うーちゃんのパンツ
「おでかけ、おでかけ~」
さて、どのパンツにしようかな?
クマさんとウサギさんのパンツにしようかなぁ?
どうしようかなぁ…………。
──コンコン、ガチャ
「父さんはこれが良いと思うぞ?」
「イヤーッ!! ナニコレ!?」
「死んだ目の男パンツだ」
「気持ち悪いわ!!!!」
何処で手に入れたのか全く謎のパンツを投げ付け、ついでに父を階段から突き落としリビングへと降りる。
「待ちなさい詩子!」
眼鏡が割れ、足首を挫いた父が何やら黒いビニール袋を取り出した。
「せめてこれを着けてくれ」
「…………?」
「死んだ目の男ブラだ」
「いるかー!!!!」
ビニール袋を窓から投げ、ついでに父も窓から突き落とす。そして玄関から自転車を出し、道路に出て軽やかに跨がった。
「待ってくれ詩子……!!」
眼鏡を無くし、右腕があらぬ方向に折れた父が死にかけた様子でのたうち回る。
「父さんはな……お前が心配なんだ!!」
「クラスの男子と一緒に、今年辞める先生への贈り物を買ってくるだけじゃない!! 何も無いわよ!!」
「そんなわけあるか!! お前ももう15だ!! その男子とやらもお前に気があるに違いない!!」
「ないわよ、ないない」
「仮に告白されたらどうするんだ!?」
「……まぁ、哲君は、見た目は悪くないから、まぁやぶさかでもないわ」
「ほらーーーー!!」
「…………それでも流石にあの下着はないわ!!」
──チリンチリン
父を自転車で轢き、トドメを刺す。まったく近頃は何かと煩くて困った父だ…………。
哲君と合流し、先生へ可愛い置き時計を買った。
「あのさ、少し休んでいかない?」
「う、うん、いいよ」
ハンバーガーショップに立ち寄り、哲君と二人きりでテーブルに座る。何だか二人の間に流れる空気が少し変だ。もしかして……もしかする?
「あ、あのさ……良かったら……これ。さっき詩子に似合うかなって買ったんだ」
「えっ!? ホントに!?」
いきなりのプレゼントに、ドキッとする私。哲君って見かけによらずグイグイ来るタイプなのね。やば、私押しに弱い女なのに…………。
「あ、開けて良いかな?」
「うん」
服が入っている柔らかい包みを紐解く。すると、淡い水色のシャツが顔を出した。
「あ、可愛──」
「──いくない!!!!」
「アレッ!? えっ!? 何でぇ!?」
哲君が慌てふためき、オロオロとし始めた。て、ことは…………
「クソオヤジー!! 出て来いやー!!!!」
「フフフ、ココだ」
ポテトの紙器からバッと現れたボキボキに折れた指、手、腕、体。エスパー伊藤もビックリの収納術!!
「うわーん!! お母さーん!!」
「あっ! 待って哲君!! カムバーック!!!!」
ハンバーガーを二つ父の口の中に丸ごと押し込み、ダストボックスに父を投げ込むと、走って哲君を追い掛けた。