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【16】騎士時代-王都④


※ややグロ注意




 俺たちが今しなければならないのは後続部隊に魔物の存在を伝える事と足止めだ。

 前者はすでに数名かを伝令役として向かわせている。

 それでもって俺達残留組は今、後者を担当していた。ぶっちゃけ一番死ぬ可能性が高い囮だ。

 正直俺だってディアでさえ対処できない相手に勝負を挑みたくなんてない。

 だけどこのまま撤退すれば万が一にも魔物が王都を襲撃する可能性があるのだ。

 最悪な展開――それだけは絶対に避けたかった。

 戦えない一般市民を守るのが俺の憧れた騎士だから。


「クソッ」


 襲ってくる魔物の腕をなんとか躱しながら俺は悪態と共に荒い息を吐きだした。

 幸いにも魔物の動きはそこまで早くないので今のところギリギリのところで危うい均衡を保っている。本当にギリギリだけどな。

 なにせ一度でもあの攻撃が直撃すればミンチになって即終了、直撃を避けたとしても手足骨折で戦線復帰は絶望的。魔物を引きつけるためにこの場に残り戦い始めた騎士は20人程いたが、経験の浅い騎士ばかり。夜が明け始めた今、残っているのは10人程度。

 戦い始めて数時間、皆疲労で動きが鈍くなり始めており正直まだ戦えているのが不思議なくらいだった。後続部隊はまだこない。


 また1人、ぐしゃりと血飛沫を撒き散らしながら木の幹のような魔物の腕に押し潰された。


 誰かが無理だと、つぶやいた。


 また1人、魔物の腕に絡め取られた者が魔物の歯で生きながらズタズタに噛み砕かれた。


 錯乱状態の騎士が我が身を顧みず魔物に剣を突きたてる。


 そうしてまた1人、魔物の胴体に押し潰された。


 それでもまだ、後続部隊はこない。来る気配がなかった。


 いつまで戦えばいい。

 あとどれくらい戦えばいい。

 危険を冒しながら魔物に肉薄し切りつけていたディアが魔物の攻撃を躱わして俺の横に着地した。


「これ以上は無理だ。撤退しろ、オズ。……後は引き受ける」


 他の騎士を目掛けて振り上げられていた魔物の腕を魔銃で撃ち抜きながら、俺はディアを睨みつけた。

 後衛部隊が来ない以上、ここで足止めしていても俺たちに待つのは全滅だ。それならば俺たちの中で一番戦力的にずば抜けている奴が囮となり他は撤退したとしても大差ないはずだ――ディアはそう言いたいのだろう。俺が口を開く前に、ディアは魔物へと向かった。

 魔物を切りつけて気を引いて、ディアは森の奥へと入っていく。同僚達はその姿をただ呆然と見送るだけだ。すでに疲労度は限界だ。気が抜けたのか座り込む奴もいる。

 助かった……誰もが皆そんな感じだった。


――ふざけるな


 混みあがってきたのは激しい怒りだ。


 ディア、お前さっき魔物の腕を躱し損ねて掠ってただろ。

 そのせいで今利き腕が動かせないはずだ。そんな状態で何が引き受けるだ。


 いつもなら足手まといだったかもしれないが、あいにく今のディアになら劣る気はしない。

 俺は自分の武器をぐっと握りしめた。

 自分が死ぬ恐怖より、親友に対する怒りが勝った。


「……休んだら早々に後続部隊に合流しろよ」

「お、おい! お前は何するつも――」

「ディアを追いかける」


 近くに居る騎士に告げ、俺はディアが消えた森の奥へと駆けた。


「誰がディアの言う事なんて聞くもんかッ」


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