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第4話 (2/4) 落ちこぼれの劣等魔導騎士

 僕の目の前で幼馴染みは爪撃を喰らい、鮮血が大きく舞う。


「リア!?」


 竜王の爪を喰らった彼女は、


「……っ! 今日ほど、自分の適性属性に感謝した日は無いわね……!」


 彼女は風と光の魔力を纏い、僕を連れて戦線離脱した。


 しかしすぐに高度が下がり、地面に激突してしまう。


「リア、リアっ!? くそっ!」


 リアの顔色は悪いというレベルではなく、相当、傷が深い様で出血が全く止まらない……。


 竜王はここで確実に仕留めるつもりなのか、追撃を仕掛けに来る……!


 (何でも良い、せめて時間を稼ぐ攻撃をっ!)


 そう考えて手を伸ばそうとした、その時――。


 他の竜達を倒し終わった数人の生徒達が止めに入った。


「フォル!【緋色の風】を連れてさっさと逃げろ!」

「お前が急に強くなった訳はわからんが、お前達が戦ってくれたおかげで覚悟も着いたよ!」

「ここは俺達に任せて一旦離れると良い!」


 今、僕達に話しかけて来ている3人は先日、対抗戦の日にあの施設で話した者達だ。

 その他にも何人かの生徒達で一斉に竜王へと挑みかかっている。


「でも……!」

「うるせえ! 俺達だってBランク以上だ! Dランクに負ける訳にはいかねえんだよ!」

「ここは冒険者養成学校≪ブレイブ・ローディン≫、名目上だけでも≪英雄≫を目指す者達が入る学校さ! そんな僕達が負傷した奴を置いて逃げる訳にも戦わせる訳にもいかないよ!」

「その点、お前達はもうよくやった!だから逃げろ!」

「っ!」


 その言葉を聞いて、歯を食いしばりながらも僕はリアを連れてそのまま離れた。


『マスター、サリアさんの傷が深すぎます。この状態で医療拠点などが役に立つとは思えません。どうするつもりですか?』


 たしかに通常の医療でリアの傷が治せるとは思えないし、先程まで王都全体でドラゴン騒ぎだ。

 医療機関が機能しているかも不確かでリアの体もそこまで持つかわからない。

 それにリアの傷は……。


『もし宛てが無いのであれば私が古代魔導技術を使用してサリアさんの治療をする事もできます。いかがなさいますか、マスター』


「……! ……頼む」


『ではそこの倉庫の中に地下空間があるみたいなのでそこへ、ついでにマスター』


 僕はメザの指示通りにリアを運ぶ。

 着くなり、メザは治療を始める。

 僕も木と光魔力の供給をして、少しでもリアの自然治癒力を高める。


「リア……、どうして……」


「ごほっ!」


「リア!無理して喋らなくて良い!」


「別に良いわ、治療してくれているみたいだけれど話せる時にちゃんと話して、フォルに伝えておきたい」


「……わかった、話は聞くよ」


 僕はリアの治療をしながら話を聞く。


「まず……ね、勝手に死ぬ覚悟なんて決めないでよ……、そんな事を決められたら私はどうすれば良いの?」


「……!」


「貴方が民と仲間を守ろうとする姿は立派よ、でもね? 私にとっては大事な……、大事な幼馴染みであるフォルがいなくなったら全て意味がないのよ!? 当然、無理をしてでも守るに決まっているじゃない!」


 僕は黙ってリアの話を聞いている。


「覚えてる?私達が小さい頃、冒険者の話をして、職業の話をして、一緒に≪英雄≫を目指そうって話をしたこと」


「小さい頃の英雄を目指そうと頑張り、本当にどんどん強くなっていくフォルは、素直に格好良いと思ったわ」


「だから私ね、貴方のお父様が亡くなって、周りから色んな事を言われたフォルは、≪英雄≫を目指さなくなっちゃって悲しかったけれど、≪魔法剣士≫の職業を得て≪ブレイブ・ローディン≫へ入ろうとしていると知ったときは本当に嬉しかったわ。 ただでさえ強いフォルがずるいと妬む気持ちも確かに有ったけれど、それ以上に、また貴方と2人で≪英雄≫を目指せると思って祝福する気持ちの方が遙かに大きかったのよ。」


「だから私は負けないように隣に立ちたいと思った。 学園での最初の方の日々は本当に楽しかったわ。 でもすぐに貴方はDランクまで下がりいつしか腐ってしまったけれど……、それでも何でかな? フォルが何とかしがみつこうと頑張っている事がわかったから、私は応援していたわ」


「それで……理由はどうあれ、さっきようやく変化を得られたのでしょう?」


「なのに……なのにそこで諦めないでよ! あれだけ頑張って来たのだから……いいえ、もうこの際建前はどうでもいい、恥も何もかも捨ててはっきり言うわ。私を置いて死なないで! せめて最後まで一緒に戦わせて! 大事な幼馴染みでしょ、一緒に≪英雄≫を目指した仲間でしょ! それを裏切らないで! 置いてかれる方はたまったもんじゃないの! 今回でわかったでしょう!? 私は一番守りたい人を守るためだったら何度だって自分が受けるわ! 私を死なせたく無かったらまず貴方が死なないで!」



「私はまだフォルと……貴方と一緒に≪英雄≫を目指したいのよ!」



 彼女は意識をつなぎ止めるのに限界を感じたのか、息も絶え絶えにそんなことを言った。


「……ねえフォル? もう一度だけ聞かせて、今まで何回か聞こうと思ったのだけれどタイミングを失っていたこと」


 僕はリアの目を見て頷く。


「もう一度私と一緒に、ううん正直な所、私は貴方1人でも目指せる才能と力があると思う、私は後ろから応援して追いかけるだけでも良い、だから……だからもう一度、≪英雄≫を目指してくれないかな」


 その言葉に僕は今ここで……()()を決意する。


「約束する、()()()()()()≪英雄≫をもう一度目指すよ」


「そ……っか、今度こそ、ちゃんとした約束よ……、忘れたら……、許さな……いんだ……か……ら」


 そう言ってリアは気絶した。


『ただの気ぜ……』

「わかってる」

『了解しました』


 恐らく怪我をしている状態で喋りすぎだったのだろう、止めるべきだったのかも知れないが今の僕にそんな権利は無かったと思う。

 幸い、治療自体は問題なく終わったはずだ。


「メザ」

『はい、マスター、どうしましたか?』

「さっき言っていた、魔力量の底上げと魔導回路の強制調整って、今ここでできるか?」

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