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【40】南の大陸⑩


『ふむ、南の方できな臭い話は耳に入っていないが……禁制魔道具の件は部下に探らせよう。どんな理由であれ我が国に設置されてはたまらないからな。万が一見つけた場合は我々の方で対応するのでお前達はこのままに守護者探しに専念するように』


『宰相殿の言うとおり、各国への対応等は私達に任せておいてくれるかな。禁制魔導具も通例通り破壊してしまって構わない――あぁ物証が残る様な破壊方法で頼むよ。破壊した破片をギルドに提出する際はくれぐれも冒険者として対処するんだよ』


 宰相殿とウェンに連絡したところ、このような返事が返ってきた。

 指示通り魔導具の破壊を行なった後は、このまま野営地で一晩夜を明かす予定になっている。

 ここに残る理由としては仕掛けた犯人が戻ってきて証拠を消す可能性があるからだ。

 であるから犯人と魔物その両方を警戒して、俺達はいつも以上に神経を尖らせて過ごしている。




 夜明けよりも少し早い頃。

 ディアと共に最初の見張りについていた俺はドミニクとアルム少年と交代し休憩にはいった。

 今のところ何度か魔物と戦闘になったくらいで犯人は現れていない。

 毛布にくるまり近くの丸太に背を預けて空を見上げれば、俺達の心情など知ったこっちゃないとばかりに立派な月が煌々と輝いていて少し恨めしい。

 魔物と対峙したという事もあってすぐには眠れそうになかったので、俺はずっと気になっていた事について改めて考えてみようと思った。

 俺が気になっている事、それはエストルミエ王国の行動指針だ。

 未だ守護者を矢面に立たせないよう立ち回っているのは、一見すると守護者を独占しようとしているようにも見えるがどうにも腑に落ちない事が多い。

 もしそうならわざわざ守護者が現れた事を公表なんてする必要あるか?

 加えてリュネーゼのような国に属さない守護者に対しても、協力の礼として提案されたのは報奨金や魔道具のような現物だった。地位や領地など国に縛り付けるようなものは一切ないのである。

 国の対応としてはいささか献身が過ぎるような気がするんだよな。


 ここからは俺の予想だけど、エストルミエ王国は代々魔王討伐に関して何らかの役目を担っている国なんじゃないだろうか。第3王子が対応につくルーベル王国も多分同様なんだろうなって気がしてる。

 はてさて一体どんな役目が課せられているのやら……。


 そんな事を考えていると、俺の横でもぞりと動く気配が1つ。

 わずかに顔を動かせば、心配そうに眉を下げるディアと目が合った。

 ディアもまだ寝ていなかったらしい。


「オズ、眠れないのか?」

「あぁうん。どうにも目が冴えちまってさぁ」

「気持ちはわかるが少し眠った方がいい。どんな奴がこようともオズは俺が絶対守るから安心して欲しい」

「いやお前も寝ろよ」


 呆れを滲ませながらそう言えば、ディアは渋々ながら目を閉じた。

 例の決意表明以降、なーんかディアの押しが強くなったような?

 まぁ不安を抱えるよりはいいけどさ。


 結局何も起きないまま日が昇り、朝がやってきた。

 そよそよと風に揺れる草木に朝日が反射して眩しさに目を細める。

 朝食もそこそこに街へ戻りギルドへ直行した俺達は受付で事情を話すや否やすぐにギルド長の執務室へと連れて行かれた。状況説明とともに例の破片を手渡せば、向けられたのは疑念と哀れみの混じった視線である。疑われるのは心外だけど、……この国にきて早々2連続トラブル持ち込んでるもんな、俺達。


「随分とオメェらは厄介事に好かれてやがるようだなァ」

「えぇ本当にそう思いますよ。もう3度目がない事を願うばかりです」

「……まぁいい。情報提供感謝する。これはしかるべきところに届けておく」


 この街のギルド長はそう言って面倒くさげにため息を吐いた。


「ところで、さるお方が廃坑の件でオメェらを歓待したいと言ってるんだが……」

「申し訳ありませんが先方には辞退の旨をお伝え願えますか。()()()友人の故郷へ向かう約束をしていますので」

「はぁ……強要はするつもりはないからな。わかった」

「えぇ。せっかくの申し出にこのような返答となってしまい非常に心苦しいですが……そもそも冒険者として当たり前の事をしたまでですから」

「……当たり前なァ?」


 申し訳なさそうに眉を下げるドミニクを見て、ギルド長は白々しいと言いたげにふんと鼻を鳴らすもあっけなく引き下がった。それで話は終いだとばかりにギルド長はチッと舌打ちをすると、俺達に向かい手で追い払う様な動作をした。


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