【22】騎士時代-王都⑩
姿形も知らなかった主人公は真昼の太陽を彷彿とさせる金髪に意思の強そうな蜂蜜色の瞳が印象的な少年だった。まさしく正統派主人公って感じ……だったんだけどな。
いくらなんでもこれはないぞ主人公。
初対面の相手をよくわからん名前で呼んだあげく魔王の手先扱いとか……悪質過ぎるだろ。
この10日間でディアが守護者である事はある程度広まっているし、なにより王族直々に保証されているわけだから疑いが広まるようなことにはならないとは思うけど根も葉もない噂が好きな奴はどこにでもいるから少し心配だ。
一方色々好き勝手言われたディアは、先ほどから一言もしゃべらず絶対零度の眼差しで主人公を見下ろしている。ディアの好感度が既に地の底なんだけど、守護者同士協力できるんだろうか。
主人公の自業自得なんだけどさ。
突然割って入ることもできずディアの隣で様子見してた俺だけど、周囲からそろそろお前なんとかしろよという圧が強い。そろそろ緩衝役のお役目果たしますかっと。
「失礼、……光の守護者殿、陛下がお待ちです。どうぞ、迎えの騎士が応接の間へと案内いたします」
「なんだよお前どけよ! それどころじゃないんだって、そいつは――」
「彼の名はヘルトではありませんよ。……人違いではないでしょうか」
「なぁおいヘルトも転生者なんだろ! なんで勝手にストーリー改変してんだよ、進行が変わっちまうじゃねーか!」
あーだめだこいつ話を聞いちゃいねぇな。というか、ストーリー改変って何。
俺はストーリーの詳細はおろか登場人物の名前や姿形さえわからないから聞いたところで分からないんだろうけど……気になるな。
ディアに突っかかりながらこの後の展開がとかなんとか言ってた主人公だったが少しして漸く自分の愚行に気づいたらしく、それからは借りてきた猫のようにおとなしくなった。騎士に連れられて謁見の間へと向かう主人公達の後ろ姿を見送りながら、俺はほっとしたように深く息を吐き出した。
なんかパニック起こしてただけみたいなので、普段はあそこまで短絡的じゃないと信じたい。
誰にでも失敗はあるし……まぁ、うん頑張れ未来の英雄!
だけど謁見の間ではくれぐれもトラブル起こすなよ。
「俺たちもそろそろ行くかぁ。で、あいつって守護者確定?」
「あぁ。不快極まりない奴だったがな」
「お前の事魔王の手下呼ばわりだったもんな。つーかヘルトって誰だろ」
「俺が知るわけないだろう」
ふん、と不機嫌そうに鼻を鳴らすディアは主人公達の謁見が終わり次第入れ替わりでこの国の宰相殿にお呼び出しがかかっていたりする。
ディアの呼び出し内容の予想は簡単だ。いよいよ魔王討伐に向けての長期任務が始まるのだろう。
きっと過酷なものになるはずだ。本当はディアのサポートができればなんて思うけど、こればっかりはついていけない。だってなぁ、確実に足手纏いだし。
「魔王相手に無茶すんなよ――とは言えないけど……絶対に生きて帰ってこいよ」
「あぁ」
武運を祈ってる――なんて言っていたら、ディアが呼ばれてそれほど経たないうちに俺も呼び出しをくらった。
えっ、これ何の呼び出し?




