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【27】旅の始まり④


 鬱蒼とした森の中は木々により日の日差しが遮られ、まだ日は沈んでいないのに薄暗く視界が悪い。足場も悪い道なき道をアルム少年はまるで道が見えているかのようにずんずんと進んでいくので俺とディアはともかく常に小走り状態のミュイ嬢とルーチェ嬢はややしんどそうだった。

 そんな2人に気を配りつつディアと二人体制で殿を務めながら進む。

 正直、森にはあまりいい思い出がない。


「……」


 そのせいか無意識に詰めていた息を吐き出しながら、汗で滑る魔銃を握り直した。




 ふいに、森が途切れる。

 薄暗い森の中から一転、ひらけた視界に飛び込んできた夕日が眩しくて思わず目を眇めた。

 明るさに慣れてきた目で周囲を見渡せばここは森の中にぽっかりと空いた空間らしい。中央にある湖の水面に反射した夕日がキラキラと輝き、幻想的な光景を作り出していた。


「わぁ……綺麗」


 ミュイ嬢が目を輝かせながらその光景に魅入っている横ではルーチェ嬢はただじっと湖面を凝視し続けていた。まるで何かがそこにある、と言わんばかりに。

 疑問に思ってディアやアルム少年を見やれば、2人の視線もまた湖面に向けられている。


「確かに守護者の気配はある。だが、何故湖の()に――そんなことがあるのか?」

「は?」


 キラキラ輝く湖面の下に、俺達が探している守護者はいるらしい。

 守護者って人間だよな?

 水中って——まじでどういうことなんだ。


 先程の衝撃が拭えないままいつ魔物が来てもいいように武器を構えつつ湖に近づいていく。

 湖の中が見えるようになっていくごとに、俺達はその理由を悟った。


「……でけぇな」

「……あぁ」


 湖の底には黒々と大きな巨体が渦巻いている。その黒の中に時折ちらつく赤い点はおそらくそいつの目玉だろうか。

 黒い表皮に赤の瞳――湖の底に沈む巨大生物は間違いなく魔物の特徴を有していた。


「魔物の中に、守護者がいる」


 ルーチェ嬢が湖底を指差し、淡々と告げる。

 なるほどな、アルム少年が焦っていた理由はこれだったわけだ。

 腹の中の守護者がどういう状態で生きているのかはわからない。

 けれど、少なくとも時間が経てば経つほど腹の中の守護者の命が危険に晒される事になるのは確かだ。


 正直普通だったら手遅れだったと絶望しそうな状況だけど、伺い見たアルム少年に憂いの色は見当たらない。つまり、これは予定通りの展開ということだ。

 それなら確実に、守護者は生きている。


 優雅に、そして雄大に水の中を泳ぎながら魔物が湖面へと近づいてくる。

 きっと俺たちの事を新たな獲物と認識したのだろう。


「……くるぞッ!」


 険しい表情で光を纏う両手剣を構えたアルム少年に続く様に、俺達も己の武器を構える。


 次の瞬間——静かな水面を突き破るように、天に向かって巨体が伸びていく。


 夕日を反射してキラキラと宝石のように輝く大小の水飛沫。

 禍々しい黒を体躯をしならせながらギラギラと血のように赤い瞳が俺たちを見下ろしていた。


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