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第1話 (4/4) 落ちこぼれ魔法剣士

一番変更点が無い部分です

「あー、最後の攻撃は届いたと思ったんだけどな」


 模擬戦を終えて休憩中だ。


 模擬戦の設備は、儀式レベルの高度な魔導具、魔法陣によってフィールド内の実際ダメージの緩和(痛みなどはそのまま)、即死防止、フィールド外に出ると即時回復、修復されるなど、大体の必要となる強力な効果が揃って発動するようになっている。


 もし模擬戦場の設備が無ければ、リアの最後の攻撃で恐らく僕は死んでいただろう。


「ふふっ。貴方があれで諦めるような性格じゃないのも知っているし。貴方の魔法じゃ私の魔法を貫けない事なんてわかっているもの、見失ったら取り敢えず範囲の広い高威力魔法の詠唱に入るのは当然よ」

「たしかにアレをやられたら僕にはどうしようもないね」

「元々、フォルの今の実力を測りたかっただけだもの、測れたら後は消化試合よ」

「君ってホント良い性格してるよね」


 幼い頃はかわ……、性格は元々こんなだったな。昔からおとなしそうな顔とは裏腹に、悪戯好きで意外と腹黒だ。


 ――わかっていて勝負に乗った、僕も僕だけど。


 何度も戦っている相手だ。当然、下手な小細工では一瞬で対処されてしまい、一切通じなかった。


「でも<風連突(エリアルスラスト)>を防がれるとは思わなかったわ」


 <風連突>、主に槍などの長柄武器のスキル<連突>を風魔力で強化したものだろう。

 でもそんなことより……。


「ねえリア?、エリアルスラストって何?」


 初めて聞く名称だ、戦闘中は聞き流していたので気づかなかった。


「え? その場の雰囲気よ? それっぽい名前があった方がカッコいいでしょ?」

「あ、そうなんだ……」


 たしかに魔力付与したスキル名に正式名称はないのだが……。彼女が良いなら何も言うまい。


「ち、因みに、最後のは?」

「フレイムシャープネス」


 僕は深く考えないことにした。絶対に何も言わない。

 元になっているスキルは<窮閃>、どんな体勢からでも強力な突きを放つスキルだ。


「話がそれたわね。<五月雨斬り>は<風連突>を防げるスキルでは無かったはずだけど」


 <五月雨斬り>、素早く連続で斬りつけるスキルだ。


 <連突>のスキルより手数は多いがリアの<風連突>の場合、武器に風の魔力を纏わせるのと自身を無属性強化して、速度と回数を増やしていたので防ぎきれないはずだった。


「属性強化したスキルを通常のスキルだけで相殺されるとは思わなかったのよ」

「あれは大したことじゃないよ、スキルの発生タイミングをずらしたのさ、一撃目だけは普通に弾いてから発生するようにね。おかげで捌き切れたけれどあれでもギリギリさ」


 ほとんどのスキルの発生には、若干の溜めが有るのでお互いのそれを見極めて調整する。少しコツが要るものの慣れれば簡単なことだ。


「……それを大したことじゃないと言い切るのは素直に尊敬するわ」

「どうして?」


 一撃目と二撃目の間にスキルを発動させる。たったそれだけのことだ。


「連撃系のスキルなんて、間隔は等間隔じゃないし大体バラバラで一瞬なのよ? それを完璧に調整するなんて中々できることじゃないわよ」

「ならそれは、こんな能力で学園で生き残るためには、そういう小手先の技術を学ぶしか無かったってことかもしれないね」


 ほとんどの技術(スキル)は、補正が入るものの一定の鍛錬をして身につけようとすれば、職業不問で入手できるものが多い。入手難易度は簡単じゃないがこの学園の生徒達のレベルでは差がつきにくい。

 魔法も最下級魔法から抜け出せないとなると、もはやそういった工夫で埋めるしかないのだ。


 それでも実際の試合では力押しで負ける事がほとんどだ。


「……こんな能力とか言うのやめなさいよ、≪魔法剣士≫は数年に1人の逸材なのよ?」

「僕の場合は'最下級魔法しか使えない'って言葉が頭に来るけどね」

「っ!……。」


 多様な属性を使える事は確かに強い。だがこれでは、この学園の生徒相手にメリットはかなり薄れる。


「実際、Aランクの君には全く歯が立たなかった」

「貴方もAランクだったじゃない!」

「元、ね。昔はたしかに近い実力でお互いに切磋琢磨することもできていた。でも今ではこんなにも差がついているんだ」


昔は同じランクで良い勝負ができていても、今では完全に負けてしまっている。


「だからこそ【落ちこぼれ魔法剣士】なんだろうけどね。【緋色の風】さん?」

「っ!!!」


 【緋色の風】、それが彼女についた2つ名だ。本人は恥ずかしいとか、噂の一人歩きとか言っているから普段は言わないけれど、僕は彼女のイメージにピッタリな良い2つ名だと思う。


 【落ちこぼれ魔法剣士】なんて2つ名がついた僕なんかと違って……。あ、ピッタリではあるか。


「きっと間違いだったんだよ。あの日、君も見ていただろ? ≪魔※●士≫って表示されていたのを」

「……。」


 職業選定のあの日、僕より順番は後だったけれど幼馴染みである彼女もいたのだ。


「神殿の公式記録では≪魔法剣士≫とされたけれど、今となっては本当に≪魔法剣士≫だったのかどうかも怪しいよ。何か、全く別の職業だったのかも知れない。」

「……。」


 思うことがあるのか、彼女は複雑そうな顔で黙り考え込んでいる。


「まぁ、いいさ。Eランクでもこの学校のレベルだとどこへ行ってもやっていける。これ以上下がらない様に頑張るさ」

「……っ!」


 今の世界の状態を考えると、しっかりした就職場所に意味は無いと思う、だけれど世界全体で見れば特別僕も弱い訳ではない、この学園のレベルが高すぎるだけなのでどうなろうと、生きていく事はできるだろう。

 リアは何か言いたそうだったが、流石に夜も遅い。僕は宿舎に戻ろうと踵を返した。


「そろそろ戻らないとね。お休みリア、明日も良い一日を」

「……そうね。お休みフォル、明日も良い一日を」



 ■



「……それならなんで、こんな時間まで頑張っていたのよ」


 人気の無い鍛錬場に、1人の寂しそうな少女の声が響き渡った。

[トピック]

言語

この物語は独自言語だが日本語に翻訳されている。

尚、文法や発音の規則などは全く日本語と同じである。

そして魔法は例外だが、スキル名は基本漢字と同じ読みである。

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