綴られおり、日付は最も古いもので三日前。


アデリーナの婚約者ガイルが、ニーナ嬢と一緒に過ごしているのをアデリーナが見てから72時間ですでにこの有り様かとララはほほをひきつらせながらパラパラとノートを見た。


「アデリーナ様、どうしてガイル様がニーナ嬢と一緒にいるかはご存知でして?」


泣きぼくろが特徴的なしっとりとした色気のある令嬢、エリザが困ったように尋ねた。


「ガイル様は、ニーナ嬢が転校してきたばかりなので、慣れない宿舎を案内している、心細いだろうから、少しの間面倒を見ているだけ。とおっしゃいました。」


アデリーナは平坦に答える。喋りながら、新しいノートを取り出した。これから予習でも始めるような自然な所作で、ノートの始めにこう綴った。No.6、と。


ララはため息を吐いて、アデリーナの手元を見つめる。ガイルの死体を保存して愛でるべきか、デメリットとメリットをつらつら真顔で書いていく様子に鬼気迫るものを感じ、少し身をひいて隣に座るエリザの肩に手を置いた。


「エリザ。アデリーナを止めてちょうだい。貴女王宮侍女志望でしょう?わたし友達が犯罪者になるのは耐えられないわ。」


「アデリーナ様を主人だと思いお諌めすればよろしいでしょうか?」


「そこまでとは言わないけども、侍女の必須技能でしょ?言いくるめるの。」


「カウンセリング技術とおっしゃって?」


ララとエリザの会話をよそに、ノートに美しい字が次々折り重なる。内容を見てはいけないと思いつつ、ララは飛び込んできた洗脳技術と禁止薬物の項目に頭痛とめまいを感じた。



「アデリーナ様。」

「なにかしら、エリザさん。」


こほん、と咳払いし、エリザは聖職者のような微笑みで優しくアデリーナを見つめた。



「アデリーナ様は、ガイル様の存在を消してしまわれたいのですか?」

「いいえ。ガイル様を消したいわけではございません。でも、他の方にとられてしまうくらいなら、と。」


ノートを書く速度が上がる。ララの見る限りノートの中でのガイルは死ぬばかりか魂のかけらすら残るか危ういような惨状だ。



「アデリーナ様。アデリーナ様の心を分解して、よく見てくださいまし。」


「私の心を?」


はい。とエリザが微笑む。アデリーナのペンがぴたりと止まった。それを見て、アデリーナの手からするりとペンを取ったエリザがノートの余白に勝手に書き込んでいく。


「アデリーナ様は、ガイル様を殺したい。何故ですか?」


ノートには、殺したい理由は?と書き込まれた。

その下に矢印が書かれ、目線で回答を求めた。


アデリーナは、エリザにペンを渡され、愛しているから。と綴る。


「アデリーナ様。もう少し、細かく考えてくださいまし。」

「細かく、ですか?」


愛してる、の左右に、エリザが項目を増やした。

左の空白をペンで刺す。愛してる故に殺したい、何故?と書き込まれた。


アデリーナはつらつらと追加していく。


ガイル様が他の人のものになるのが嫌だ。

わたしのことをすいてくれていたのに。

ガイル様がそばにいらっしゃらない未来が怖い。

殺して、わたしだけのガイル様にしたい。

ガイル様の愛情が、わたしに向いていないことを確かめるのが怖い。


なるほど。とエリザはペンをうけとる。そして、嫉妬、独占欲、裏切り、欠如の渇望。と、単語を綴った。そして最後に、期待。と書かれている。


そして、愛してる。の右隣に文字を書きながら、エリザはアデリーナに微笑んだ。


「アデリーナ様。アデリーナ様の心を抹殺計画からお救いする算段が整いましたわ。」

「本当ですか?エリザさん。」


「はい。まず、ガイル様を抹殺してしまうのは、アデリーナ様が、楽な方法に逃げようとしている。ということを指摘させていただきます。」


「!」


アデリーナの顔が驚愕に染まる。


「殺し方や、その後の処理にグルグルと思考を巡らせるのは、何かを成した気持ちになって、ストレスの解消にはなりますが、ストレスの捌け口として妄想している自覚がないのでしたら時間の無駄ですわ。おやめください。」


「エリザ容赦なさすぎだわ。」


ララが青ざめるアデリーナの手を握り宥める。それでなお、エリザの言葉を止めることはしなかった。


「次に、目的と目標が入れ替わっておいでですわ。動機を分解すると、愛してる、のではなく、愛されたい、故に、愛されていない事実から目を背けるための殺害、となっております。愛しているから殺すのではなくなっています。貴女の愛が、貴女の恐怖で歪んでおいでです。」


「わたしの、愛が。」


虚をつかれ、否定されて、アデリーナは虚空を見つめ途方に暮れた。


「アデリーナ様。わたくし、それでも貴女の愛を尊敬しておりますの。」


「え?」


「婚約者があのように他の女性に手を出して、なお貴女はまだノートという空想に怒りと混乱をとどめておいでです。私なら、すでに婚約者を見限るか、土下座するまで罵りますわ。」


「エリザ怖いわー。でも、わたしも怒るわね。その女はなによって。」


「頭に血が登る前に、私達を相談してくださった冷静さと人を信じる心も尊敬しております。」


「エリザさん、ララさん。」


「ですので、アデリーナ様、私は貴女の尊い精神と愛に見合う上で、あの男がどんな選択をしても、アデリーナ様に頭が上がらなくなるようにしたいと考えておりますの。」


「アデリーナの殺意がどうにかなる方法があるの?エリザ。」


はい。


エリザは笑みを深くした。


「回りくどいことをするからよくないのです。ナイフも拳も使わずに、彼を暴力的なまでに、愛しましょう。愛とは、工夫すればそれだけで武器になるのです。」







数日後の昼下がりのカフェテリア。



ガイルとニーナは隣同士に座りながら、肩が触れるほどの距離で仲睦まじく学食を食べていた。


ガイルはニーナそのものに惹かれたわけではなく、弱く愛らしい少女に懐かれるという状況が嬉しく、つい隣に侍らせていた。婚約者がいるという現実はきちんと理解している。しかし、可愛らしい少女から全幅の信頼と好意を寄せられている事実に鼻の下が伸びないほど人間ができていなかった。


一方、ニーナはガイルの爵位と、婚約者との距離感を敏感に察知し、既成事実、掠奪、よくて愛人になることを目的にしている強かな娘だった。ガイルがやがて受け継ぐ爵位と広大な土地、そして当人の見目の良さ。さらに婚約者が、美人ではあるが、貴族らしく冷徹で愛想がない少女であることを利用して、悪辣なことはせずとも、ボディタッチと人懐こさでガイルを落とせる自信があった。



そんな二人の和やかな昼飯時間に、乱入者が現れた。


「ガイル様。」


「!」


ガイルとニーナは気まずげに、少女を見上げた。


そこには、銀髪の少女、ガイルの婚約者、アデリーナが立っていた。


「アデリーナ。」

「アデリーナ様?」


アデリーナがじい、と二人の間を見つめる。そして、わずかに眉を顰めると、変わらず無表情で言葉を紡いだ。


「ガイル様、ニーナ様、そのように仲睦まじくされないくださいな。」


「…嫉妬かアデリーナ。ニーナはまだ転校したてでこの学校に馴染めず不安なのだ。許せ。」

「ごめんなさいアデリーナ様、わたしがガイル様の好意に甘えて、でもまだお友達も少なくて、不安で。」


後ろめたさがあるからか、二人はペラペラとよく喋った。その間も無表情だったアデリーナはガイルの目を見て口を開いた。


「はい。ガイル様。私は嫉妬しております。」


「!?し、嫉妬とは醜いなアデリーナ。お前には学友を慮る気持ちはないのか?」


「ガイル様の前で余裕などございません。本当はこうして見つめるのも、勇気がいるほど愛しておりますの。」


そう言って、アデリーナが俯く。その頬は少し赤みが刺し、無表情の中に少女らしさが芽吹いた。その危うさと可憐さに、ガイルの後ろの学生達が無差別にノックアウトされた。


「ガイル様。」


「な、なんだ、アデリーナ。」


普段無口で無表情なアデリーナの愛の告白に、ガイルは焦って思わず立ち上がった。


「私、ガイル様を愛しております。本当は、毎日一緒にお昼を食し、ガイル様が好きな馬上試合を見に行き、一緒に勉強に励み、舞踏会でダンスを踊ってその胸に飛び込み、貴方様の素敵なお声を聞いて眠り、貴方様とともに働き、子供を成し、老後は二人で静かにすごし、たまに旅行に行く。そんな素敵な夫婦になりたいと、考えておりますの。」


「う。」


「ガイル様は違いますの?」


「あ、アデリーナ。」


「私、ニーナさんのようにはしたなく、人前でくっつくことは恥ずかしくてできませんが、それがガイル様の性癖でございましたら、耐えて見せますわ。」


アデリーナはそっとガイルに近寄ると、ガイルの袖を引いた。


「私、ガイル様を愛しております。貴方様と添い遂げるためでしたら、多少の我慢は致しますわ。でも、我慢できないこともあります。」


「な、なんだ、アデリーナ」


「貴方様のそばに不用意に侍る知らない女性と、その方に微笑みかけるガイル様に呪いあれと思ってしまう心ですわ。」


「え。」

「呪い。」


「でも、呪いはいけないことですわ。だから私相談しましたの。」



ありとあらゆる、敬愛する、大人たちに。


ガイルとニーナは身震いした。

アデリーナ・リーデル公爵令嬢が相談できる全てのコネを使って行き着く相談先と、自分たちの末路を予感して。


「《ガイル様と親しい女性を殺してしまいそうなほど嫉妬に狂ってしまうわたしをお叱りください。そして、この気持ちの伝え方にご助言ください》と。」


「だ、だれに?」


「お父様とお母様と叔父様と叔母さまと、ロードおじさまと、ガイル様のご両親と、ニーナ様のご両親に。」


「…叔父様かぁ。国王陛下かぁ…。大事になっちゃったなあ。」

「え!?なんでわたしの親まで!?」


ガイルは思考を放棄し、

ニーナは絶叫した。


「ニーナ様に、お伝えするにあたってニーナ様にきちんと伝わる言葉を確認していただくためですわ。あまり参考にはなりませんでしたが。」


「丁寧すぎる嫌がらせ!」


「ああ、ニーナ様、ご両親にもお伝えしましたが、誤解なさらないでくださいな。私貴方様のことを呪い殺したいほど憎らしくおもっております。ですが。」



同時に、愛しております。



「はえ」



頬を染めるアデリーナ。ニーナは理解が及ばない事態を前に口を開けて宇宙に魂を飛ばした。


とんでも理論についていけず、返事をするための語彙までふきとばされてしまった。


「愛?あ、あ?」


「はい。私、アデリーナはニーナ様のことも愛しております。」


「アデリーナ!?」


困惑するニーナとガイルにアデリーナはより笑みを深くして返事をした。


「はい、なんでしょうか。私の愛しい御方。」


ぐ。とガイルがアデリーナの放つ熱烈な愛の言葉に耐えてどうにか言葉を絞り出した。


「こ、心にもないことを言うな、だいたい、何故ニーナも愛してるなどと嘯いた。」


「はい。恋しい人。嘘ではありません。私ニーナさんのことをきちんと存じ上げた上で、愛おしく思っております。」


嘘よ、アデリーナ様が私のことを好きになるはずがないわとニーナが喚く。その様を見るアデリーナの瞳は深い慈愛を讃えている。ほんのり朱に染まった頬、うるむ瞳。恋する乙女以外の何者でもない表情を正面から見たニーナは、戦慄した。自分は、演技でその表情を作っていたから、余計に確信してしまう。


これは本気だ。


「な、な、なぜ、わたし、を?」

「はい、ニーナ様。可愛らしい御方。それはあなたさまがガイル様の愛する人だからでございます。」


は?と、ニーナとガイルの困惑する様子をじっくりと眺め、アデリーナは満足げにほう、と息を吐いて悦に浸っていた。

訳がわからない。聞かないとわからない。しかし同時に聞きたくない。怯えるニーナに、アデリーナは優しく優しく言葉を流し込んだ。


「私、最初に友人に相談しましたの。嫉妬の気持ちの全てを。聡明な友人は私の気持ちを整理してくれました。私、ガイル様のことを愛しております。ガイル様の好きな紅茶の銘柄、果物、お色味、ブランド、動物。ガイル様がこよなく愛するそれらは、私にとっても好きなもの。ガイル様が好いているという事実だけで、ガイル様のことを知れるのが嬉しくて、それらを徹底的に調べてきました。ガイル様が愛するものとそれに付随する知識に触れることは、私の心を満たします。だから、ガイル様がお好きなものは私の好きなものと、同一です。お揃いって良い言葉ですわ。」


そして、わたくしは、ニーナ様のことをなぜ好きになれず、呪ってしまうのかを考えました。私の心に向き合いますと、ニーナ様のことをよく存じ上げないから。ガイル様のことを愛しく思う私自身のこれまでを、否定されてしまったような気持ちになるから。しかし私は、気づいたのです。

ニーナ様は、果物や紅茶や動物と同じ、ガイル様の愛するものの一つだと。


「くだもの。」

「どうぶつ。」


そう思いましたら、貴方様のことを調べれば、見つめれば、考えれば、その時間の分、ガイル様のことがまた一つ理解できて、私の心は満たされました。大人たちに相談したのも半分は口実で、私は貴女のことが知りたくて、知りたくて、調べました。徹底的に。結果、私の心は愛で満たされました。今では、触れたくて、見つめたくて、そばに居たくてたまりません。そして、この想いは、私がガイル様に抱いている感情と同じなのです。


すなわち、私は、ガイル様を愛するあまり、あなたのことも愛してしまったのです。ニーナ。

貴女を構成する全てが愛おしい。


ニーナはやっと理解した。

自分の軽率な行動が、一人の少女の心を歪め

度し難い変態を生み出してしまったと。


頬を染める美少女が、そのしなやかな指を怯えるニーナの頬に添えた。


「ニーナ様。こんなに青ざめて、どうしてしまったのですか?ああ、でも、可愛らしいわ。青ざめた唇も、震える肌も、見開かれた瞳も、私が初めて見る表情ですわ。もっと、見せて。」



もうだめだ。この美しいアデリーナは、本気で自分のことを愛している。


ブルリと背筋に冷たいものが走ったニーナは、思わず隣に立つガイルの服を強く掴んだ。

その様子を見咎めて、アデリーナは薔薇色の唇を開いた。


「ずるいですわ。二人とも。嫉妬してしまいます。間に私を入れてくださいな。」


アデリーナはうっそりと微笑んだ。


幸せになりましょう?さんにんで。


ニーナとしては悪くない提案だった。元々愛人志望なのだ。正妻公認ほど高待遇なことはない。アデリーナの顔さえ見なければ。アデリーナの瞳は、頬は、唇は、はっきりと告げている。ベッドまで一緒だと。ペット扱いなのか、恋人の扱いなのかはわからないが、それは、愛人を見る正妻のする顔ではなかった。


10代の少女の想像を絶する世界に誘われている。ニーナの理解力はそこが限界だった。混乱が極限に達したニーナは、叫びながら食堂を駆け抜けて逃走した。ガイルを置いて。


「ニーナ!?」

ニーナを目で追った後、ガイルは視線をアデリーナに戻した。ニーナに逃げられたガイルは、混乱しながらもアデリーナを睨み、怒りで声を荒げた。


「アデリーナ、こんな手の込んだ嫌がらせをするな!はしたないぞ!」


「ひどいですわ。ガイル様。私はいつでも本気です。…お話は変わるのですが、ガイル様の斜め後ろに、ガイル様のお友達の皆様がお揃いですね?」


ガイルは意味が分からず、斜め後ろの友人達を振り返った。ガイルのことを心配しているのか、青ざめたり、痛ましげだったり、呆然としたりと、それぞれの感情を顔に浮かべている。


「ああ、いるが、それがどうかしたか?」


ガイルはアデリーナに振り返りなおる直前、みた。友人達の顔が、一斉に青ざめる様を。

そして耳には蠱惑的な、艶かしい吐息混じりのアデリーナの声が届いた。



ガイル様は彼らと常に一緒に居られますね?

ということは、彼らのことを好いてらっしゃる。



アデリーナが、ガイルの友人を見る瞳に妖しげな光が灯る。


ガイルは、その光を見て全てを悟った。

そして、腹の底から力の限り叫んだ。



「俺が悪かった!!!目を覚ませアデリーナ!!!!!!」





殿方の愛は一つじゃないと良く言いますが、見習って、私の愛を増やしてみました。思っていたよりも楽しくて、癖になってしまいそうです。


これで、私たち、お揃いですね。

嬉しいです。愛しい人。








おまけ


「エリザ。」

「ララ様、やりすぎた自覚はありますわ。ですがあそこまで突き進むと誰が予測できますでしょうか?私は相談と心の持ち方をお伝えしただけでございます。」

「エリザ。」

「無理です、あそこから元の思想に戻すのは、性癖とは不可逆なもの、記憶を丸ごと無くしたとしても魂が覚えているので無理です。」

「そうじゃないの、エリザ。」

「はい?」

「私、ガイルとは親類に当たるのよ。」

「…。」

「アデリーナとは良き友達でいたいの。わかるわねエリザ。」

「親戚への愛情は別腹と伝えて参ります。」

「アデリーナがガイルの親に相談に行った時、尊いだの、似てるところに恋しさを感じるだの、愛の名産地だのと口走ったそうよ。」

「…。」

「ところでエリザ、貴女私の弟といい感じだったわね?」

「急ぎます!!!!」


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