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【15】騎士時代-王都③

※ややグロ注意




 臨戦態勢で現場にたどり着いた俺たちの視界に広がるのは、紛れもない地獄絵図だった。

 むせかえるような鉄の匂いの中、それを作り出した魔物はボリボリと人間を貪り食っていた。生きながらに骨を砕かれ肉を引きちぎられ喰われていくその騎士はうめき声と共にゴポリと血を吐き出しだすとやがて痙攣して動かなくなった。俺たちに気づき縋るように伸ばされた騎士の手が魔物の牙で裁断されぼとりと虚しく地面に転がり落ちる。

 辿り着いた誰もがその光景に声もなくただ凍りついたようにその場から動けないでいた。


 夜闇の中では魔物の姿をはっきりと捉える事はできないが、大きさぐらいはわかる。

 その大きさはまるで小さな山だ。足のようなものは見当たらない。

 また胴体から生えたいくつもの腕には手足や首があり得ない方向にねじ曲がった人間が握られていた。あれほどまでねじ曲がっていればもう手遅れだろう。すでに食われた誰かの足や腕が周囲に無造作に落ちていた。

 うまく働かない頭で指揮官の姿を探してもその姿はどこにも見つけれない。

 よく見ればあいつの敷物にと貸しているテントだったモノには見覚えがあった。

 あれは本部のテントのはずだ。

 まるでどこから潰せばいいのかわかっていると言わんばかりの所業に冷や汗が止まらない。


「うそ、だろ……」


 ぼりぼりと人間をかじり続ける魔物の姿に、誰かが無理だと呟く。


 すでに先行部隊の半数は死傷、魔物討伐経験の豊富な指揮官の生存は絶望的。こんな状況でどんな対策をとればいい。魔物討伐経験の浅い人間だけで挑むには無謀すぎた。


 人形のように動かなくなった人間を食い終わった魔物は、次の餌を探すように顔であろう部分を怠惰に持ち上げる。そいつは俺たちを視界に入れると、まるで嗤うかのようにその醜悪なその口を歪めた。


「………………はは、冗談だろ?」


 それを皮切りに生き残っている俺達の間に絶望が伝播していく。戦意喪失した騎士がひとり、膝をついた。


 俺の脳裏に『全滅』の2文字が駆け抜けていった。


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