31-2話 兄の確信
いない、いない、いない……!
これだけ校内を何周も走り回ったのに、胡桃がいない!
先に帰ったという可能性も考え生徒玄関に向かったが、3年2組の生徒の外靴は全員分揃っていた。
つまり、胡桃はまだ校舎内にいるということだ。
おちつけ陸斗、胡桃が行きそうなところを考えるんだ。
とりあえず、胡桃は極度の寒がりだから廊下にいることはまず無いだろう。どこかの部屋の中に入っていると考えるのが妥当だ。
だが、俺も教室を見て回ったがこれだけ探しても見つからない。残るは体育館と1階の奥の方の教室のみ。
しかし体育館は現在、1年生の催し物企画が行われていて、他学年は入れない。当然胡桃も3年生なわけだからそこにはいないだろう。
「となるとやっぱり……」
俺は今2階にいる。そしてその場所から下へ続く階段を見つめた後、走り出す。
この学校にアレがあるのを忘れていた。
そしてそのアレには、俺と胡桃が共通で好きなものがある。
「やっぱり……ここか…………」
息を切らしながら俺は扉の前に立つ。重そうな扉。その上には「図書室」と古い看板がつけられている。
「なんで忘れてたんだろうな……」
中は電気がついてなく、人どころか無視すらいないようなほど物静かだった。
だが俺は、一瞬も迷うことなく中へ入っていった。
よくわからない。だがひとつ言えるのは、ここに胡桃がいると、確信していたことだ。




