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第5話 (4/4) 落ちこぼれからの脱却

 更に数日後、いよいよ来週から授業が始まる予定だが対抗戦のみ今週から始めるそうだ。


 そうして、僕の試合が始まろうとしていた。


「フォル、今回で降格戦だぞっ!」

「負けたらEランクだからな!」

「あの竜を倒したんだろ? 本当ならその実力を見せてくれ」


 あの三人組が応援だか野次だかわからない言葉を飛ばしてくる。


 ……いや、応援のつもりなのだろう、その言葉に僕は、


「ああ、これ以上負けるつもりはないさ!」


 ()()()()と返事を返す。


「おう! 俺達も見ているからな!」

「つまらない試合はするなよ!」


 僕は対戦相手の方を向く。


 相手は同じDランク、炎・風・氷の魔力に適性を持つ≪魔法使い【炎・風・氷】≫だ。


 基本職は同じ職名でも適性を持つ属性がバラバラなことが多い、だが3属性に適性を持っている事は珍しく優秀と言われる。その上で上位属性を持つ彼は特に優秀と言われる部類だろう。


 そして彼は礼をする僕に対し、


「ふん、あの竜を倒したとか言っているが、何かの間違いだろう。そうじゃなければダンジョンで見つけた何かを使って、アイテムのおかげで偶然倒しただけだろ。学園内じゃアイテムは禁止だ。お前は【落ちこぼれ】のままなんだよ! 勘違いを僕が正してやる!」


 相手はそんなことを言う。


 たしかに彼は、以前の僕が苦手だった火力でゴリ押しするタイプの≪魔法使い≫だ。完全な力量差に持ち込まれると為す術が無い僕にとって天敵だっただろう。


 彼は特にその面で優秀であった為、下級魔法が使えた所で火力負けし、勝負にも負けた可能性が高い。


「どうかな? 今回は勝つつもりでいるよ」


 魔導回路を調整したあの日から、僕は毎日鍛錬を続けて上級魔法はまだ使えないものの、中級魔法はかなりの練度となった。


 相手はDランク上位、それも火力を重視する≪魔法使い≫。


 この試合は鍛錬の成果を試す事と僕の因縁に決着をつける、良い場になるだろう。


 そして覚悟を決めたところで試合は始まった。



 ■



「――そこまで!」

 審判の声が施設内に響く。


 試合終了だ。

 そしてその勝者は……僕だった。


 結果は圧倒的で僕の中級複合魔法は彼の上級魔法を貫き、火力を重視する≪魔法使い≫に火力で上回れたことで、完全勝利と言うに相応しい勝負をできたはずだ。


「反則だ! あいつはきっと何かアイテムを使ったんだ! そうじゃなきゃ僕の魔法があいつの魔法に負けるなんてあり得ない!」

「なっ!?」


 彼は急にそんなことを言ってきた。


 僕が【落ちこぼれ魔法剣士】と呼ばれているのは学園のほとんどが知っている話である。


 そして、基本職≪魔法使い≫で三属性上位属性持ちは本当に希少だ。彼の立ち振る舞いを見るに、それだけプライドも高いはずである、そんな彼が【落ちこぼれ】に負けたなど、絶対に許せない事なのだろう。


「見苦しいぞ」


 今にも掴みかかって来そうな彼と反論をしようとした僕、そんな両者の間にそう言って立ったのはレイドだった。


「俺達も試合を見ていたがフォルがアイテムを使っていた形跡は無かった。あいつは自分の力でお前の魔法に打ち勝ったんだ」


「そうだな、試合前から使っていた様子も無かったぞ」


「後、アイテム禁止と言っていたけれど、所謂永続アイテムと登録された自作武器は例外だよ」


「でも……」


「黙れ! あいつは負け続けても対戦相手に文句を付ける事は1回も無かったぞ! あいつが【落ちこぼれ】だと言うならてめえは【落ちこぼれ未満の屑】だ! 素直に負けを認めやがれ!」


 そう、レイドの言葉があってようやく対戦相手の彼は黙るのだった。



 ■



 レイド達に礼を言う。


「ありがとう、助かったよ」


「なに、気にするな。お前の魔法は魔力付与の時から異常な威力をしていたからな。ちゃんと対戦相手を研究していた奴はこの結果をわかっていたはずだ」


「そうだな、お前は≪上位職業≫らしく、気にせず上を目指せば良い。弱い者は下のランク、強い者は上のランクになる、単純なシステムだ。」


「僕達も負けるつもりは無いけどね!」


「……ああ、僕も追い抜かして見せるよ」


「お、言ったな! なら、さっさとBランクへ上がってこい! 俺達がそうしたらCランクへ叩き落としてやる」


「なら、僕は無視してAランクに上がるとするよ」


「おー、随分と大口叩くようになったじゃない!」


「当然さ、≪英雄≫を目指すのだからいつまでも同じランクに留まるわけにはいかないからね!」


「違いねぇな!」


 そんなこと軽口を彼らと言い合う。


 こんな関係も悪く無いなと僕が思っていると施設の入り口が騒がしくなる。


「Sランク生徒達が帰ってきたぞ!」


 その言葉を聞いた僕達は顔を見合わせ、施設の外に出る。


 外には学園長と何人かの先生達、そしてこの学園に3人しか居ないSランク生徒達が全員帰ってきた所だった。

[トピック]

職業

職業には、基本職、上位職、??職がある。

上位職は希少で適性属性の種類も数も固定だが強力な物が多い。

逆に基本職はかなり数が多く同じ職業名であったとしても適性属性の種類も数もバラバラである事が多い。

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