2話 放課後の幸せ
──キーンコーンカーンコーン
「いよっしゃー!!やっと終わったー!」
授業が全て終わり、やっと帰る時間になった。
「うっし陸斗!早速行くぞ!」
そう言えば今日、海斗が家に来るんだっけ?いや、忘れてたわけじゃないよ?
「お、おう。んじゃ、もう行くか?」
「おうよ!」
俺は携帯を取り出す。それに疑問を持ったのか、海斗が月を開く。
「え?胡桃ちゃん家にいるの?」
「あぁ、今日は休みらしい。ちょっと電話かけてみる」
電話で!というのが大切なんだ。え? なんでメールじゃないかって? そんなのは簡単な理由だ。
─声が聞きたいからだッ!!
「んじゃ、ちょっと失礼」
一応一言海斗に断って、胡桃の携帯に電話をかける
…プルルルル…プルルルル……ガチャ
『もしもし!お兄?』
おっ、なんか明るい声だな。なにかいい事があったのか?
「あぁ、胡桃。今ちょっといいか?」
『んーなにー?』
「海斗って覚えてるか? あの、幼馴染の中宮海斗」
『え、あぁうん。覚えてるよ?』
急に声のトーンが低くなったな。海斗のこと好きじゃないのか?
「海斗が胡桃に会いたがってるんだが、家に連れてっていいか?」
『え…そっか……』
やっぱり暗い声だ。海斗、お前胡桃に何したんだ?許さんぞ?
「別に嫌ならいいぞ?俺から伝えておくから」
『いやいや!別に大丈夫だよ! まぁ、ちょっと…ね……』
「もしかして、何かあったか?」
『いやいやいや! 何にもないから! 大丈夫だから!』
うーん。なんか胡桃の反応がおかしいけど、本人が大丈夫と言うなら気にしなくてもいいのかな?
「OK。それじゃ、そろそろ着くからよろしくな」
『…うん……』
「海斗、家に来ても大丈夫っぽい。だけど、その前に質問だ。お前、胡桃に何か嫌われる様なことしたか?」
「え? なんで?」
「胡桃がお前の名前を出した瞬間暗い声になったからさ」
『えっ?』
「え!?」
慌てたように胡桃が言う。
『お兄!? 私は中宮くんのこと全然嫌ってないよ?』
「そうなのか?」
『うん。ただ、私久しぶりに休みだし、お兄も5時間授業だから、お兄と2人でお話したかったというか…』
後半7割はは胡桃がごにょごにょ喋るもんだから聞き取れなかった?
「悪い。後半なんて言ってるか聞き取れなかった。もう1回言ってくれるか?」
『んなっ!何でもないからぁ!!』
「そっ、そうか?何かあったら言えよ?」
まぁ、何も無いと言われたから、これ以上は追求しないでおこう。
とか話しているうちに、家に着いてしまった。楽しい時間が早く感じるってのは、本当なんだなぁ…
「えっと…陸斗? 俺、胡桃ちゃんに会っても大丈夫なのか? 嫌われてないのか? 抱いていいのか?」
「大丈夫だ。嫌われてない。抱いたら殴る」
「いつものお前で安心した。それじゃ、お邪魔しまーっす!」
こいつ、嫌われてないとわかった瞬間、調子上げやがった。とりあえず俺は、手を出すなよ? という視線を送っておく。
*
…どうしよう……
「どうしよどうしよ!!」
今日は久しぶりにお兄を独り占めできると思ってたのにぃ〜!
っていうか中宮くんが来ること聞いてないし!
あぁもう!なんで連れてきちゃうかな〜!
いやね? 中宮くんが来ちゃだめとか、家が散らかってるからとかじゃないんだけど…だけど……
──お兄…乙女心わかってないなぁ〜
でも、こうなったからにはやってやる!
っていっても、何しよう? まずはおしゃれしよう! わたしも一応女の子だしね? でも今回は中宮くんが来るのか…
わたしはクローゼットを全開にする。
「お兄と中宮くん、どっちの好みにしよう…」
と呟いたものの、わたしの手には既にお兄の好きな服があった。
「わたしはお兄に可愛いって思われればいいのっ!」
もちろん、中宮くんからも可愛いとは思われたいけど、1番はお兄だから!
──ガチャッ
あっ!帰って来た!
よし!練習通りにお兄を迎えるぞぉ!おー!!