3話 隠し味のあるクッキー
──ガチャッ
「ただいま〜胡桃〜」
「おかえりなさい、お兄!」
─ッ!
「ど、どうしたの? 何か変…だった……かな?」
胡桃が頬をピンク色に染めながら、上目遣いで見てくる。めっ─ちゃ──可愛いッッ!
「い、いや。可愛いなって思って。に、似合ってると思うぞ…」
きっと俺も真っ赤になってるんだろうか? さっきから体が熱い気がする。
「……」
「……」
えっと…えっと……
気まずい空気になったな。こういうとき、どうすればいいんだ?
2人の沈黙を終わらせたのは、
「おうおう!新婚か?お前ら」
…海斗だった
「「ちっがーう!」」
俺と胡桃がハモる。こういうとこは兄妹なんだな。
おっと、話がズレたな。とにかく、胡桃にシスコンがバレてはいけないのだ! …少なくとも、今は。
「嫌だって、2人の会話が新婚っぽかったから」
「へ、変なことを言うなよ!」
「そっ、そそ、そうだよ? 中宮くん! わ、わたしたちは別にし、新婚さんじゃないよ?」
「ふ〜ん」
くそっ! このままじゃ拉致があかない!
「とにかく海斗っ!お前は先に俺の部屋に行ってろ!」
「へいへ〜い」
よし。これで何とかバレずに済みそうだ。と思ってたら、中宮が俺の肩に手を置いて
「頑張れよ」
ボソッと爆弾発言を残していった。
おい!胡桃に聞かれたらどうするんだ!
「?」
どうやら、胡桃には聞こえていなかったようだ。不幸中の幸いってやつかな? 神様、マジ最高。一生ついて行きます。
──あれ?前にも似たようなことがあった気が……
…まいっか。
こんな事を話しているうちに、海斗は階段を上がって行った。
俺は海斗にお茶とか出そうと思って、キッチンに向かう。海斗はなにが喜ぶかな? あっ、そう言えばあいつ、昔からチョコ好きだっけ? 冷蔵庫に入ってるかな?
冷蔵庫を開けると、チョコは無かった。今度買っておこう。
──あれ? なんだこれ?
「こんなものあったっけ?」
そこには、クッキーがあった。…なんで?
「あっ、それは。えっと…」
「胡桃のか? じゃあ戻しとくわ」
クッキーを冷蔵庫に戻そうとした瞬間、胡桃が俺の袖を掴んだ。
「それ、中宮くんと食べていいよ? 元々、お兄のために作ったやつだから…」
あぁ、胡桃が作ってくれたのか。俺のために。俺のために…
「あ、ありがとな胡桃。中宮に持ってくよ」
「あっ、あの!」
「ん? どうした?」
胡桃が目をそらしながら言う。
「上手く作れたかわからないけど、お兄も、食べて、ね?」
「もちろん! というか、胡桃も来いよ。中宮が胡桃と話したいって言ってたし」
「え?わたしも、行っていいの?」
「あぁ、当たり前だろ?」
俺は笑顔で胡桃を誘う。
「うんっ! じゃあお兄は先に行ってて!」
どうやらバレなかったようだ。でも、
「これは俺が持ってくよ。お茶とか重いだろ?」
「いいからいいから! ほら、先に行って待ってて」
なんか胡桃が俺の事を突き放してくる様な発言をする。
俺は胡桃に背中を押されて、リビングを追い出される。まぁ、本人がああ言ってるんだし、先に行ってるか。