【21】騎士時代-王都⑨
「……副都の皆は元気かなぁ」
月日が過ぎるのは早いもので、季節はもう春だ。俺たちもとっくに業務に復帰しいつも通りの日々を送って――いたかったけど、残念ながら現在は御伽噺の再来に世界中がてんやわんやだ。
なんたって今度は魔王。その姿も、その強さも完全なる未知の存在である。
そんな魔王の復活が王族から発表されたのは10日程前。魔物の件の事後処理が色々と終わってからそれほど経たずしての事だった。
「勤務中だぞ、オズ。いくら今日が王城の警護とはいえお前は色々と気を抜きすぎ――」
「へいへい申し訳ありません、守護者殿」
おい茶化すな、とジト目を向けてくるディアを横目に俺は空を見上げる。
やっぱりというかディアは案の定守護者だった。
魔物襲撃事件の後に俺とディアは上層部へ報告に行く機会があったんだけど、その場は何故か教会の神官も同席していた。よく知ってる人が見ないとわからない程度に顔をこわばらせながらディアが状況報告を終えると神官がこう言ったのである。
――間違いありません、彼は闇の守護者です
シン、と静まり返る報告の場で驚いてなかったのは多分その神官と俺だけだと思う。不審に思われないように俺も驚いたふりをしたけどな。俺はその後口外禁止を命じられ報告の場を追い出されたからそれ以上は何も知らないけど、なんとなく予想はできた。多分守護者と魔王の事だったんじゃないかな。この分じゃ教会と上層部は御伽噺が実話だと知ってたんだろう。
そして10日程前、魔王復活の報せと共にディアが守護者の1人であることも発表されたのでだった。
いやー手のひら返しが凄いのなんのって。守護者ってようは世界の救世主なわけよ。ディアに取り入っておこうとした輩がやたらと湧いた。そんなわけで、群がる奴らにディアが絶対零度の眼差しを向け追い返す日々が続いている。
「つっても、俺たちがここに居るのは今から来る奴が本当に守護者か確かめる為なわけだし……もう少し肩の力を抜こうぜ?」
「守護者同士は会えば分かる――だったか。……本当なんだろうか」
「さぁな、とにかく見たらわかるだろ。お、馬車がきたぜ」
状況からしてあの馬車に乗っているのがおそらく光の守護者――例の記憶にあった主人公なんだろう。記憶通り冒険者だったらしいそいつは、なんでも丁度副都近くで覚醒したらしかった。そして、すぐさま教会がその事を把握してこの国の王様に報告。この度王都に招かれ今日が到着の日だった。
「光の守護者ねぇ。どんな奴なんだろうな」
そんなわけでちょーっとワクワクしながら主人公とご対面、なわけだが――。
「なんでヘルトがここにいるんだよ! お前まだ時期的に魔王の手先として行動してるはずなのに――はっまさか転生者!?」
訳がわからず困惑する周囲。超絶不機嫌なディア。……そして混沌とした状況に頭を抱える俺。
おい誰だ光の守護者に余計な要素足した奴。こいつ絶対、俺より詳しい銀英の記憶持ってるだろ!




