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◇20◇ 争っている場合ではなかった!【カサンドラ視点】 




「……か、会長!!!」



 間が空いたタイミングを狙ってか、ヴィクターの友人たちが、彼に飛びついてきた。

 いったい何をするんだ!?と驚いて見ていると、彼らは背の高いヴィクターの頭を、一生懸命ぐいぐい下に押して、クロノスに対して頭を下げさせようとする。



「そ、そうなんです!

 こいつは、ただただ、テイレシア様が好きなバカなんです!!」


「ちょっとアホで礼儀知らずで、でも、テイレシア様だけは絶対に裏切りません!!」


「でも、テイレシア様のためだったら敵国のスパイぐらいするかもしれません!」



 最後、かばってないよ? 気づきなさい。



「「「どうか、不敬罪だけは……!!」」」



 真剣にバカなことをやっている友人たちの顔と、ヴィクターの顔を、交互に見る。

 昔のヴィクターなら、このおバカ扱いにはキレていたかもしれないが、なんだか今はわりとまんざらでもなさそうだ。

 彼を貴族の世界に引きずり込むきっかけになってしまった私としては、ホッとする。



「カサンドラ。君も彼らと同意見ですか?」クロノスがジト目でこちらを見る。


「えーと……大丈夫。心配しなくても、ヴィクターは賢いよ。

 必ずテイレシアを守ってくれる」


「……そうですか」



 そう。頼むから応援してくれ。

 ヴィクターは必ずテイレシアを幸せにできる男だから。

 いや、もう、幸せにしているから。



「――――あ、そうだ、大事な要件が。

 ヴィクター?」



 私が声をかけると、引き続きヴィクターに頭を下げさせるべく体重をかけようと格闘していた友人たちが(ちょっとイジメかきわどいところなのでやめなさい)、ヴィクターから下りた。



「テイレシア知らない?

 生徒会長室にいなくて」


「まだ戻られていないんですか?」ヴィクターが驚いた声をあげる。「たしか、先ほどパークス先生に呼び出されて行ってらっしゃいました」


「パークス先生のとこってことは、女子寮の一番奥かぁ。

 話し込んでいるのかなぁ。わかった、ありがとう。

 ……クロ? どうした?」



 私とヴィクターの会話を聞いていたクロノスが、ふと、考え込む様子を見せたのを、私は見とがめた。



「……どうしたんだい? 何か気になることでも」


「パークス先生は、さっきまで〈紳士部〉の生徒会長室にいました」


「え?」


「彼女は確か、昨日突然、部屋を替わることになったそうです。

 それで、いままで持っていた本の置き場がなくなってしまったので、学生たちに譲ると……」


「部屋を替わった?」



 私はヴィクターと顔を見合わせた。

 どういうことだ?

 呼び出しは、パークス先生からじゃない?



「替わったって、誰と?」

「誰とというか、追加で1部屋与えられた人物がいます。隣がエオリア王女のお部屋なので」

「待って、それって……」



 つまり、パークス先生の部屋だと思ってテイレシアがその部屋に向かったら、待ち受けているのはその人物だってことか?

 それもエオリア王女の隣の部屋だなんて、まさか。



「――――アトラス殿下です」



 クロノスの口からその名前を聞いた瞬間、止める間もなくヴィクターが駆けだした。



「待て!!

 ヴィクター、女子寮は男子禁制だ!!」



 と叫んだ私の声も、届かない。足が速すぎる、彼は。



「――――カサンドラ。

 私が許可をもらってきます。

 君はテイレシアを助けてきてください」


「会長さま、頼むよ!!」



 私はスカートの裾を持って、猛然と学園の廊下を走り出す。

 周囲の学生たちがびっくりしたように私を避けていく。ヴィクターにも驚いたのだろうな。

 走る私に、「カサンドラ副会長、大丈夫ですか!!」ヴィクターの友人たちも並走してきた。

 さすがに男子、足が速い。



「……懲戒処分になるかもしれないけど、大丈夫かいキミたち?」


「「「たぶん大丈夫です!!」」」


「助かった、感謝するよ!!

 私、〈淑女部〉生徒会副会長の全権力を以って懲戒処分は阻止してやる!」



 叫ぶように会話しながら、私たちはアトラス殿下の部屋へ走った。

 どれぐらい時間がたったのか、アトラス殿下は何をしようとしたのか。


 頼む、テイレシア。無事でいてくれ。



   ◇ ◇ ◇

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