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引きこもり魔導士の王国再生  作者: きだおさむ
4/5

第4話 次女

「今度は気を付けないとな…」

ミリアとラウルは、国王の次女ルセナがいるという、ブラス将軍の別荘の前にいた。

「そうですよ! アルミラ様の王宮ではひどかったですから!」

ラウルがあきれた様子でいった。

「あれは、ちょっとした勘違いみたいなもので、たいしたミスはしてないだろ…」

「えっ!? そういう認識!?」

「ん? おまえ、今なんつった?」

「ちょっと本当にひどいですよ、ミリア様。軍隊出動させて、大砲まで打たせて、国家反逆罪手前まで行ってて… それを『ちょっとした勘違い』?」

「うるせえな…」

「いや、ダメですよ、本当に。悪いところは悪いって反省しないと… 同じ間違いを繰り返しますからね」

ミリアが舌打ちした。

ラウルから目を離して、遠い空を見つめだす。

これ以上は踏み込まないようにした方がいい。

どうせ聞いていないから。

「今度は、何に気を付けるんです?」

「ここには、ババアがいるからな…」

「ババアって… え? ひょっとして、国王妃のマリアナ様のことですか?」

「他に誰がいるんだよ!」

「よくわかりませんけど…」

ラウルが言葉をにごす。

「うるせえんだよ、あのババア。やれ王家の人間はそんなことしちゃいけない、とか。作法作法ってよ」

「まあ、マリアナ様のいうことを聞いていたら、もうちょっとマシな人間になったかもしれませんが…」

「はあ?」

ラウルはまた失敗したようだ。

「おまえ… 最近、距離感おかしくないか?」

「そうですかね」

「世が世なら、アタシは国王の娘だぞ」

「はあ…」

「おまえごときが口きける身分じゃねえんだぞ」

「いやあ、ミリア様がダメ人間すぎて、ちょっと忘れかけてました」

「てめえッ!」

そこで、別荘の門番が声をかけた。

「おいっ! 貴様ら! ここをどこだと思っている! 痴話ゲンカなら他所でやれ!」

ミリアは、ブチ切れである。

「痴話ゲンカじゃねえわッ!」

それをラウルが抑えた。

「まあまあ、ミリア様。ここは穏便に…」

プリプリと怒るミリアも、舌打ちしながら、しぶしぶ従う。

「夜を待つか…」


さて、夜である。

ルセナが自身の寝室に入ったところで、ミリアが声をかける。

「ルセ姉…」

ハッとするルセナ。

「ミリア! あなた、私を殺しに来たのね!」

「?」

「アルミラ姉さんに会いに行ったと聞いたわ。姉さんは私を殺したがっている!」

「違うよ!」

「ウソだわ!」

逃げるルセナ。

追うミリア。

「やめて! 殺さないで!」

「違うよ!」

「ウソよ!」

ベッドを間に挟んで、走り回る2人。

「殺しに来たんじゃないってば!」

「ウソよ! 姉さんの考えることは知ってるのよ!」

「あー、もうーッ!」

逃げ回るルセナに、イラだったミリアは、呪文を唱えて、ルセナを指さす。

「話を聞けーッ!」

ルセナは金縛りにあったように、体が動かなくなる。


上がった息を抑えるルセナ。

そばにミリアが立っている。

「…落ち着いた?」

「ええ、でもミリア、何をしに来たの?」

「話を聞きに来ただけだよ」

「殺しに来たんじゃなくて?」

「アル姉はそうしたいらしいけど…」

「やっぱり…」

「でも、アル姉も本当はそんなことしたくないって思ってる。心の底じゃそう思ってるんだよ!」

「同じよ、どっちでも同じ」

「……」

「権力なんてイヤなものだわ。手に入れたら、周りの人間はそれを奪おうとするだけ…」

「そんなこと…アル姉だって、そんなの欲しがってないよ」

「アルミラ姉さんはね。でも、普通の人間はそうなのよ」

「それが、ルセ姉の知った現実か…」

「ママも…」

「あのババアがどうかしたの?」

「あの人はね、パパの生前から将軍とデキてたの。パパは清貧な人だから、贅沢したいママとは合わなかったの。だから、パパが死んでアルミラ姉さんが王位を継承されたら、私をそそのかして反乱を起こしたのよ…」

「ババア… ホント、クソだな…」

「姉さんが不正を働いてるって、証拠を見せられたわ。でも全部ウソ! 不正を働いてるのは、将軍の方だった! あの人たちは私腹を肥やしたいだけだったのよ!」

ルセナは涙を流して、床を叩いた。

「……」

「でも一度始めたらやめられない… まちがってるってわかってもやめられないのよ…」

途方に暮れたミリアがいった。

「アタシ… どうしたら…」

ルセナは、愛しそうに妹を見つめた。

そして、絞り出すような声でいう。

「どうしようもないわ… ミリア… あなたは元気に生きるのよ…」


ラウルがいる場所に戻ってきても、ミリアは何もいわなかった。

何もいえなかった。


                 FIN

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