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【23】騎士時代-王都(終)


 謁見の間につけば、ディアと宰相殿だけでなくこの国王様もいた。即座に臣下の礼をとったものの俺の脳内は疑問符の嵐だ。……まじで呼ばれた理由がわからない。


「さて、オズワルト・クローセムも揃ったところで両名には魔王討伐の任を命ずる」


 …………………………なんて?


「発言をお許しいただけますでしょうか」

「許可しよう、ラシュラム」


 驚く俺の横で眉間に皺を寄せたディアがすぐさま食ってかかった。


「何故彼も任命されたのでしょうか。此度の相手は未知の魔王です、守護者ではない彼には荷が重過ぎると思われますが」

「実力を把握した上で我々も決定に至った。クローセムには彼ら――光の勇者達の監視と報告を任せたいのだ。ラシュラムとの一件も報告を受けているが……なかなか思い込みの激しい少年のようだからな」


 なるほどそういう理由ね。あとはまぁ、主人公達とディアの緩衝役っていう意味合いもありそうだな。そんなふうに心の中で納得していたら顔を上げるように言われたわけだけど、顔をあげたら少しニヤついた宰相殿と目があった。


「時にクローセム、君はこの国で認識改革を行なっているそうじゃないか。他国でのラシュラムの髪色に対する忌避感は未だ根強いと聞いている。この機会に世界中の認識も変えてきたらどうだね?」


 顔をひきらせた俺を見て、宰相殿はしたり顔で笑う。

 そんなご大層な活動じゃないんだけど……なんか大分大袈裟に伝わってないか?

 この分じゃ俺の異例の出世にはそこらへんの事情も絡んでそうだなぁ。


「出立は3日後だ。急な話ではあるが事態は急を要する。両名とも、頼むぞ」

「「拝命いたしました」」




 そんなわけで長期任務を命じられた俺たちは、それはもう慌ただしく準備を始めた。

 旅支度だけでなく仕事の引き継ぎもとか無茶苦茶だろ。実質問題刻一刻と魔王の脅威が迫る中で時間は惜しいだろうけどさ。

 まずはすぐ班に戻ってすぐに俺たちの代理を決めた。事情を把握している遊撃部隊長や他の班長達の助力もあってなんとか必要最低限だけは引き継ぎはできた。その合間に国から支給された資金で自分たちの旅支度を整えれば3日間なんてあっという間で、もう出立前夜だ。


 明日からの任務を思うと、夜更けだというのにひどく目が冴えて一向に眠気がやってこない。

 一睡もできないまま朝を迎えそうなんだけど……大丈夫かな俺。

 俺の立ち位置は前線に立って武器を奮う事ではないとはいえ、旅中の戦闘は避けられないだろう。

 中途半端な強さしかない俺がどれだけ守護者達に食らいついていけるかはわからない。


 気を紛らわせるように寝返りをうつと、窓辺に立たずむ人影が目に入り思わず叫びそうになった。



「びっくりした……起きてたのかよディア」

「……オズも眠れないのか」

「まぁ、な」


 とっくに寝ているとばかり思っていた親友殿もまた眠れないらしかった。

 ガラス越しに映る表情は暗い。

 そりゃ、そうだ。俺と違ってディアは守護者として魔王から世界を守る宿命を背負っているのだから。負けたら即世界滅亡のバッドエンド、故に撤退も敗北も許されないわけだ。

 その肩にしかかる重責は計り知れない。


「きっと大丈夫だって。何年後かには『魔王との戦いは大変だったなー』なんて語り種になってるさ。こういうのはだいたい魔王を倒してめでたしめでたしハッピーエンドって相場が決まってんだよ」

「またお前は能天気な事を」

未来(さき)の事なんか悩んでも結局答えなんてでないしな」

「やけに実感がこもっていないか?」


 そう言えば、ディアは呆れたように笑った。

 実感、な。そりゃそうだ、なんせずっとあの記憶に煩わされてきたんだから。


「……そろそろ寝るか、ディア。欠伸を堪えながら出立なんて格好がつかないからな」

「ふふ……そう、だな」


 窓から離れたディアが小さくあくびをしながら向かいのベッドに潜るのを一瞥して、俺は天井を見あげた。


「おやすみ、ディア」

「ああ。……おやすみ、オズ」


 際限なく込み上げてくる不安に蓋をするように目を閉じた。




 そして翌日、光の守護者御一行――主人公とその幼馴染、そして巫女の少女の3人だ――と顔合わせを済ませた俺たちは、決意新たに魔王討伐へと第一歩を踏み出した。


 世界を存亡をかけた長旅の始まりだ。




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1章はこれにて完結となります。

ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

もしよろしければこの後の2章も引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

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