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忘れ者  作者: 芦屋奏多
宝探し
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宝探し-6 プレイヤー和志 ローリスクハイリターン

「へぇ……。なるほどなるほど」


 駅近くの宝探しデパートから、駅とは反対方向への道を歩いていた。


 一つ知れば一つ面白さが見えてくる。駅前の電光掲示板も、スマートフォンに内蔵されているアプリも、この取扱い説明書も俺の興味をそそるものばかりだ。


 アプリを開きながら歩いていると、赤い矢印は自分の進行方向へと動いていく。


 その周囲には青い矢印が三つある。


 周囲と言っても結構な距離がある事は、地図の大きさから見て理解出来る。


 まずは自分の状況を知る事が大事だ。


 そのためには、出来る事と出来ない事をしっかりと判別しておく必要がある。


 まずは、正解と不正解を試してみなければならない。


 まずは分かりやすい不正解を目指す事にした。


 正解を導き出すよりも、不正解を導き出す方が圧倒的に簡単だと物事は決まっている。


 そして目の前に不正解がぶら下がっているのなら、それを試さない手は無い。


 アプリに映る地図と矢印を頼りに、円形の路線の端まで行く事にした。


 場所は駅から一番遠い場所にした。


 駅前だと変化が解らないかもしれないし、ここまで来てしまえば何かの変化が起きた時に解りやすいと思ったからだ。


 円形の路線の端まで来ると、踏切があった。ここに暮らす住人達は自由に行き来をしている。


 けれど、踏切の横に白に赤い字で『横断禁止』と書かれていた。


「なるほど……。まずはここからだな」


 言ったと同時に一歩目を踏み出す。踏切の中に入り、歩を進めていく。


 今のところは変化はない。


 一歩一歩進む。最後の一歩を踏み越えると、遮断機が警報を鳴らした。


『横断禁止。横断禁止。イチ輪、没収』


 すると、手に持っていた青い花束のうちの一本が枯れていった。


 枯れ朽ちていった花は、地面に落ちると灼熱の陽に溶けていった。


 手に持っていたアプリを確認する。


 地図に示されていた矢印は、先ほど自分が入っていった方向と逆を向いている。


 つまり、渡った先が元いた場所になっている。


 これは何度出ても同じ結果が待っているのだろう。


 入っては元の場所に戻り、出てくる。


 問題は、この手に持っている花が枯れたと言う現象だ。


 推察するにこの花は自分のライフのようなものなのだろう。


 ゲームと言うのだからこの表現で合っているのだろう。


 つまり俺のライフは九つから始まり、今一つ消え、八つになった。


 それをもう一度確認する必要がある。確証を得たい。


 俺はまた踵を返し、横断歩道を渡った。最後の一歩を踏み込むと、また先ほど自分のいた場所に戻った。


 警報が鳴り響く。


『横断禁止。横断禁止。イチ輪、没収』


 手に持っている花を見ていると、一輪が急速に枯れ地面に落ち、灼熱に溶けた。


「なるほどなるほど。これは面白い」


 思わず笑みが零れてしまう。恐怖や面倒臭さは消えていく。


 愉しいという単純な感情が心を満たしていく。


 こういうものを探していたのだ。


 自分を賭け、勝てば賭けた自分が更に見返りを宿して帰ってくる。


 逆に負ければ自分のいらないもの、という賭け額に対して比例していないものを失い帰る。


 正にローリスクハイリターンなものだ。


「さて、ここまで解ったら次は……。まあ、次は接触だな」


 アプリで自分の居場所とその他の居場所を確認する。


 ついでに時刻も確認してみる。


 三時三十二分を指していた。残り五時間二十八分。


 もうすでに残り時間は半分を過ぎている。


 時間は無駄に出来ない。


 まずは近くにいる矢印に接触を試みよう。


「ここから近いとなると……。なるほど。宝探しバーガーか」

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