28話 懐かしのクラスと文化祭
「いらっしゃいませー!」
俺が教室に入ると同時に、内側から大きな声が聞こえた。教室内は至ってシンプル。机をレストランの様に並べて、黒板には犬クマきつねなど様々な動物のイラストが描かれている。
男子たちは皆奥の方で食べ物や飲み物を用意している。そこ、話してないで手を動かせ。
一方女子はと言うと、猫やらクマやらクマやらきつねやら、それぞれの耳が着いたカチューシャを頭に乗せている。
フリル付きの服ではないので、何かほかの店と勘違いされることはないだろう。
ただ、もし挨拶がほかのセリフであったなら、危なかったかもしれない。
「えっと、この招待状できたんですけど……」
「了解しました!こちらへどうぞ!」
一際目立つ子が俺を店の奥まで案内してくれる。
その子は大きかった。いや、何がとは言わんが。
でもまぁ強いて言うとすれば、他の子がサッカーボールだとすると、この子はバレーボール。いや、スイカぐらいの大きさが上半身に2つほどある。ちなみに胡桃はテニスボールだ。何がとは言わんが。
「こちらにどうぞ」
「はいっ!」
変なことを考えてしまったせいで情けない声が出てしまった。いかんいかん、しっかりと精神を保っていかねば。
って何だこの席は!よくわからないがものすごく目立つ席に案内されたぞ!?
他のテーブルにかけられているのはピンクや緑の1色でなのだが、ここだけは赤色ベースに金色の模様がついた高級感溢れる仕様のものだ。
「なんでこの席だけ見た目が違うんですか?」
気になりすぎて思わず聞いてしまう。
「そりゃーもちろん、VIP様ですから」
VIP!?なにそれ聞いてない!
「招待状で来てくれたみんなVIPですよ」
この紙切れ1枚にそんな恐ろしい効果があるなんて予想もしなかった。
だが俺もこの席に座るのは抵抗があったため、「ほかの場所に移動できないかな?」と聞いてみると。
「VIP様はこの席。確定事項です」とキッパリ断られてしまった。
粘ろうとも思ったが、この子が腰に手を当てて体を前のめりにしてきたため、やめておいた。通報されたくないし。
「とゆーわけで、自己紹介しますね!」
どういう訳だよと心の中でツッコミを入れてから、俺もこの場の空気に合わせる。
「私は大空ゆめです」
「瀬川陸斗です。一応高校生」
「もしかして、くるちゃんのお兄さんですか?」
くるちゃんと呼ばれているのは、多分胡桃のことだろう。
「はい。えっと、妹の胡桃がお世話になってます」
「やめてくださいよ堅苦しい。敬語はNGでお願いします。使われるの苦手なんで。あ、あと。私のことはゆめって呼んでください」
「そういうことなら、わかったよ」
初対面の人(それも年下の女子中学生)にいきなりタメ語もどうかと思ったが、相手がそうしてくれと言ってるし問題は無いだろう。問題、ないよね?




