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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Dolenon実験作品

サモンライツ/ネオントワイライト SummonLights/NeonTwilight

作者: Dolenon

試作版的パイロット版です

 ネオン管の光が煌びやかに輝き、薄暗いスモッグにまみれた夜空の街で、人々は明日を信じられず今を享楽的に怠惰に日々を無為に過ごす。

 ここは明日無き街、旧ガルフォン帝国首都ガルフォン。だが、今の名はこう呼ぶ。






魔電脳都市(マジサイシティ)ガルフォン、と。






 ◇


 この都市の成り立ちはほんの数十年前に遡る。

 当時魔族と人類間で起きた人魔戦争、その終結のために人類側は禁断の術である異世界召喚魔法を構築し、異なる世界から召喚した人間を勇者に仕立て上げ、使い捨ての兵士として使い潰していた。

 だが、状況は一変した。理由はとある男が召喚されたことにあった。

 その男は魔法を基に元の世界の技術を再現……否、進化させた。

 魔電脳(マギサイバー)技術(テクノロジー)、通称MaCyTe(マシテ)と呼ばれるそれは魔法の力を科学技術により、より広く多くの者が使えるようにする……この世界の根底を覆す物であった。

 そして魔族領のガルフォン帝国はMaCyTeで進歩した軍事技術を持って制圧された。人類側は勝利を確信していた……はずだった。


 ◇


 夜空から一筋の光が差し込む。青白い光だ。


「……久しぶりの異世界召喚……珍しいわね」


 光を見ていたダークエルフの女は、手にしていたチョコレート味のクッキーブロックを一口で頬張ると黒いマントを翻して光の下へ向かう。そのマントの影には銃身を切り詰めた(ソードオフ)水平二連(ダブルバレル)散弾銃(ショットガン)【ヘビィブロウ12G】が忍ばされていた。

 ダークエルフの女は腕輪型通信機器、通称リングフォーンをつけた左腕を振ると薄白の光にいくつかのアイコンが浮かび上がる。電話の形をしたアイコンに右手の人差し指で触れる。数回のコール音の後、しばらくするとメガネにボサボサ頭の人間の女が映し出された。


『ふわぁあ。……ノル、おはよぉー……』


 通信相手の女は、大きなあくびをしながらダークエルフの女(ノル)に返事をする。


「ヤックル……貴女、また惰眠を貪っていたの」


 ノルは通信相手の女(ヤックル)の態度に呆れた。


『仕方ないじゃない……ウェークアリーナのCTF戦を一晩中やり合ってたから眠いの……スウェンめぇ、次こそボッコボコにしてやんよ』

「まったく……それよりヤックル、稼ぎ時だよ」


 ノルの言葉にヤックルは寝ぼけ眼をすぐに覚醒させた。


召喚光(サモンライツ)よ。しかも青白い光……来てしまったのは特別な部類ね」

『うひゃー、異世界召喚って約二年ぶりじゃない。しかも青系はレアいよ。それで?』

「私が身柄を押さえるから、同業者(他の連中)を撹乱して欲しいわ」


 ノルの足がわずかに輝く。それと共にノルの走る速度が上がる。


『はいはーい。んじゃま、周辺の情報を撹乱操作しておくから、ちゃーんと手に入れてきなさいよ』

「もちろん」


 ピッと短い音と共にリングフォーンの光が収まる。ノルは夜の(ガルフォン)を駆ける。


 ◇


「……あの少年か」


 ノルがたどり着いた時、青いパーカーの少年が倒れていた。


「……意識はある」


 少年の口に耳を近づけ、呼吸の声を確認する。


「とにかく連れて行かないと……っ!」


 少年を抱えようとした瞬間、ノルは纏っていたマントを素早く翻す。それと共に漆黒の矢が地面に落ちる。

 暗い路地から茶色のトレンチコートに身を包んだエルフの男が姿を現す。その手には矢を装填したピストルグリップのクロスボウが握られていた。


「おやおや、これは薄汚いダークエルフの売女じゃないか」

「相変わらず生ゴミの周りをプンプン飛び回るハエみたいな奴ね、ジェニス」


 ノルはエルフの男(ジェニス)を睨みつける。


「ええ、私はあんな(偽装された)情報には踊らされない主義でしてね」


 ジェニスはクロスボウを片手で構える。


「そこの人間を寄越しなさい。それは我々ドンキンス一家(ファミリー)の物だ」

「巫山戯たこと言わないで、この子は監理局まで届けるわ」

「やはり穢れたダークエルフだ、この監理局の狗が!」


 クロスボウから矢が放たれる。ノルは右手をかざし、精神を集中させる。刹那、手のひらに緑色に鈍く輝く丸い魔法陣が浮かび上がると同時に突風が吹いた。その風で矢は明後日の方向へ落とされた。


「忌々しい……ダークエルフの癖して天然魔法使い(ナチュラル)とか冗談は顔だけにしろ!」


 ジェニスは悪態をつく。


「あら、あなたもエルフなら魔法ぐらい使ってみたらどうなの? ガルフォン生まれ(ガルバース)


 ノルは挑発する。


「フンッ、これだから穢れたダークエルフは品性も何もない」


 ジェニスは挑発を気にせず手にしていたタブレット端末に指をすべらせる。

 タブレット端末の画面には魔法陣が映し出されていた。


「時代は移り変わる物ですよ、元ガルフォン帝国陸軍第六師団長ノル・アーウェイン将軍」

「……もう存在しない国の話に縋るほど老いぼれてないわよ」


 タブレット端末の魔法陣をジェニスはタップする。

 ノルはヘビィブロウ12Gの銃口をジェニスに向け、引き金を引く。

 ジェニスの周囲に薄青い光の膜が纏わり付く。ヘビィブロウ12Gから放たれた散弾は、光の膜に当たると弾き返した。


「やっかいねっ!」


 ノルは跳ね返ってくる散弾を防ぐべく強固な土の壁を召喚した。跳ね返ってきた散弾は土の壁に当たると地面に転がり落ちた。


「おやおやご自慢の鉛玉も、魔導障壁(マギプロテクト)には通用しないみたいですねぇ」


 ジェニスはニタニタと嗤う。


「面倒ね」


 ノルは上空に青色で塗装された玉を放り投げ、太股に隠していたナイフを投げる。


「ちっ!」


 ジェニスはノルの狙いを察し、再びタブレット端末に指を沿わせる。

 しかし、それよりも早くノルの投合したナイフの刃が玉に当たる。刹那、玉は強く発光し、轟音を発する。


「あぐっ!」


 強烈な音と光を受けたジェニスは怯んだ。

 ノルはその隙に少年を抱きかかえ、その場を後にした。


 ◇


 監理局の関係者用窓口の扉をノルは遠慮無く開ける。


「おう、ノル。こんな時間にどうした?」


 大柄なオーガの男がノルに声をかける。


「いきなりで悪いけど召喚された子を確保したのよ。手続きの準備をお願いするわ、デイヴ」


 ノルは大柄なオーガの男(デイヴィッド)に要件を伝えると少年を引き渡した。


「ああ、あの召喚光か。わかった、すぐに登録課のヤツを呼んでくるぞ」

「お願いね、ドンキンス一家も狙ってるからなるべく早めにね」


 デイヴィッドは建物の中にノルを入れる。


「それにしても、俺はただの技術者(エンジニア)なんだけどな」

「それについてはごめんなさい。でも、頼れるのって言ったら貴方ぐらいだけなのよ、元監理局捜査官(スペクター)、デイヴィッド・オウル」


 デイヴィッドは鋭い目つきでノルを見る。


「……所詮過ぎた過去の話だ」


 デイヴィッドはすぐに普段の顔つきに戻し、壁付きの電話から受話器を手にする。


「ああ、俺だ。登録課のヤツはまだいるか?」


 ◇


「デイヴィッド先輩、お疲れ様です」


 しばらくして、関係者用窓口の部屋にボブカットの少女が入ってきた。


「悪いなサキ。お前と同じ向こう側(異世界)の子だ」


 サキと呼ばれた少女は黒縁メガネのレンズをキラリと光らせる。


「同郷の子ですね。可愛い女の子ですか?」

「いや、男だ」


 サキは膝から崩れ落ちた。


「神は死んだっ!」


 天に向かって中指一本を立て『Fuck you』とサキは激しく嘆いた。


「あのね、勝手に神を死なせないの」


 サキの反応にノルは呆れた。


 ◇


「それではこれで登録完了です……うう、どーせなら可愛い女の子が来てくれた方がいいのに……」


 未だにショックを引きずりつつもようやく落ち着きを取り戻したサキは、手にしていた召喚監理局支給のタブレット端末を鞄にしまう。


「で、この後はどうすんだ?」


 デイヴィッドはノルに問う。


少年(この子)の身柄は、一旦監理局(そっち)に預けるわ。ちょっとヤックルの所に顔出してから家に帰る」


 ノルは、それだけ答えると監理局を後にする。


「やれやれ……まだあの頃を引きずってんのかアイツ」


 ノルの背を見て、デイヴィッドは呟いた。


 ◇


「ヤックル」


 ヤックルの住むバラックにノルはやってきた。


「ノル、おかえんなさい。首尾は?」


 ヤックルは椅子の背もたれ越しに上体を反らしながらノルに問う。


「引っかからないストーカーに襲われた以外は上々よ」

「ええ、またあの陰険エルフ-?」


 ノルの返答にヤックルは怪訝な表情をする。


「もー! 今回は徹底的に手の込んだ情報操作をしたって言うのに!」

「仕方ないわ、相手は昔からその手の事には精通してるからね」


 ノルは銅製のショットグラスに葡萄酒と蜂蜜を入れ、マドラーで軽く混ぜてから一気に煽る。


「昔って言うと魔族領だった頃?」

「そうよ。私と同じ元ガルフォン帝国陸軍の……最も奴は情報局の上にガルバースの貴族だった。逆に私は外で勧誘されたクチだから常に目の敵にされてたわ」


 ため息をつきながらショットグラスに再び葡萄酒と蜂蜜を入れ、マドラーで軽く混ぜる。


「それよりも明日、監理局で報酬を受け取ってくるけど何かいる?」

「んじゃあ、オウス地区でいつものジャンク屋からこれを受け取ってきて」


 ヤックルは一枚の紙をノルに手渡す。


「はいはい。じゃ、もう帰るわ」

「うーい。じゃ、また明日ね」


 ノルはヤックルのバラックを後にする。


「……もう五年になるのか……」


 ノルが立ち去った後、ヤックルは机の上に置かれた一枚のカードを見つめる。

 そこにはヤックルの顔写真が貼り付けられており、名前の欄には山本(ヤマモト)撫子(ナデシコ)と書かれていた。

 異世界の日本と言う国における身分証明書のそれだった。


 ◇


 翌日。


「監理局公認(オフィシャル)仕事人(チェイサー)登録番号464937564、ノル・アーウェインさん。五番窓口までお越しください」


 監理局の職員がノルを呼ぶ。ノルは待合室のソファーから腰を上げる。


「ノル・アーウェインさんですね、許可証(ライセンス)の提示をお願いします」


 五番窓口のカウンターでノルはリングフォーンを操作し、許可証(ライセンス)を職員に見せた。


「……はい、照合完了しました。受け取りはどうしますか?」

「全額リンフォクレジットで」


 ノルはリングフォーンを再び操り、ウォレットアプリを立ち上げる。


「かしこまりました」


 そう言って、職員は大量の金貨をカウンタの上に置くと、手のひらをかざした。刹那、金貨は蒼白い光となり、ノルのリングフォーンに吸い寄せられ、ホログラムに表示されている数字は増加した。入金完了を示す音と共に。


「入金完了しました。ノル・アーウェインさん、お疲れさまです」

「ありがとう」


 ◇


「ん……」


 少年が目を覚ます。


「お、気がついたか坊主」


 それを見たデイヴィッドは声をかけた。


「……ここは?」

「ここか? ここは召喚監理局、坊主みたいに違う世界からやってきちまった奴を保護、監理する場所だ」


 ◇


 異世界からの迷い子。

 かつての戦争の名残が引き起こす事故は、今日もまた新たな迷い子を引き寄せる。

 ネオンと電子に置き換えられた世界で……。


<了/捲土重来>



異世界がサイバーパンクに魔改造された。

以上ですな感じからスタート。

ファンタジー×サイバーパンクは過去にもありますが、なろうなので異世界サイバーパンクで闇鍋ってみた。

「異世界がサイバーパンクならステータスオープン的な描写も無理なく自然に取り入れれるんじゃね?」と思ったがどうだろうか?

機会があれば書き直したいがすでに1年近く続けてたから一旦放出。

書きたい人がいたらかいてくれ……。

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