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忘れ者  作者: 芦屋奏多
宝探し
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宝探し-3 プレイヤー恵美 各駅停車場所

『ぴんぽんぱんぽーん。敗北者、イチ名。タイムリミット、十時間。タイムリミット、十時間』


 スマホから告げられた音声がやたら鬱陶しい。


「なんなのよ、この……!」


 スマホを地面に叩きつけたくなった。右手に持ったスマホを振りかぶったところで動きを止めた。


 ダメだ……。


 スマホを握りしめて胸に抱える。


 深呼吸を一つした。


 深く息を吐くと、ちょっとだけ気が楽になったような感じがした。


 要は気の持ちよう、かな。


 この手に持っているスマホが自分の運命を握っている気がして、壊す事は躊躇った。


 多分、壊してしまったらこの世界から逃げだす事が出来なくなる。


 ただ、そんな気がするだけ。


「えっと……、さっきデパートがあったから、駅はこっちかな?」


 見た事も無い風景の中を歩いて回る。


 結構な都会のビルが並んでいるのに、自分の記憶に無い場所だと言うのがまず驚きだった。


 都心部なら大体は言った事があるのに、これだけ栄えているのはもっと別の場所なのかもしれない。


 だけど、外国じゃない事はわかる。


 通行人も、店や建物の在り方はその場所場所で独特のものが生まれるからだ。


 だからなのか、違和感だけしかなかった。


 こんな場所を見た事が無い、と言うのが一番の違和感だと言う事だ。


「とりあえず、駅に行きたいのにぃ。もう! 疲れたぁ……」


 この変な場所に来てから散々だ。


 暑い上に、見た事ない場所で、スマホは役に立たない。私は役に立たないスマホの電源をもう一度つけた。


 一つだけ残っているアプリを起動させた。


『各駅停車場所』という名前のアプリだった。


 意味が解らない名前だったから、怖くて開けなかったけど、ようやく開いてみる事にした。


 恐る恐るタップしてみる。


 すると、数秒間のロードがあり、一瞬だけ画面が暗くなった。


「何だろ。怖っ」


 暗転した画面から最初に映しだされたのは上空から映している地図だった。


 地図に描かれているものは、円形に線路があり西側に『宝探し駅』という駅だけがあった。


 線路より外側のエリアは、黄色と黒でしま模様になっている。


 よく工事をしていたり、ドラマとかで警察がこういうテープを貼っているのを見る。


 多分、立ち入り禁止のマークなのだろう。


 線路内のエリアには、宝探しデパートとその周辺のコンビニや施設の名前があり、青い矢印が三つと赤い矢印が一つあった。


「この矢印、何だろ。青が三つ、赤が一つ……。でも……。ん?」


 じっと見ていると、それぞれが少しずつ動いていくのがわかった。


 リアルタイムで動いているのだろうと言う事は予測がついた。


 だからなのか、一つの矢印が動いていないのがわかった。


 視線を外に向けると、すぐ近くに『宝探しジム』という意味の分からないジムが見えた。


 そして、地図の中にも「宝探しジム」があり、そのすぐそばに赤い矢印もあった。


 嫌な予感と、恐怖心が湧いてくる。この暑い中だからじゃない、冷たい汗が背中を伝っていく。


 私は、スマホの画面を見ながら歩いてみる。


 すると、止まっていた赤い矢印がゆっくりと動き始めた。

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