25話 決死の質問
朝食を食べ終えた俺は洗い物を急いで終わらせ、部屋の机に向かっていた。だがそれは勉強のためではなく、再来週に控えた胡桃の文化祭の予定を組むためのもの。
何時に何をするのか、これを今のうちに決めてスムーズな1日を送ろうとしているのだ。
幸い、胡桃の通っている中学校は俺の母校でもあるため、内部構造はわかっている。胡桃のクラスも知っているから、あとは各クラスが何をしているか。それだけを知りたい。
胡桃には、誘われたから行く、という設定にしている。だから楽しみにしている姿を見せないし、パンフレットなども当日受け取る。事前にパンフレットを貰っていたら予定を組んでたと思われるからだ。実際そうなんだが。
────コンッ、コンッ
優しいノックオンが部屋に響く。
「お兄今いい?」
胡桃か。まあ今家には俺と胡桃しかいないんだから、それ以外の人だったら問題なのだが。
「いいぞ、どうしたんだ?」
予定表を机の中に隠し、胡桃の入室を許可。
胡桃の手には何か広告のようなものが握られていた。
「わたしの学校の文化祭、来るんでしょ?」
「まー、予定が合えばな」
ここでも『楽しみにしてませんオーラ』を出すためにあえて、行く! とは言わない。
「これ」
俯きながら何かを差し出した胡桃の手には、文化祭のテーマらしきものが書かれたパンフレットや招待状、あと何かしらのチケットがあった。
「パンフレットはわかるが、あとの2つはなんだ?」
「招待状は学校の卒業生限定なんだけど、これ使ったらなんか貰えるらしいよ」
なんかって、曖昧だなぁ……
「そか。で、こっちの、チケット?みたいなのは?」
「それは私たちの店の引換券」
「へぇ、店やるんだ」
何の店か聞きたい。でも『楽しみにしてませんオーラ』を保たなきゃいけないし。いやまて! 何の店をやるかぐらい普通に気になるからこれは言うべきなのか? よし、言おう。心を落ち着かせて。3……2………
「お兄?」
「ひゃい!」
心臓止まるかと思った。
「ど、どうした?」
「いやそれこっちのセリフ。なんかさっきからボーッとしてたけど、なんか悩み事?」
「いや、大丈夫……ではないかな?」
大丈夫だと言いたいが結果的に問題は解決されていない。
「何かあれば相談に乗るよ?」
妹がよく出来すぎて泣きそう。
「そうだな、1ついいか?」
「ん〜?」
「文化祭さ、胡桃のクラスは何の店やるんだ?」
胡桃は少し頬を赤らめながら口を開く。
「どっ、動物……カフェ………」




