【小話1】養成学校時代/ディア
突然だがオズワルト・クローセムことオズの目は少し……いやかなりおかしい。
というのもいつも普通の挨拶の後、
「今日も美人だな!」
なんて平気で言ってくるからだ。
意味がわからないし反応に困る。男に美人って何だ。あとは、
「お前の目っていつみてもキラキラしてて綺麗だよな」
とか、
「相変わらず夜みたいな髪だよなぁ。星の装飾とか似合いそう」
なんて事も言ってくる。
オズの目には一体俺の髪や目がどう見えているのだろうか。
魔物とは全然違う――なんてあいつが力説するから魔物の資料を見たものの、正直そんなに違いがあるとは思えなかった。……俺の目がおかしいのだろうか。
いや、周りの反応を考えればやはり俺の目は正常だ。
あいつの目にはきっと何か特殊なフィルターがかかっているに違いない。
そんなおかしな人間は俺の周りにはオズしかいないけど……でも。
そのたった1人が俺の世界を塗り替えた。
――騎士になって魔物を倒せば英雄と呼ばれた絵本の騎士の様に認めてもらえるんじゃないか
幼い頃に描いた荒唐無稽な希望を、信じ続ける勇気をオズがくれた。
俺の未来は思っていたより明るいのかも知れないと、オズのおかげで思えるようになった。
苦しい事も辛い事も沢山あるのかもしれないけど、でもきっと大丈夫。
「ディアおはよう! ……どうした、何かあったのか?」
だって俺の隣にはいつだって勇気をくれるオズがいるから。
「おはようオズ。何か変だろうか?」
「いやなんていうかさぁ、今日はいつもより瞳と髪のキラキラ度が足りないっていうか……」
「きらきらど」
「そうなんだよーなんか儚げな感じで少し心配になったんだよなぁ。まぁどんなディアも綺麗な事には変わりないんだけどな!」
「お前もう黙れ」
だから、大丈夫。
今も、そしてこの先も。
[小話1:陽だまりの君はいつも隣に]




