第3話 (1/4) 魔導騎士
新設定追加部分です
自身を魔導兵器だというメザの衝撃的な話をしばらく聞いた後、僕はメディカルルームという部屋に来ていた。
「この中に入れば良いのか?」
『はい、入った後は眠くなるはずです。 魔導回路への移植手術はマスターが寝ている間に私が必要な処置を終わらせます。 たいした処置ではありませんのですぐ終わるはずです』
「わかった」
部屋の中にあった人1人が丁度は入れる容器の中に入る。
すると、本当に段々眠くなってきた。
話を全てを鵜呑みにした訳では無い、だがメザに船の中に残っていた研究記録などの資料も見せて貰った。
当然、僕に理解できるはずも無かったが、偽物というにはかなりしっかりとした作りになっていた。
そもそも完全な未知の技術を目の前でいくつも見ていたのだ。
先程、船に保管されているという武器やらアーマーなども見せて貰ったが未知の技術の物が多かった。
本当に失われた古代文明の遺物だとしても特におかしく無いだろう。
いや、一番大事なのは未知の技術であるということだ。
歴史的な大発見やら注目すべき所は他にもあるが、僕にとって一番重要なのは間違い無くそこだろう。
そうなると、先程聞いた僕の職業や魔法の話についても信憑性が出てくるのだが……。
≪魔法剣士≫と≪魔導騎士≫、あの日≪魔※●士≫と表示されて読めなかった部分とも一致する。
この話をメザは知らないはずなのでデタラメを言っていた可能性の線も薄い。
≪魔導騎士≫という職業自体に聞き覚えは無く、メザに訪ねてみたが。
『私のデータベース、情報を記憶するところは損傷が激しく、元々≪魔導騎士≫は古代魔導文明時代でも希少な職業であったので、資料がそこまで多くありません』
だそうだ。
一応、残っていた資料とメザ自身が記憶していた話を聞かせて貰ったところ、あのおとぎ話に出てくるような伝説の職業、≪勇者≫に若干劣る程度まで強くなれる職業らしい。
これまた信じられない話だったがメザ曰く、だからこそ魔法回路の損傷が激しくなったそうだ。強力な属性を含む12属性の魔力を保有する職業など、劣化した魔法回路では何もしなくても負担が大きすぎるそうだ。
『過ぎた力は身を滅ぼす毒です。しかし制御可能になるのならそれは純粋なる力となります。 さあ!今すぐ魔導回路の移植手術を開始しましょう!』
と、言い回しがどことなく詐欺っぽかったが話の筋は通っていて、目的も未知なる情報の収集とはっきりしていたので信じることにしたのだ。
それに本当に最下級魔法以外が使える様になるというのであれば、駄目で元々、賭ける価値はあると思うくらい、僕にとって大事なことだったのだ。
■
そして数十分後
「本当に終わったのか? 特にいつもと変わらないんだけど」
『はい、マスターの処置は無事に終わりました。 今まで使えていた属性魔法は下級魔法まで、使えなかった属性は最下級魔法なら使えるはずです。 もう1度マスターのステータスを確認してみましょうか』
メザがそう言うと僕の目の前に半透明なパネルが表示された。
「うわっ!?」
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名前:フォル
年齢:16才
Lv :57
魔法属性値:
火:8、水:8、風:9、木:8、土:7、雷:9、氷:8、爆:6、光:0、闇:0、無:0、空間:0
称号:なし
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そのパネルには先程コントロールルームで見たものとよく似た僕のステータスがあった。
『マスターの処置をする過程でマスターの眼球に処置をしました』
「聞いてないけど!?」
いきなりとんでも無いことをぬかすメザに問い詰める。
『魔眼の移植です』
「!?」
魔眼、主に魔物が持っているがごく希に人間にも発現することがある、眼自体に魔力が宿り特殊な魔法を使える眼の総称だ。
『冗談です、ただのレンズですよ』
「君会話に抑揚が無いから怖いんだよ!」
からかわれているのはわかるが本当に心臓に悪い。
知らない間に眼にレンズを入れられているのも十分怖いが、勝手に眼を移植されているよりはマシだ。
「全く……」
『それよりもちゃんとステータスを見ましょう』
誰のせいだと言いたくなったが、話が進まないので落ち着いた所でもう一度ステータスを見る。
状態の表示は無くなっている。
魔力回路の損傷は本当に治ったようだ。
胸に期待が高まるのを感じるが、ふと一つ、気になる表示が増えていることに気づいた。
「メザ、この称号って何だ?」
なしと書いてあるが気になったので聞いてみる。
『レンズ型なら必要だと思ったので付けたのですが、要りませんでしたか?』
「いや、称号自体に聞き覚えがなくて」
名声などの意味では知っているがステータス、能力由来の称号には聞き覚えが無い。
『旧時代だと一般的だったのですが知られて無いのですね、何が契機となるかわかりませんが大きな出来事を成し遂げると神の加護が与えられると言われていたのですが知りませんか?』
「いや、似たような現象には心当たりがあるけれど、名前は無かったはずだ」
『名が失われたようですね、それ程得る機会は多くないのでマスターが今後入手する時があればその時に説明します』
「わかった」
話を聞く限り、入手する機会が多い物では無いようなので気にしないことにする。
『それで魔力回路の修復は確認できたと思います。トレーニングルームがあるので試し打ちに行きますか?』
「そうか、それなら試してみたい」
魔法は実際に使用してみないとわからないので、メザに案内されてトレーニングルームという部屋に来る。
的は……、ウッドゴーレムだ。
どうやら古代文明時代から的にされているらしい……。
隣にはアイアンゴーレムも居る。
「それじゃあまずは他の4属性から」
ウッドゴーレムに向かって手を伸ばし、構え、魔力を練ろうとして気づいた。
いつもより魔力を操作しやすく、いつもとは違う魔力も感じて動かせることを。
<ダークボール>
闇属性魔法、闇の玉がゴーレムに向かって飛び、ゴーレムの体を抉り取った。
「っ!?本当に使えた…!」
再生したウッドゴーレムに続けて魔法を放つ。
<ライトボール>
光属性魔法、光の玉がゴーレムに向かって超高速で飛ぶ。<サンダーボール>より更に速い。光の玉はゴーレムに直撃すると光と共に弾けた。
2つとも上位属性らしい特性だ。
無属性の最下級魔法には攻撃魔法は無いが、無色透明な魔力の塊を手のひらに作ることができたので無属性の適性もあるだろう。
「そういえば、空間魔法ってどう練習すればいいんだ?」
『特殊属性の中でも特殊な空間属性には最下級魔法が存在しませんからね。 魔力操作で下級魔法が使えるまで熟練度を上げる必要があります』
「なるほど」
体の中にもう一つ別の魔力を感じる。動かすのは難しいが恐らくこれが空間の魔力なのだろう。
感知できるということは、時間はかかるが適性は有るということのはずだ。
毎日の鍛錬量を更に増やさないといけないなと思った。
ここまでメザの言う通りであった。であれば次にすることも成功するはずである。
僕は下級魔法を打つためにもう一度手を構えた。
どれだけ努力をしても一向に使える様にならなかった魔法だ。
学園の周りの天才達はどんどん使える様になっていく中で自分だけが最後まで使えなかった魔法だ。
本来、下級というだけあって難しくなく、学園の先生達も何故使えないのかわからずお手上げとなり、諦められた魔法だ。
魔力を集中して練る……。
そして僕は勢いよく魔法を放った。
<フレイムスピア>
火(炎)属性魔法、下級魔法となり形を変える事ができるようになった炎の槍は、<ファイアボール>よりも強い威力でウッドゴーレムを燃え上がらせた。
『おめでとうございます。マスター』
[トピック]
下級魔法
最下級魔法の集める特性に対して魔法自体の操作を行う事ができるようになった物を指す。
よって同じ下級魔法でも形によって色んな名称がある。