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16話 天使と見る悪夢

 海斗たちと別れてから俺、えな、ひな先輩の3人はジェットコースターに向かう。

 最初に乗ったジェットコースターよりかは優しめ。だがこれくらいじゃないともう限界が来る。

 朝ごはんの目玉焼きさんが口からこんにちはしてしまう。

 それを逃れるためにこの子供向けのコースターを選んだのだ。

 ひな先輩は意外とこういうのが好きらしく、子供向けのデザインに「かっわいぃ〜!」などと喜んでいる。

「そんなに人も並んでないし、これ乗ろうよ!」

 えなも乗りたいのか。よし!行くか!


「胡桃ちゃん、何か乗りたいものとかある?」

「ん〜、スペースショットとか乗ってみたいかな」

「うっ……」

 辛そうな声を出す海斗と、ちょっと気まずそうに答える胡桃。

 残された側の2人は残した側の3人より比較的静かに歩いている。

「あっ、嫌だったらいいよ?ジェットコースターの酔いとか残ってるかもしれないし……」

「あぁ、ごめん。大丈夫だよ」


 待ち時間は意外と短く、すんなりと乗れた。しかし、さっきのジェットコースターの良いが少し残る海斗に悲劇が怒る!と予想していたのだが、何故か海斗は無事だった。

 どうしてだ?

 理由を考えていた海斗にひとつの回答が降りてくる。

 さっきとは違うところ。

 胡桃だ。さっきはエレーナちゃんと隣でジェットコースターに乗ったから酔った。だが今は胡桃ちゃんと乗ったから酔わなかった。これで辻褄が合う!

 こんなアホみたいな話があってたまるか!と言いたいのだが、恋する乙女心の海斗になら有り得るかもしれなかった。

 だが人間、思い込みで影響されることがあるらしい。海斗の考えはあながち間違っていないかもしれない。

「あっ、ねぇ胡桃ちゃん。次はあれ乗ろうよ!」

「え、大丈夫なの?」

 胡桃が心配するのも当然。海斗が提案したのは、さっきよりも高低差がある。

 海斗は1回登って下るだけのジェットコースターで吐きかけた。それなのに今は、何度も上り下りするものに乗ろうと言っているのだ。

「だ、大丈夫?酔いすぎて頭がおかしくなったとかじゃないよね?」

 3つ年下の女の子から頭の心配をされる男子高校生、中宮海斗。

「大丈夫だよ、そんな目しないで」

「まぁ、それなら行こっか」

 誤解が解けていない気がするが、ここはいいだろう。

「あっ、30分待ちだって!意外と短いね」

「ほんとだ!じゃあ並ぼうか」

 このアトラクションはこの遊園地でも人気の方。いつもなら2時間待ちとかが普通だ。夏休みとかには5時間待ちは毎日。

 こんなに待ち時間が短いのは初めて見た。

 30分間ひたすら立ち続け、待つのは精神が疲れるはずなのだが、ここも胡桃の影響か、全く疲れが出なかった。

 数分に感じられた待ち時間を乗り越え、海斗たちの順番になる。

「胡桃ちゃんは右側と左側、どっちがいい?」

「それじゃあ、右側で!」

 右に胡桃、左に海斗で乗る。ちなみに全員横一列ということで、前には何も無い。視界はかなりいい。

 スペースショットはガタガタと揺れて上昇する。

 1番前高いところまで登った時、胡桃が声をかける。

「ねぇ!見て!あそこにポルリンがいる!」

「え?どこどこ?」

 ポルリンというのはこの遊園地のオリジナルキャラクターで、開園当初から存在する。魔法の結界とやらで、この遊園地から出られないらしい。

「あっ、いた!でも…」

「でも?」

 さっき頂上にたどり着いた。ということは…

「…来た」

「来た!」

 テンションが異なる2人。そのうち低い方の海斗を置いてスペースショットは落ちる。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

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