プロローグ
初心者、初投稿、拙い文ですが、少しでもお楽しみいただければ幸いです。
登場人物にモデルはおりますが、あくまでフィクションです。
ほんの少し期待していた1999年も特に変わったことが起こることなく、世界は21世紀を迎えた。
このフレーズにピンと来るのはもう大人たちばかり、大学生でさえ、この年に世界滅亡の噂が広まっていたのを知識として知る程度だろう。かくいう高校生の私もその一人だ。いつだったか、小学生の時の担任の先生が「君たちは世界が終わる年に生まれたんだね」と話さなければ知りもしなかった。
そんな些細なエピソードを差し置いても、現実社会というは退屈だ。宇宙人が攻めてくることもなければ、正義のヒーローもいない。妖怪の世界もタイムトラベラーも魔法少女も存在しない。かつて夢みた子供の世界は創作の世界でしかその存在が許されない。この文明社会で、いつまでも大真面目にその夢を信じていたら白い目で見られるのだ。
今が1999年ならよかった。それなら世界滅亡というファンタジーを大真面目に信じても許されたかもしれない。当時をしらない私だったがそんなことを想像することが増えた。でも、どうせそれも馬鹿げてると言われるんだろうな、とも思うのだ。小学校を卒業して中学に上がる頃にはそんなこと考える人になっていた。
どうしても、毎日がつまらなかった。つまらない時代に生まれたな、と思っていた。こうして私はいつの間にかその中学も卒業し、高校の入学式を迎えた。
とはいえ、私が通うのは中高一貫校だ。中学の頃と変わらない同級生に校舎。ネクタイの色の他に変化のない制服。つまらない。つまらない!
初めてのホームルームはぼんやりとしていたら終わっていた。
「くるみ、お弁当一緒に食べようよ」
声をかけてきたのはちーちゃんこと、岩田千晶だった。中学の時同じクラスになったことはなかったけれど、同じ図書委員だったので前からそこそこ仲はよかった。
「うん」
私の新しいクラスでの友達作りはこんなものだった。他の子もクラス分けの組み合わせが悪く、仲のいい子が同じクラスにあまりいない、なんてことはあれど、皆が中学入学時からの知り合いだ。友達のグループに入れない子はいなかった。
「なんかさ、入学って感じしないよね」
これはちーちゃんの言葉。
「ほんとだよね。ネクタイの色が変わるだけの進級だよ」
そして、私の思っていたことそっくりそのまま口にしたのは私たち二人の昼食に途中参加してきた、小谷りなだった。これまで接点のなかった彼女が参加してきたことに内心驚いたが、実は、ちーちゃんと彼女は小学生の時からの付き合いだったらしい。彼女は、リナって呼んで、と私に一言、後はこれまでずっと友達だったかのように私にも気さくに接してくれた。
高校一年生の固定メンバーはこうして揃ったのだった。
高一は一番忙しいよ~とはどこかの運動部の先輩情報らしい。なるほど、数学は二人の先生が担当するし、理科も化学と生物両方、世界史もヨーロッパ史と通史の2つだった。その分この私立校はテストされる科目は増えるのだから、大変だ。しかも、この学校は付属大学に進学する人が過半数で受験対策はない。つまり、授業は先生の趣味に色付けられ、教科書は役立たず、一度の睡眠学習さえ致命的だ。と、私は思うのだが、余裕なのかやる気がないだけなのか、少なくとも我が友人約2名はどこ吹く風状態。興味のない授業をリナは寝過ごし、ちーちゃんは内職するのだ。それなのに総合の成績は悪くないのが憎たらしい。
この頃から二人の生態が暴かれつつあった。
リナはクラスで目立たない私とちーちゃんと一緒にいるわりに活発で目立つ。この子にもっとも程遠い言葉はきっとコミュ障だろう。そして案外好奇心旺盛でどんな話題でも乗ってくる。あとは、余談だが、クッキーよりさきいかを食す少女だ。何を言いたいかと言うと、甘い食べ物を受け付けない。
ちーちゃんは、図書委員のイメージから文学少女と思えばかなりの変人だった。いや、文学少女に違いないのだが、素晴らしい妄想力と恋愛観を持つ文学少女兼数学フリークだ。この子の内職の九割が数学で、成績は理系科目によって底上げされ、平均を飛び越えるのを私は知っている。
くらべて私は普通の人、と言いたいところだが、友達は口を揃えて変人だよ!と答える。納得できるほど具体的に説明してくれないので、これには半信半疑だ。しかし変人、すなわち個性的は誉め言葉だから問題ないと捉える人種ではある。楽観的?もちろん。そして、リナと同じく友達作りは苦手じゃないし、好奇心旺盛は旺盛な方だ。成績はちーちゃんとは真逆の文系人で、国語と英語と美術によって支えられている。
「大いなる悲観主義は大いなる楽観主義と通ずる。これってどう思う?」
「ねぇねぇねぇ!この三つの数式の中で一番数式らしいのはどれ?」
「国のために尽くしたい。案外国家の犬も悪くないよね」
驚くなかれ。これが私の青春の第一頁となった。
読んでいただきありがとうございました。お楽しみいただけたでしょうか。
更新は不定期となりますが、次回もよろしくお願い致します。