地球の岩を召喚して落とす事しか出来なかった召喚士、座標変更で深海の水やマグマを飛ばして敵無し状態になる。~逆恨みで襲ってきた、俺を竜の囮にした元パーティーの最強外道メンツも、これで一泡吹かせてやるさ~
序盤本当に胸糞なので、そこだけご注意を!
俺はショウ、地球で1度死に、異世界転生を
果たした後に、ゆくゆくはSS級パーティーとして
魔王討伐を期待される、異世界転生者で構成された
B級パーティーの召還士として活動している。
…………のだが
「ギャアアアアアッ!!! なっ、何するんだっ!?」
加減された両手斧の一撃により、両脚の骨が
砕けつつも、脚その物は残っている。しかし、
その中途半端な傷は、俺に限界レベルの痛みを
与えてきた。
「兄貴はスキルを用いて後衛の女共と離脱した。
そして現場には血だらけで、肉の焼けた臭いを
放つお前と俺、そして凶悪なレッドドラゴンだけが
残った」
何を…………言っているんだ…………?? じゃあ一緒に
逃げな…………きゃ………………
「つまり、お前の脚を砕いて動けなくして、
その隙に全速力で逃げてこいということだ。
流石は兄貴、本当に天才だねぇ」
…………そう言うことか。リーダーと後衛2人が
去り際に微笑みかけたのって…………そしてコイツも。
…………初めから俺は、仲間じゃなかったんだ。
~10分前~
「おい、遅れてんぞ、さっさと歩かねぇか」
刃渡りが胴体ほどある両手斧を肩にかける男が、
俺の片膝を蹴り曲げつつ威圧してきた。
「うわっ! とっ! とっ…………す、すいません…………」
パーティー全員の大荷物を抱えている俺は、
よろめきながらも体制を立て直し、直ぐ様謝罪した。
謝罪がなければ拳が飛んでくるし、荷物を落とそう
ものなら全員がかりで半殺しにもされてしまう。
「あっははーーー! 今の見た? 情けない声上げて
さー! 男としてどうなんかな~??」
「無いねー。奴隷でもここまで男を捨ててる奴は
無いわー。無い無いー」
魔導士、聖職者の女は、主に言葉で俺のメンタルを
抉ろうとしてくる。もしも先程荷物を落とした場合は、
杖で殴ってくるし、時には魔法で攻撃すらしてくる
外道だ。
「まぁまぁ落ち着きたまえ、ローズちゃんに
アリスちゃん。彼だって一生懸命頑張って、
俺が片腕で持てるような荷物を持っているんだ。
うめき声の1つや2つ、多めに見てやっても
良いんじゃないか?」
白金色の長髪を靡かせる美形の男が、パーティーの
女2人を宥めるように、俺への嫌みを交えて
話し出した。
「けど、アーロンの兄貴、コイツが荷物持ちを
してるのって、録に戦闘できねぇから、俺達が
お情けで仕事を与えているだけだよなー」
「あら、カルロスの癖に正論を言ったわね~」
斧戦士、カルロスの一言に、魔導士ローズは
同調した。
「そうそう、弱い、奴隷未満、男ですらない、
何もないコイツに、優しい優しい私達4人が
荷物持ちという"存在意義"を与えてあげたの
よね~~」
「その通り、俺達は放っとけば、飢え死にしか
未来がない君に、仕事を与えているんだよ~~。
さぁ、こういう時は何て言えば良いのかな~~?」
「あ、ありがとうございます…………」
言いたくない…………けど、言わなければ半殺しだ。
「んん~~?? 聞こえなかったなぁ~~~~!!」
頭の中を覗き込む視線に、際限無く溢れる邪悪な
気配…………怖い。本当に怖いのは、カルロスでも
女2人でもなく、コイツだ。
「ありがとうございますっ!!」
「偉い! よくできましたっ!!」
屈託の無い笑みを浮かべ、荷物を揺らさずに
運ぶことで精一杯な俺の頭を遠慮無く撫でてきた。
「うわっ! ちょっ…………とっ! とっ! とっ!?」
こんなに体を揺らされたら、荷物が崩れてしまう。
だけど落とすわけにはいかない。
「…………おい、ゴミ。何でアーロン様の寵愛を受けた
癖して、情けない声でよろめいてるんだ?」
ローズが低い声で威圧してくる。
「そうよ、大方眩しすぎてよろめいたんでしょうけど、
そんなんだから男になれないのよ」
聖職者アリスは、俺を心底蔑んだ目で吐き捨ててきた。
「お仕置きが必要ね。ありがたいと思いなさい!」
遠心力が乗った杖の先端部を直撃させてきた。
「この! 役立たずの! ろくでなし!」
それも何度も何度も。恐らく後30回程殴って
くるだろうか。だが、役立たずで言えば、コイツら
全員もそうだ。
「ギャッ! 前…ブッ!! モンスダアッ!!」
俺は殴られつつ、前方にモンスターが居ることを
伝えた。危険なダンジョンでこんなことを平気でする
奴らだ。モンスターの気配に気づくのは、俺よりも
圧倒的に遅い。今まで何度も俺が気づかなければ、
全員あの世行きだった局面があった。
「ブハッwwwww! モンスダアッって何だよ?」
殴られておかしな発音になった俺を、カルロスが
笑い飛ばした。
「さぁ? お星さまの1種かしら?」
アリスがとぼけて見せる。
「んなの関係ないわよっ! もっと反省しなさいっ!」
ローズは更に怒って殴ってくる。危険を教えて
やったのに、この仕打ちは本当に畜生外道だ。
「おやおや皆。あんなところにリザードマンの大群が居るぞ」
リーダーでもあるソードマスターのアーロンが、
俺の成果をさらりと自分の物にした。
「キャッ、怖いわ~…………」
アリスがわざとらしく怯え、アーロンのコートの
裾を握った。コイツだってあれくらい一掃できる
実力がある。…………そう、コイツらの実力ときたら
「案ずるな、アリスちゃん。どれ、リーダーの俺が
一肌脱いで見せよう」
アーロンはアリスの頭を、俺と違って優しく撫でると、
ロングソードを抜いた。
「アーロン様…………」
アリスがアーロンに向けるその顔は、意中の男に
向けるそれだ。
「お見せしよう…………我が」
「「おおっ!」」
「剣技」
アーロンが剣を構えて駆け出した。俺がそう認識した
瞬間、リザードマンの首が一斉に宙を舞った。それは
3人も同じだったようで、カルロスとローズは同時に
声を上げ、アリスは更に見とれた表情になった。
「!、壁から来ます!」
壁の壊して突き進む轟音、あまりにも長年敵の気配を
察知してきた俺は、所謂エコーロケーションを習得
していた。
「それがどうした。無能がっ!!!」
カルロスがイラつきながら、岩壁を壊して
襲いかかってきた岩竜を、通常攻撃1発で
向こうへと吹き飛ばしてしまった。
「いよっ、流石は筋肉大将~~!」
アーロンはわざとらしく、カルロスを大袈裟に
褒め称えた。ローズも口角を上げて、「その力だけは
本物ね」と言わんばかりの表情をしている。
「上から15匹来ます!」
「うるっさいのよっっ!!」
ローズは氷の槍を複数本作り、それらを15匹の
飛竜の幼体に直撃させた。
「ヒュウ~~♪ 女の怒りは怖いねぇ~~」
その様子を、カルロスは茶化した。仮に俺が同様の
発言をすれば、最悪殺されるかもしれない。
『グェ~~…………』
1体、死にそびれた個体が声を上げた。
「あら、可愛そうに。種族は違えど同じ命、助けて
あげましょう」
アリスはそう言って、片方の翼が千切れて胴体の
傷口からは、内蔵が見えている個体に、回復魔法を
かけた。
『グエッ??』
すると、個体の傷は塞がり、千切れた羽も元通りに
なったのだ。
「おお、流石は我がギルドのヒーラー! 回復力が
段違いだ!」
「そこらの聖職者とは訳が違うわね」
「モンスターにも優しいアリス。これだから俺は君を
手放せないのだよ」
三者三様、アリスを誉めに褒め称えた。…………そう、
この4人が揃っていれば、俺が敵を見つけるまでもなく、
アーロンが瞬殺するし、相手が巨大ならカルロスの
力業で対応できるし、遠距離ならローズの攻撃魔法で
どうにかなる。そして致命傷を負っても、アリスの
回復魔法でどうにでもなるのだ。助けた飛竜が次の
瞬間噛みつこうが、殺して回復すれば良いだけの事。
コイツらは、強すぎる。
・アーロン レベル50 職業 : ソードマスター
HP 2000/2000 MP 585/600
物理攻撃力 2120
物理防御力 960
魔法攻撃力 500
魔法防御力 1300
身体操作性 3400
敏捷性 6600
幸運力 2000
称号 光の剣士
ステータス的にも歴代冒険者最速で、スキルを
用いればどんな手練れも反応できない速度で移動・
攻撃が可能。攻撃力も高いので、殆どの敵を瞬殺
してしまう。それだけでなく、如何なる攻撃も
避けてしまうので、冒険者で最も死から遠い男と
呼ばれている。
・カルロス レベル48 職業 : 斧戦士
HP 4000/4000 MP 190/200
物理攻撃力 5000
物理防御力 2500
魔法攻撃力 100
魔法防御力 600
身体操作性 1800
敏捷性 2300
幸運力 500
称号 竜殺しの鬼
冒険者で初めて物理攻撃力が5000を超えた
怪物。筋肉だけで重歩兵を超えた物理防御力を
誇る他、その辺の一流ソードマスター以上の
技と速さすら誇る、本物の怪物だ。
・ローズ レベル45 職業 : 魔導士
HP 500/500 MP 1940/2000
物理攻撃力 230
物理防御力 100
魔法攻撃力 5900
魔法防御力 3500
身体操作性 1100
敏捷性 860
幸運力 1500
称号 第1級魔導兵器
カルロスの対になるように、冒険者初の魔力
5000超えの魔女だ。相手からの魔法にも強く、
天から降り注ぐ雷魔法も、コイツからすれば
むず痒い静電気だ。
・アリス レベル49 職業 : 聖職者
HP 400/400 MP 2970/3000
物理攻撃力 120
物理防御力 160
魔法攻撃力 4500
魔法防御力 4000
身体操作性 1500
敏捷性 690
幸運力 1900
称号 地を歩む天女
ローズには及ばないが、化け物クラスの魔法
攻撃力に、ローズ以上の魔法防御力、そして、
アーロンに並ぶ幸運力を持つ。光魔法はゾンビ等に
効くため、ステータス以上に期待されてもいる。
…………それに対して俺は
・ショウ レベル18 職業 : 召喚士
HP 220/300 MP 800/800
物理攻撃力 86
物理防御力 40
魔法攻撃力 300
魔法防御力 250
身体操作性 20
敏捷性 43
幸運力 20
称号 無能召喚士、男未満、荷物持ちの荷物、ノロマ
…………ああ、何という弱さだ。
とても同じ転生者とは思えない。これでも5人とも
地球の日本から転生してきたのに、何処で差が着いたの
だろうか…………。
この世界の女王様に召喚され、それぞれが女神の天啓を
受けて今の職業に成った。最初は当然、ちょっとした差
しか着いてなかった筈だ。
~回想~
「ショウ、今度はお前の能力を見せる番だぞ」
「召喚士っていうくらいだし、ドラゴンとか出してよー」
「期待していますわ」
「分かったよ。出でよ!!」
3人の期待を浴び、俺は先程確認した特技 : 召喚を
繰り出した。
「「「「……………………何も出てこない」」」」
俺を含む4人は、あり得ない現象に首をかしげた。
『ゴポァッ!!』
「うわっ!?」
雑魚として相手に選んだスライムの突撃を食らい、
俺は転倒した。
「たっ、助け…………!!」
よく考えると、この時から俺は仲間じゃなくなって
いたのかもしれない。
「ショウ君、スライムごときなら、魔法系の素手でも
勝てる相手だ。練習だと思って単独で倒してみたまえ。
女王様の1番の期待を裏切るなよ!」
それまで静観していたアーロンが、俺に単独撃破を
命じた。
「うわああっ!!」
言われた通り、がむしゃらに殴り・蹴った所、
あっさりと倒すことが出来た。
「な、何とかなったよ…………」
「何つーか、期待はずれだな」
「今は雑魚しか出ないから良いけど、あんまりにも
足手まといだったら置いてくからね」
「頑張って食らいついてくることを祈ってます」
「わ、分かった。頑張るから1人にしないで…………」
訳の分からない世界に飛ばされ、肩身の狭い思いを
していた中、折角出会えた俺にも分け隔てなく話して
くれる仲間と離れたく無かった。だから頑張って
食らいつこうとしたのに…………
~回想終了~
今、俺はストレスの捌け口として虐められる挙げ句、
荷物持ちをやらされている。前までは休日返上で
レベリングに勤しんでいたけど、ここ2ヶ月は雑用を
やらされまくって、より一層差が開いたな…………
『グキャア~~』
「あらあら、もしかして助けてくれたことを
感謝していますの?」
向こうでは、アリスが助けた飛竜になつかれていた。
「流石はアリス。魔王討伐を為し遂げた暁には、
テイマーの適正を女神様に見てもらうのも
良さそうだな」
「幼体とはいえ、飛竜になつかれるなんて滅多に
無いわよ」
「へへっ、けどよ、やっぱりアリスは絶望が
大好きなんだよな」
アーロン、ローズが賞賛する中、カルロスのみが
不穏な言葉を発した。
「ええ、当然に決まっている…………でしょぉ!!」
『ギャアアッッ!!!』
何と、みるみると表情が悪どくなったアリスは、
自身を慕っていた飛竜の前面を光魔法で焼き始めた
のだ。
「な、なっ、何しているんだ!!?」
俺は思わず敬語も使わず、大声を上げてしまった。
「うるせぇ!! お前ごときが何、タメ口で喚いて
やがる!!」
「アリスの行動を否定する気?」
「そ、そうだ! モンスターとはいえ虐待するなんて!
お前それでも人間か!!」
どうにも俺は、昔友達だったのが近所の野良猫や
野良犬だったため、明らかに人を慕う動物を虐待する
人間が許せない性分らしい。
「…………ハァ、君は何も分かってなかったんだな。
良いか、モンスターは本来存在すらしてはいけない
存在。だからアリスは敢えて希望から絶望に変える
ような事をして、その魂が後々受けるであろう罰を
軽減してi…」
「うるさいっ!!」
俺はアーロンのうざい説教を切り上げ、クソ共の
荷物を投げ捨てて駆け出し、焦げた臭いを放ち始めた
飛竜を庇うように光を遮った。
「グワアアアッ!! 逃げろぉぉおおおおおっっっ!!」
「あらあら」
その身を焼かれつつも、飛竜を飛び立たせる事に
成功した。これで少しは報わr…
「ゆっくりといたぶれなくて残念ね~~」
『ギャオアァァァアッッッッ!!』
無数の細いレーザー光線に貫かれ、幼体とは
思えない断末魔を発しながら、飛竜は息絶えた。
「…………ケッ、こんな不味い肉食えるかよっ!」
最早血肉といえなくなった身体を、カルロスは
何度も何度も踏み潰した。
「やめろっ…グアッッッ!!!!」
その憎い踵を止めようとした俺だったが、待って
ましたとばかりに蹴り飛ばされてしまった。
「さっきからよぉ!!」
「ギャアッッ!!」
拳が腹にめり込んだ。吐血しただけでなく、腸の
一部と腹全体に内出血が起きたことが分かってしまう。
「ごちゃごちゃと!」
「アグッッッ!!!」
フックで右の肋骨全てが折られた。全て胃に
貫通した。
「うるせぇぞ!!」
とどめの蹴りで、左腕が折れて頬の骨にヒビが
入った。
「あまりにも酷い。これはお仕置きしなければね」
「ヒッ…………」
アーロンの表情があまりにも恐ろしかったせいで、
小心者の俺は情けない声を上げてしまった。
「おら、ピンとしねぇか!」
「イタイイタイタイタイタイ!!!」
折れた左腕をカルロスがその馬鹿力で引くもの
だから、経験したことの無いような激痛に襲われた。
「アリス、存分に焼きつくすわよ」
「分かっているわ、ローズ」
外道の内、女2人はさも当たり前のように、
それぞれの攻撃魔法で俺を焼き始めた。
「ヘッヘッヘ、俺ぁ今、天才的な事を思い付い
ちまったぜ」
「何だろうか?」
カルロスの発言に、アーロンが反応した。
「コイツのくっせぇ臭いを利用して、強ぇ
モンスターを呼びまくるのさ、そしたら
レベリングしほうだいだぜ!」
「カルロス、どうしちゃったのさ、今日は
冴えてるねぇ!」
「素敵なご意見ですわ。そうですよね、アーロン様」
「ああ、妙案をありがとう。さぁ、生き餌君。
君に新たな任務を与えよう! 強きモンスターを
呼べ!」
アーロンが、よく通る声で俺に命令した瞬間、
望みは叶った。
『グルルルルル…………』
「うおっ! ありゃ、レッドドラゴンじゃねーか!」
体高20mはありそうなレッドドラゴンが、
こちらを見下ろしていたのだ。
「そうそう、こんな相手を探していたのよね」
「役に立てて良かったわね、生き餌君」
アリスは俺に屈辱を与えるべく、嫌みを
言ってきた。
「俺の剣だと瞬殺してしまうだろう。まずは
3人で腕試しをすると良い」
「よっしゃ! 先手必勝!!」
カルロスが爆風を巻き起こしながら走り出した。
地球の短距離高校生選手レベルの俺とは違い、
隼のように速い。
『グオオオオオッ!!』
赤き竜の名の通り、凄まじい火力のブレスを
放ってきた。
「当たらねぇぜ! オラァ!!」
横飛びでブレスをかわし、首筋へと跳躍。十分に
接近できたタイミングで、若干のMPを消費して、
凄まじい威力の斬撃を命中させた。
『グルルルルル…………』
「何っ!? グアッッッ!!!!」
レッドドラゴンは、首に人類最高峰の一撃を
浴びても堪えておらず、逆にカルロスを岩壁へと
殴り飛ばした。
「私の番ね。食らいなさい!!」
ローズは先程、飛竜の幼体達に放った魔法とは
異なり、巨大な氷塊をレッドドラゴンの頭上に作り、
落としたのだった。
『グオオオオッ!!』
「うそ…………」
対するレッドドラゴンは、業火を吐いて、
容易く氷塊を気化させた。
「カルロスの治療完了です!」
「ご苦労! 奴は我が剣技で必ず仕留める!
弱点から潰すぞ!」
『パァン!』
アーロンは乾いた音を鳴らしながら跳躍し、
天井を蹴ってレッドドラゴンの目に剣を突き立てた。
この音は物体が音速を超えたときに起こる衝撃波が
由来であり、彼の速度が音速以上であることを
示している。
『パキッ…………!!』
「バカなっ!?」
ソードマスターの技には、速度に比例して威力が
上がるものも存在している。そうでなくても、
この竜は目が狙いだと認識し、着弾点を眉間へと
ずらしたのだ。
『グオオオオオオッ!!!』
すかさず顎を引き、頭上のアーロンにブレスを
放った。
「アーロン様あっ!」
「あ、案ずるな、移動スキルで逃げたから無事だ。
だが、悔しいが、我々ではレッドドラゴンに勝てない
だろう」
「逃げるっつったって、兄貴と両脇に抱えれる女共が
限界だろう」
…………俺が今まで敵なしと考えていた外道共は、
今やそれ以上の魔物によって、逃走のみを考えて
いる。
「…………ショウ」
「え…………?」
アーロンの見せた笑みは、俺が奴と初めて会った時
以上に優しかった。
『にぃっ…………!!』
しかし次の瞬間、いつものような悪魔の笑みを
…………いや、いつも以上の大悪魔に匹敵する笑みを
浮かべ、
「今までありがとうね」
両脇に抱えた外道女2人と共に見下した表情で
土産の一言を呟くと、音もなく消え去った。
…………そして
「ギャアアアアアッ!!!」
レッドドラゴンとの戦闘前に受けた拷問の傷の
痛みに馴れた矢先、新たに両脚に激痛が走った。
原因は、最後に残ったコイツ…………
「やはり兄貴は天才だな」
カルロスだ。加減された両手斧の一撃により、
両脚の骨が砕けつつも、脚その物は残っている。
しかし、その中途半端な傷は、俺に限界レベルの
痛みを与えてきた。
「兄貴はスキルを用いて後衛の女共と離脱した。
そして現場には血だらけで、肉の焼けた臭いを
放つお前と俺、そして凶悪なレッドドラゴン
だけが残った」
何を…………言っているんだ…………?? じゃあ
一緒に逃げな…………きゃ………………
「つまり、お前の脚を砕いて動けなくして、
その隙に全速力で逃げてこいということだ。
流石は兄貴、本当に天才だねぇ」
…………そう言うことか。リーダーと後衛2人が
去り際に微笑みかけたのって…………そしてコイツも。
…………初めから俺は、仲間じゃなかったんだ。
「てわけで、1分以上かせげなかったら、天寿を
全うした後に虐めに行くからな!」
そう言って、奴は爆風を洞窟中に轟かせながら、
あっという間に逃げおおせてしまった。
(とうとう死ぬんだな…………俺。1度目ならず
2度までも外道共に殺されるのか…………)
1度目は、野良猫を虐待していた連中を止めに
行った所、成果が報われなかった上に、底無し沼に
沈められたのだった。
(召喚だって…………地球上の岩の真下に穴を作って
落とすとか、プールの水をかける位しか出来なかった
…………すげぇレアな召喚だけど、んなもん役に立つ
かよ!!)
やはり、この世に噛み合わない才能しか持たない
無能は、録な人生を歩めないということか。ドラゴンが
こちらを見ている。
(プールの…………水…………待てよ! 何故そんなことも
思い付かなかった!! あれを召喚できればぁっ!!!)
死と隣り合わせだからか、俺は凄まじい案を
思い付いた。このレッドドラゴンだって、いや、
魔王すら殺しかねない技だ!
(状況は、音さえ聞こえれば十分! スキル :
座標変更を用いて召喚先を変更だ!)
壁を壊して進む系のモンスターを察知できるように、
不本意にも俺の五感は外道共の無茶振りによって、
獣のそれをも超えている。
(早く…………早く早く早く設定するんだ! 召喚の穴の
座標を、水深約10800mのマリアナ海溝に!!)
『グオオオオオッ!!!』
そうこうしている内に、ドラゴン口から
炎が燃え盛る音が聞こえてきた。
「大召喚! 食らえ、ハイドロストライク!!」
レッドドラゴンの業火と1億800万パスカルを
直径5mに圧縮した鉄砲水は、殆ど同時に放たれた。
『グボアッ!?』
しかし、威力の桁は、鉄砲水の方が圧倒的だ。
レッドドラゴンの首は反対方向へと凄まじい速度で
弾き飛ばされ、頭が背中へと激突した。
(まずいっ!!)
俺は次に起きるであろう現象を想定し、一旦召喚の
門を閉じた後、マリアナ海溝の座標を保存してから
次の座標を海上へと設定した。
(出でよ!!)
普通なら、気圧の差で空気が入り込むか出ていくか
しかしない。しかし今回は逆流してきた津波を飲み込む
ことで、自身に被弾する事を防ぐことに成功した。
『グ…………オオオオオオオオオオオッ!!』
不可解な現象に、レッドドラゴンは激昂。大口を
開けて息を吸い始めた。
(ここだ!)
が、俺にとっては好都合。入り口の座標を再び
マリアナ海溝に設定し、今度は1m程の出口を、
レッドドラゴンの体内側に向けて、"開いた口の
中央"に設定した。
「中召喚。地獄の水分補給」
『ーーーーーーーーッッッ!!!!』
喉が塞がり、声にならない声を発するレッド
ドラゴンの表情は、正に息が出来なくて苦しい様を
物語っている。加えて、凄まじい勢いで体内の圧力が
上昇していくため、腹が見る見る膨らんでいく。
(このまま爆発したら、俺も死ぬな。外道共も洞窟から
逃げきれてないだろうし、このまま巻き添えにして
やろうかな。なんてな)
そう思った俺は、召喚の穴を閉じた。次の瞬間、
アーロンの小さな衝撃波とは比べ物にならない轟音を
立てながら、天を仰ぐレッドドラゴンの口から高圧
水流が放たれた。その速度は極超音速をも超えていた
らしく、水柱の先端部を中心に、プラズマの嵐すら
巻き起こっていた。
(ははっ、こんな威力、リヴァイアサンでも出せるか
怪しいだろ…………)
そんな物理の知識が俺にあるわけも無かったが、
どっからどう見ても異常な威力だった。
(水流が弱まってきた…………放置しすぎたら、ここが
海の底になりそうだな)
威力が強い内は、天空まで打ち上がって雨になる
だけだろうが、音速程度までに落ちると、滝のように
落ちてきて、それが洞窟内で濁流になりかねない。
(地球座標は…………まぁ、海上にしといてと、腸側に
出口をセットだ)
再び喉に穴を作り、今度は海水を地球へと戻す形と
なった。
(ふぅ、それにしても、自然って恐ろしいな。上手く
使えば、あのレッドドラゴンすら倒しちまうし)
そう、俺を虐めていた最強の外道4人を軽く捻り
殺せたレッドドラゴンも、大自然の力を用いれば、
殺せるということだ。
(そして、俺は召喚の力さえ使いこなせれば、
その力をも利用できるって事だ!)
「はっはっはっは…………」
俺は得たものの大きさに、高笑いが止まらなく
なり、落ち着くために一先ずは回復ポーションを
2杯飲み干した。
「ふぅ、…………傷が恐ろしい速度で塞がっている。
これはポーションじゃなくて、俺自身の治癒力
由来だな」
同時にレベルも上がったのだろうなと思い、
ステータス画面を見てみた。
・ショウ レベル55(+37) 職業 : 召喚士
HP 40/1200 MP 100/6000
物理攻撃力 800
物理防御力 400
魔法攻撃力 6600
魔法防御力 5100
身体操作性 200
敏捷性 600
幸運力 200
称号 無能召喚士、男未満、荷物持ちの荷物、
ノロマ、超感覚人間、海王神召還士(NEW)、
座標マニア(NEW)
「…………スッゲェレベリングだぜ。ま、SS級
モンスターを倒せば当然か。スキルはどうなって
いるかな?」
召喚レベル8(+2)
座標移動レベル8(+4)
視覚レベル8
聴覚レベル8
嗅覚レベル8(+4)
触覚レベル8(+1)
第六感レベル8(+2)
遠視レベル5(+1)
明目レベル7(+2)
反響定位レベル8(+4)
絶対音感レベル1
軌跡嗅読レベル1(NEW)
臭分解析レベル1(NEW)
空力感知レベル1(NEW)
動振感知レベル1(NEW)
揺感知レベル1(NEW)
殺気感知レベル3(NEW)
未来予測レベル1(NEW)
異世界観察レベル8(+8)(NEW)
第10426宇宙式物理現象適応
「…………相変わらず攻撃面が貧相だが、得られたものは
多そうだな。それに、物理現象適応スキルで一時期は
酷い敏捷性の低下があったが、物理攻撃力と身体操作性
…………つまりは筋力と運動神経が向上すれば、改善して
いきそうだな。ま、俺に必要な速さは反応速度の方
だけどね。さぁて!」
それから俺は、新たにやり直すべく、この洞窟で
死んだことにして、F級の新人からやり直した。
召喚スキルを使いこなし、トントン拍子で昇格し、
俺自身の裁量でマトモな連中とパーティーを組み、
いつの間にやらS級の上位陣として目されていた。
そんな矢先…………
「おやおやぁ…………お前、やはりショウだな?」
「まさか両足が折れていたのに生きていたとはなぁ…………」
「偽名を名乗って不正に利益を得るとか…………
図々しいにも程があるわ!」
「恥を知りなさい」
一方のコイツらは、アーロンはナルシズムを
抑えられないあまり、しょっちゅう上の人間に
失礼を働く。カルロスは、酔っては暴行と女への
ワイセツ行為。ローズは後輩イビり、パワハラの激化。
そしてアリスは、一般市民への虐待・殺害により、
A級から上がれずに居た。
「ばれちゃったな~~、A級止まりの外道達にさ~~。
俺がS級筆頭に昇格したことをさぁ~~!」
過去、アーロンに煽られたように、外道達を
煽った。
「んだとぉ!! 荷物持ちの分際でええっ!!!」
「カルロス、思う存分、血祭りに上げたまえ」
「任せろぉぉおおおおおっっっ!!!!!」
巨体が飛び出してきた。
「お前にはこれがお似合いだな」
俺は3mの扉を明けた。
『ボォォォォオン!!!』
「「「なっ!?」」」
そこから出てきた物体の速度に、外道女2人だけで
なく、外道リーダーのアーロンまでもが面食らった。
そう、絶賛落下中の隕石をぶつけてやったのだ。
カルロスは今頃、山の麓で瀕死状態だろう。
「地獄の業火で焼き付くしてあげるわ!」
「無駄なことを」
「ギャアアアアアッ!!!」
ローズの炎魔法に対しては、アラブの油田の底から、
直径1mの油柱を放つことで、発動中の魔法を暴発
させてやった。地球の皆、エネルギー問題に力を
注いでくれよな!
「アーロン!! 私も助けなさいよっっ!!」
暴発の巻き添えを食らい、自らに回復魔法を
施すアリスが、1人だけ逃げたアーロンを
攻め立てた。
「うるさいっ! お前も指咥えてないで働けっ!」
「分かったわよっ!! 熱い熱い熱い熱いっ!!」
「いやぁ、滑稽だねぇ」
レーザー系の光魔法は、発動さえすれば、光速故に
回避不可能だ。しかし、所詮は直進しか出来ないため、
俺を覆うように扉を開くだけで回避できる。加えて、
扉の先には巨大な鏡面に繋がっているため、レーザーが
跳ね返る跳ね返る。自らを拷問するんだな!
「フン、俺を奴らと同じと思わないことだ。死に晒せ」
アーロンはそう言って、抜刀しながら地面を踏み込んだ。
「大召喚・リバーアマゾン」
「ごはっ!? ガボボボボボッ!!?」
俺は、奴の光粒子化に合わせ、ありったけの
アマゾン川の濁流を召喚してやった。奴の神速の
剣技の原理は単純、MPを消費することで、自身と
剣を光速移動しているのだ。ならば、技の発動を
見切ってから、直ぐに進めなくなるような泥水を
ぶっかければ良いということだ。
「ムグアッ!!」
「簡単に逃がすかよ」
今度は地面に1m程の宇宙へ繋がる門を作り、
濁流に高速の渦を作った。泥塗れの下劣イケメンが
回る回る。
「おのr…イダダダダダダダッッ!?」
「どしたどした~? お得意のスピードで
避けてみろや」
いつも御用達、マリアナ海溝から、マッハ10の
海水マシンガンをお届けだ。貫通した傷口に、塩水の
痛みが走り回るぜっ!
「アダダダァッッ!!! ま、ま、参りましたっ!
この通りだっ! ここは、ローズとアリスをお前に
売るから、俺だけでも逃がしてくれっ!」
アーロンは土下座をしてきた。
「誠意が足りないな! もっと深く土下座しろ!」
「ギャブブブブブゥゥーーーー!! ムグガムガムガ…………」
またまたマリアナ海溝の水柱を召喚し、頭を押さえ
つけてやった。1分経過した頃には、アーロンの頭は
地面に埋まっていた。
「リーダー、気持ちの整理はつきましたか?」
「ああ、待たせて悪かったね」
「良いんです。それじゃあ、先ずは魔王軍幹部を
1人、倒しましょう」
「おーー!」
「油断は禁物だぞ~~」
こうして俺は、図らずも個人的な復讐を成し遂げ、
改めて魔王討伐へと向かったのであった。
最後までお読み下さりありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。ブクマ、評価に感想
レビューは勿論お待ちしていますが、個人的には
胸糞展開のさじ加減等の意見を頂けるとありがたい
です!
人気が出たら、連載を前向きに検討しています!
もっと細やかなざまぁ描写が欲しいんだよって
方は是非!!
それと、現在絶賛連載中の"高校生No.1ビルダー
少年"の物語も良ければ見てみてください。パワー
スピード無双好きに特にオススメです!
作者の作品ページから飛べるので是非!!!
7/5 書式を高校生ビルダーに合わせました。
8/28 お待たせしました、連載開始ぃ!!
https://ncode.syosetu.com/n2863he/