【小話2】養成学校時代/オズワルト
「そういえばさ。養成学校にいるやつって貴族平民問わず全員家名持ちだよな」
俺の言葉にディアはきょとんとした顔で小首を傾げた。
「養成学校に入学時に家名を持たない者は学校から賜るんだ」
「へぇ、そうだったんだ。てっきり自由応募を謳っていても取捨選択してるんだとばかり……」
「阿呆か」
ディア曰く、家名を持たないものは入学前に個別で呼ばれて説明があったらしい。
なるほど、どうりで知らないわけだ。
「その反応だとオズは家名持ちか。平民にしては珍しいな」
「そうなの? んー代々町の町長やってる一族だからかもな」
ん?でもうちの町、役職のない町人でも家名持ってるやつそこそこいたような?
まぁそういうこともあるか。
「オズ、長男だって言ってなかったか?」
「んあ? まぁそうなんだけど、騎士になりたいって俺が小さい頃から言い続けるもんだから、家族が折れた感じ。あと、俺に継ぐ気がないならぜひお役目を継ぎたいって妹が言ってくれてさ。まぁなんだかんだ言っても皆俺の夢を応援してくれたけどな」
「……オズの家族は皆仲が良さそうだ」
「時々やたら騒々しいけどな。ディアが良けりゃ遊びにくる?」
その問いにディアは苦笑を返すのみだった。
遠回しな拒絶を残念に思いながら、俺は取り留めのない話を口にする。
「そういえば校舎裏の猫がさ――」
いつか家族に自慢の友人を紹介できればいいなぁなんて――心の中で考えながら。
[小話2:前略母さん、今回の手紙には自慢の友人について書こうと思います。]




