7話 戦争勃発
風呂。それは危険な場所。普通は疲れた体を癒す場所。だが俺には危ない場所でしかない。
原因は言わなくてもわかると思う。
「お兄!背中流してあげるっ!」
胡桃だ。
布を一切まとわぬ妹の姿に、俺は鼻血を吹き出しそうになるが、なんとか耐えた。息子も我慢して元気を抑えている。
さすがに俺も「風呂は一緒じゃなくていいだろ」と言うが、胡桃は「兄妹だから関係ないない!」「もしかしてお兄、照れてんの?」と返してくる。
まあ一緒に風呂に入るってだけで、それ以上は何も無いからいいんだ。いいのか?いや、いいんだ。
とまあこんな感じで、胡桃は世界一と言っていいほどのブラコンである。
ちなみに、胡桃がブラコンなのは学校中が知っている。そう、先生も。
担任の先生は『お兄ちゃんも大変だな』とかいってからかってくる。殴ってやろうか?
もちろんクラスのみんなも笑ってくる。人によっては『結婚しないの?』とか『いっその事付き合えよ』とか言ってくる。おいおい右腕、気持ちはわかるが落ち着けって。
だが当時の俺は10歳、思春期真っ最中。胡桃との結婚とかちょっとは考えちゃうお年頃なんですよ。
だからその日の夜、ベッドに横になりながら胡桃に聞いた。
「なぁ、胡桃。お前って、俺のこと、好きなの?」
うわ、俺噛みすぎ。
「えっ、急にどうしたの?」
「いいから」
「あ、うん。えっとね、好きだよ?」
あ〜、中に舞い上がりそう。しかし俺は我慢して話を続ける。
「それってどういう好き?」
「もちろん!恋愛的な意味で!」
やっべぇ!鼻血出すところだった……
鼻よ、よくぞ耐えてくれた。
自分の鼻に感謝をしながら、俺はさらに質問をする。
「じゃあ、もしもさ。俺が胡桃のことを恋愛的に好きって言ったら」
「えっ?それって告白だったり…?」
頬を赤らめて胡桃が聞き返してくる。
俺ももちろん赤くなっているが、暗いからわからないだろう。
「もしもの話だ。で、どうするんだ?」
胡桃が『あぁ、もしもね…』と言っているが気にせず回答を待つ。
しかし胡桃の答えは意外と早く帰ってきた。
「何もしなくなる、かな?」
「そらって、どういう意味?」
「手を繋いだり、一緒にお風呂に入ったり、こうやって寝るのもやめる」
…は?ちょっ、なんで?
俺にとって相当ショックだったらしく、声が全く出ない。
「私たちが両思いだったら、付き合うじゃん?そしたら私は、もうお兄にアピールしなくてもよくなるの。だから何もしないの」
もうわかっただろ?俺が胡桃にシスコンを隠している理由が。そう。俺がシスコンだとバレれば構ってもらえなくなるのだ。
何度も繰り返す。俺はぜっっっっったいに胡桃にシスコンを隠し通さなければ行けないのだ!
─その日から俺たち兄妹は、シスコンを知られたくない兄VS兄をシスコンにさせたい妹の戦争が始まった──