14話 恋の三半規管
ジェットコースターってこんなに凄かったんだ…
今乗ったのは宙吊りタイプのジェットコースターで、何度も一回転した。
ここで、ジェットコースターに乗った感想を聞いてみよう。
陸斗『ごめん。吐きそ……』
胡桃『お兄弱いなぁ…』
海斗『さすがにこれはきついわ……』
ひな先輩『いや〜楽しいね〜ってみんな大丈夫!?』
えな『日本のは意外と優しいコースターなのね』
とそれぞれ感想を述べている。ってか女子軍強すぎませんかね!?
三半規管俺と交換しない?
新手のナンパと思われたくないから声には出さないけど…
まだ1つ目のアトラクションなのに、5分の2がダウンしている。頑張れよ。男。
俺がその頑張る男側なのは置いといて、女子軍に気になることを質問。
「な、なんでそんな元気なの?」
「私たちは普通だよ?男の子ってそういうの弱いの?」
え、マジで?男子って三半規管弱いの?
そんなこと無いと思うけどなぁ……
「陸斗。三半規管って鍛えられるのか。?」
「わかんないけど、頑張るか…」
男ふたりの会話に胡桃が入ってくる。
「ビシバシ鍛えてあげるか?」
「やらなくていい」
「え?ほんと?スパルタな胡桃ちゃんもまた───グホォ!」
あっ、ごっめ〜ん☆
気づいたら殴ってた〜☆
海斗の腹にめり込んだ右腕を引っこ抜くと、胡桃と目が合う。さっきまで満面の笑みで俺たちをスパルタしようとしていた胡桃が、次は驚いてる。
「あれ?ちょっとまって?」
何かに気づいたらしい胡桃。少しの間を経て話し出す。
「ま、まさか…」
「ん?どした?」
胡桃は少しモジモジしながら言う。
「中宮くん、前に好きな子がいるって聞いたことあるんだけど」
「「あっ…」」
いや〜な予感…
なんというかその、嫌な…
固まりそうになる俺たちを置いて胡桃は話を続ける。
「中宮くんの好きな人って、私だったりするの?」
「気づいてなかった?」
「気づいてなかった」
さすがおバカな胡桃さん。そんな事にも気づかなかったとは……
…俺の気持ちにも気づいてないっぽいけどな。この鈍感野郎め…
「悪ぃ、気持ち悪いからトイレ行ってくるわ」
俺は席を外す。
「だ、大丈夫?りっくん。私も心配だから着いてくよ」
「そ、そうね。ほらりっくん。しっかりして」
空気を読んでくれたらしいひな先輩とえながオレに着いてくる。
胡桃たちから見えないベンチに座る。
「呼ばれるまで待とう」
「うん」
「そうだね」
2人が海斗の気持ちに気づいていたのかはわからないが、今しっかりと対応してくれていることに、感謝しておこう。
「ありがとな。あいつのために」
急な感謝だったからか、おかしな目で見られた。
「どうしたの?急に」
「りっくんらしくないね」
「いやさ、2人ともあいつに協力してくれただろ?だからだよ」
「まぁね」
えなはサラッと答えるが、ひな先輩は黙っている。
「どうしたんですか?」
下の方を向いたままひな先輩は答える。
「2人だけにしてよかったのかな〜って、おもってさ」
「…………?」
俺とえなの2人は全く理解出来ずに目を合わせる。
「えっと、ひなこさん。どうしてですか?」
「えっと、言いずらいんだけど……」
何か問題でもあるのかな?
「胡桃ちゃんはりっくんのことが好きだから、海斗くんのことを降ると思うんだよね」
「それが何か問題でも?」
「……その後、気まずくない?」
「あっ……………………」
えなは考えてなかったらしい。
「告白なら、最後にするのが普通じゃない?」
………確かにそうだ。だが、それは“普通の人なら”の話。
海斗は違うんだ。あいつが馬鹿なのは事実だが、それはみんなの前での話。
誰もしないところでは先の先まで考える頭脳を持っている。
俺とふたりの時や一人の時は。
絶対に何かあるはず。
ただ告白するなんて、あいつはしない。




