【小話6】○○っぽい 魔王討伐道中/オズ&ディア
本編終了後の話。
茂みから不意に襲いかかってきた魔物をディアの剣が切り裂く。
そうして俺達以外に動くものがいなくなったところで、息を吐き出しながら構えていた銃を下ろした。
「今度はクラス2と3の群れとか。いすぎだろこの森」
「そうだな」
十数規模の群れと3連戦は流石に一般人には荷が重い。
息を整えながらディアを伺えば、涼しい顔で魔物の死骸を消滅させているところだった。
息ひとつ乱さないのは流石ディアといったところだろうか。
さて、どうして俺達が魔物の群れに遭遇しているのかといえば別に運が悪いからでない。
わざと魔物が出そうな人の出入りの少ない場所に足を踏み入れているのだから、遭遇率が高いのは当たり前である。
魔王を倒した事で魔物の増加は確かに収まった。しかし元いた魔物が勝手に消える事はない。
現状王都を中心に騎士の手で魔物は徐々に駆逐されつつあるというが、一方で地方ではどうしても対処に遅れが生じてしまっていた。
元騎士として、その現状を見過ごせるはずがない。
そんなわけで俺達は冒険者業の傍ら魔物の群れの処理に勤しんでいた。
「ここら辺の魔物はあらかた片付いたようだな。気配はない」
「じゃあ街に向かうか」
草木をかき分け道なき道を進んでいく。
魔物の群れは大抵道を外れた先に巣食っているから向かうのも戻るのも大変だ。
整備された道へ戻ってきた時には地平線に日が沈みかけていた。
今日は野宿かなんて考えながら何気なく周囲を見渡して、ふとディアの持つ剣に視線が吸い寄せられる。
薄暗さの中で僅かに発光するそれは銀の茨を纏った剣——女神から与えられた守護者の力が形を成したものだ。
女神の力……か。
その時、あるアイディアが閃いた。
「なぁディア」
「ん?」
「銀の茨って剣以外にも移せたりする?」
「移動? ……む、できそうだ」
「こう、額に一周巻き付けたりとかできないか」
「やってみる」
頭に疑問符を浮かべたディアが茨を移動させていく様子を見ながら、あぁやっぱりだと頷く。
その姿はどう見ても——。
「まごう事なき夜の君……いや夜の女神だな! 痛ッ!?」
「ふざけた事言ってないで先に行くぞバカワルト」
「いってぇ……。最近容赦がなくな——っておい待てって!」




