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【6】騎士時代-副都①


 晴れて騎士になった俺達だけど、王都に配属されたディア達をよそに俺だけ副都に配属されてしまった。

 剣の腕前が全然伸びなかった俺は途中から魔銃を学び始めたから、多分それが理由だろう。なんでも副都を守る騎士の中に有数な魔銃の使い手がいるんだとか。



 副都で騎士として勤め始め半年ほどが経過した。同僚や上司にも恵まれ、充実した日々を送っている。気がかりな事と言えばディアの事だ。 

 辞令が急だった為ディアや友人達に連絡先を伝える暇がなく、この半年間ずっと連絡を取れずにいる。

 王都に知り合いがいる同僚を探して手紙を届けてもらおうかなんて呑気に考えていたけれど、王都から流れてきた噂を前にそんな考えは吹き飛んだ。


『王都に恐ろしく強い魔物色(・・・)の冷酷な騎士がいるらしい』


 思わず耳を疑った。

 この半年間にディアに一体何があったのか。いや、例えなかったとしてもディアを取り巻く環境に悪意さえあれば噂は勝手に生まれてくる。俺はそれを養成学校で嫌と言う程見てきた。悠長になんてしていられないと焦りを覚えた。


 悶々とした思いを抱えながら日々の仕事をこなし、明日は念願の非番の日。

 仕事が終わるや否や俺は、荷物を引っ掴み着の身着のまま王都行きのは馬車に飛び乗った。

 さぁ、無計画な弾丸旅行の始まりである。


 連絡先はおろか明日の予定なんて知らないから会える保証もない。考え無しなのは分かっているけど、何もしないで後悔するよりはマシだ。

 半日程馬車に揺れ続け翌朝、結局気が昂って一睡もできないまま俺は久しぶりの王都へ降り立った。まだ日も出る前だからかいつも人でごった返していた広場は閑散としていてなんだかもの寂しい。


「さて予定通り詰所から……いや流石に早すぎるか」


 予想よりも早く着いた為、早番でもない限り騎士の詰所にはいないはずだ。日が昇るまではこの辺を探して、その後訪ねればいい。

 副都に戻る事を考えればタイムリミットは粘っても今日の夕方までだ。時間は無駄にできない。


「詰所にディアかあいつらが居たらありがたいんだけどなぁ。というかもし非番だったら取り次いで貰えるのか? つーか今更だけど見回りや遠征中だったらそもそも王都にいない可能性あるよな。最悪あいつらに置き手紙を託すか。ぬあぁせめて明日も休みだったら——」

「オ、ズ?」


 静かなざわめきに包まれた大通りを歩く足が止まる。

 息を呑む音が聞こえた。

 まさか、と振り返れば視界に懐かしい夜色が映り込む。

 自然と口角が持ちあがるのを感じながら、俺は呆然と立ち尽くすディアを見つめた。

 最後に会った日よりも少しだけ髪が伸びただろうか。


「久しぶりだな、ディア」


 俺は衝動の赴くままにディアを抱きしめた。


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