第5話 (1/4) 落ちこぼれからの脱却
あの後、僕とリアとメザは地上へと戻った。
地上には騎士団が到着しており、その惨状に驚愕していた。
当然だ。学園はほとんど全壊状態であり、辺りには生徒が何名も倒れている。
更に何体もの竜が息絶えている中で極めつけにSランク竜より巨大な竜まで息絶えているのだ。
王国内でも数える程しかない奇異な事件だろう。
そんなところに現れた僕達だったが騎士団の方達は疲労困憊な僕達を見て、竜の死骸の撤去と宿舎の修復と怪我人の手当などを先に動いてくれた。
危険がもう無いことの確認と名前だけを記録して、事情説明は後日で良いそうだ。
そうして騎士団の魔法部隊が再建してくれた宿舎で僕達は休む事になった。
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翌日、僕達は騎士団の人達から事情聴取を受けていた……のだが。
((何故総団長が……!?))
僕とリアは部屋の一室でテーブルを挟んで対面に置かれたソファーの片方に並んで座っているのだが、対面には短く赤い髪でこれまた真っ赤な鎧を着けた体格の良い男性、この国の騎士団総団長、ライル・フォウ・バルトブルクが座っていた。
そして、その後ろには紫髪の如何にも魔法使いな格好をした女性総副団長、ルーナ・ラナ・ルーレリアが立っている。
「なに、そう硬くならなくても良い。今回の件は王国が始まって以来、数える程しか無い大事件だったからな。俺が直接動かないと行けなくなっただけだ」
「そう言われましても……」
はっきり言って緊張するなという方が無理だ。総騎士団長はこの国のトップレベルに位置する権力者であり実力者なのだ。そう簡単に態度を崩せる者では無い。
「そもそも今回の件は騎士団がもっと速く駆けつけなければいけない事案だったのだ。余り高圧的に取り組んで良い物では無い。無礼も責に問わないので緊張だけでも崩して欲しい」
「……わかりました」
「うむ。 では早速本題だが……一体何があったのだ。魔柱が完全解放され、封印モンスターが竜種であった事まではわかっているのだが」
僕とリアは互いの視点から今回の件を全て話した。
僕の方はメザ関連については今回の件と関係ないと思ったのでその部分は簡略して話した。
冒険者がダンジョンで未知の物を発見することは珍しくない、総団長も今回の件とは無関係だと判断したらしくその辺りを深く聞くことは無かった。
「なるほど、ダンジョン攻略で培った力を使い、あの高位モンスターにも勝てたと言うことか。多くの高位モンスターが息絶えていた理由はわかった。だが、幾つか疑問が残るな……。一番の疑問は何故魔柱の解放状態が一切予兆に気づく事無くレベルブラックまで進んでいたのか、だな。他はある程度条件が予測できるがこれだけは明らかにおかしい」
僕達もそれは疑問に思っていた。
魔柱の解放には予兆:レベルブルーになってからレベルブラックになるまで1週間から1ヶ月かかるのだ。
だが今回の魔柱は前日までレベルホワイトだったそうだ、この解放速度は明らかにおかしい。
「だが、これはこちらの仕事だ。幸い生徒達に死者は出なかったらしいし、流石はこの学園の生徒だな。お前達も元の学園生活に戻ると良い。」
「わかりました」
そうして僕達は退出しようとしたが、不意に呼び止められる。
「それとフォル、だったか? 今は学園長もSランク生徒も国外に出ていると聞いている。学園トップの実力者達が居ない中で、王都の民と学園の生徒で間違い無くお前に命を救われた者がいる。聞いていたところ、お前は借り物の力のように思っている感じがしたがそんなことは無い、確かに誇って良い力だと俺は思うぞ」
「……ありがとうございます」
こうして僕達の事情聴取は終わるのだった。
[トピック]
騎士団
王国の騎士団は幾つかの部隊に分かれていて、各部隊は総団長と総副団長の元に集っている。