第4話 (1/4) 落ちこぼれの劣等魔導騎士
――魔柱、封印されるモンスターというのは、地上にはほとんど生息していないAランク上位のモンスターである事が多い。
Sランクモンスターが封印されていた魔柱の例もあるが、通常の魔柱が数年に1度に対して数十年に1度確認されるかどうかの頻度である。
だからこそ……、だからこそブラックドラゴンが、封印されていたモンスターだと思ったのだ。
『マスター、周辺に巨大な生命反応を数体確認。ブラックドラゴンよりも大きな反応もあります。解析不能でしたが特徴を確認したところ、一致したデータはブラックドラゴン3体、クイーンドラゴン1体、竜王1体でした』
そうメザは僕に伝えてくる。
(全部、伝説級のモンスター達じゃないか……)
伝承などでしか聞いたことの無いモンスターだ。
「――――!!!!!」
もはや形容する事すら難しい大きな咆吼が、一番大きな竜の口から放たれた。
「ぐぁ!? 何だ!?」
「な、何だよ、あれ……」
「嘘だろ……」
他の生徒達も各々が戦う竜達と相対しているものの、絶望の色が隠せていない。
一番大きな、赤黒い竜だけが地上へと降りてくる。
『SSランクモンスター竜王です。データは破損していて解析不能、残っていた情報によると竜達を統べる王なので誇りが高く、強者との戦闘を好むそうです』
「……リア、勝てると思う?」
「……無理だと思うわ、ブラックドラゴン1体にあれだけ苦戦したのにそれを3体も従えてるモンスターに連戦で勝てると思う?」
「そうだよね……、でも……!」
「やるしかないのよね!」
僕達は地上に近づいてきた竜王に向かって武器を構えて走り出した。
(SSランクモンスターといえど、弱点が全く無い訳では無いはず……!)
僕とリアは色んな属性の魔法を使い、竜王の弱点を探す。
……しかし、竜王はどの属性にも全く動じないどころか動かない。
まるで、弱点など無くそんな攻撃など全く効かないっと言っているようだった。
竜王は僕とリアがひとしきり試せる魔法を放つ間、全く動かなかったが、こちらが攻めあぐねているとブレスを放ってきた。
「っく!? <アイス・ウインドウエーブ>! ぐあああ!?」
「――<ディア・サイクロン>! きゃあああ!?」
僕の混合魔法も、リアの上級風魔法も多少、威力の減少になったくらいでブレスで吹き飛びながら大きなダメージを負ってしまう。
2人とも竜王を前にして倒れてしまう。
「こちらの攻撃に有効打は無し、相手の攻撃はほとんど防げない……か、中々詰んでるわね……」
棍を杖に、立ち上がりながらリアの言う通り、かなりの絶望的な状態だ。
「こうなると撃退、せめて騎士団や冒険者達が事態に気づいてこちらへ来るまでの時間稼ぎだけでもできれば上々何だけど……」
僕も立ち上がりながら、せめて一撃入れられればと考える。
そうして僕は空を見上げた。
(……メザ、竜王さえ倒せれば上の4体は逃げると思うか?)
今もブラックドラゴン3体とクイーンドラゴンは上空で佇んでいる。
『恐らく……、番いであるクイーンは襲ってくる可能性がありますが、防御に寄ったモンスターなので最悪の事態は防げると思います。』
(そうか)
それを効いて僕は一つの決断をする。
「リア、考えがある」
「何?」
「今の僕が使える属性は12属性だ。これを全て込めて叩き込む」
耐性があるとしても、それをかなり無視した威力を出せるだろう。
「何を言ってるの!?、そんな魔力の使い方をしたら……!」
「属性強化とはいえ、まず間違い無く使ったら回避行動を取れなくなるから、倒しきれなかったら死ぬね。」
「だったらっ……!」
「でも良いさ、折角強くなれたのに残念だとは思うけれど学園に入った時点で、いや、あの時から覚悟は決めていた」
「……。わかったわ、それなら私は全力でサポートに回る」
「ありがとう」
覚悟を決めてもう一度竜王に挑む。そうと決まったら魔力の消費は抑えて短期決戦で決めたい。
敵も確実に油断はしているはずだ。
接近した所で爪を振り下ろされる。ブラックドラゴンの時より明らかに速い。
「<エリアルバレット>!」
リアが大きな風の玉を放ち、竜の爪を僅かに逸らす。中級魔法だが僅かに爪を逸らす事しかできないことから竜王の強靱さがわかる。
だが、それでも無いよりはかなり避けやすくなり、徐々に竜王に近づく……!
「ここで決める! <オールエンチャント>、<パワースラッシュ>!」
遂に竜王の頭部に飛びつき、12属性全てを込めた<パワースラッシュ>の切り上げを放つが……。
竜王は頭部を狙う事をわかっていたのか、頭部に魔力と筋力を集中させて攻撃をわざと受けに来た。
――そして。
ガキンッ!
そう激しい音がすると剣が砕けてしまった。
(っ! 剣が持たなかったか……)
当然、そんなことは関係なしに膨大な魔力は消費してしまっている。
竜王はそんな僕に魔力を纏った爪を勢いよく振り下ろした。
僕の攻撃は鱗を貫通し、大きな斬撃の跡を残す事はできたのだが、万全な状態で受けられた攻撃は致命傷には程遠かった。
(完全にカウンターだな……、どうあがいても避けられない)
【落ちこぼれ魔法剣士】にしてはよくやっただろう……。
そう思い、諦めた、諦めてしまった。
――――この時諦めた事を、僕は一生後悔する事になる。
目の前で大きな鮮血が舞った。
攻撃を受けたのは僕では無い、……リアだった。