【14】騎士時代-王都②
事が起こったのはそれからさらに半年程過ぎた頃、今にも雨が降りそうな天候の悪い日の事だった。
ここのところ魔物の目撃情報が異様に増えて俺たち騎士は慌ただしい日々をおくっている。
俺たちの休息など知ったものかとばかりに深夜でも構わず魔物が出没するものだから、おちおち寝てられない。そんな中、王都の近くにある森に巨大な魔物の目撃情報が寄せられた。
見かけたのは森近くの道を通っていた商人で、なんでも森の奥の木々の隙間からズルズルと地面を這う黒い巨体を目撃したらしい。
目撃情報から推定される魔物のクラスは4以上。下手をすると『団』単位で挑まないといけない強さの魔物だ。
未だ被害報告はないもののすぐに厳戒態勢が取られ、騎士による魔物討伐が始まった。
まずは魔物を捜索する先行部隊が投入されるわけだが、その数は第3騎士団の半数にあたる100人程。俺たちの班もそこに組み込まれていた。
魔物捜索3日目。森が広すぎるとはいえ、王都に近いあたりはほぼ調べ尽くしたというのにまるで手がかりがない。痕跡すら見つからないってどういうことだ。目撃情報では大きな黒い塊が這うように動いていたというが、その地点に行っても特に何かが引きずられた痕跡は見つからない。
結局その日も大した収穫は得られないまま捜索は中断。流石にこれだけ探して手がかりゼロとなると、森の奥に移動した可能性も視野に入れなければならなかった。
「ここまで探しても成果なしとか……なんか不気味だよねー班長」
「そうだな」
夜、野営地で見張りをこなしていた俺は、同じく見張り中の班員を見やる。
「あんまりにも見つからないから、実は人の姿に変えてるんじゃないか――ってやだなぁ班長睨まないでよ~これ言ってたの先行部隊の指揮官サマとその取り巻きだからね?」
「あの人達か……」
「僕たちの班の野営地が本部から一番離れてるのもそいつらの嫌がらせじゃん。まぁ気が楽でいいけど」
「上層部に報告するけどどこまで効果があるんだか。てかロダ、おしゃべりより警戒しろよ」
「やってますぅー。でもさ、ここまで何もないと流石に――」
ズシン、と地面が揺れた。
即座に立ち上がり、俺たち武器に手をかけ周囲を警戒する。
夜の木々からバサバサと飛び立つ鳥の位置からするとあの場所は――。
2度目の地響きとともに、近くで誰かの断末魔の叫びが夜の森に反響した。
「ロダッ、班員起こせ!」
「りょーかい!」
俺たちは武器を手に現場へ急いだ。
この日、今まで痕跡すら辿れなかった魔物が突如として奇襲をかけてきたのであった。




