3 「邂逅」
家族の記憶を話そう。
父と母と兄と、懐いていた愛犬。懐っこいコーギー。
父は仕事で家にいる印象はない。それほど忙しかった父だけど、夏には必ず休みを取って旅行に連れて行ってくれた。
料理はお世辞にもうまいとは言えなかった母。でも、その手は温かかった。それが洗濯を終えた後でも。
兄はいつも俺に意地悪ばっかり。だけど父や母以上に、俺の一番の理解者だった。
コーギーはチャコ太郎って名前だった。ネーミングセンスのない父がつけた。トイレの水を飲むようなバカ犬。だけど憎めないやつ。
家族と紡いだ楽しい思い出。そのフィルムの最期は、俺を置いてけぼりにして仲良くお風呂に入っているシーンで終わる。なぜかお風呂は真っ赤で、誰も嬉しそうな顔をしていない。
チャコ太郎でさえ、目と口をだらしなく開けていた。
その意味が分かったのは、物心ついた時・・・いや、それより前から、俺は無意識に気づいていたのかもしれない。それが、どういう意味だったのか。
心優しい祖父母も、私がガーディアンになることが決まったと同時に、事故で他界した。
それが俺―佐保川貴也の記憶。
今日、また1人、私の元を去った。唯一のパートナーが。
私の周りにいる人は、いつも私を置いて去っていく。
家族も、友達も、全てが。
それでも私は信じていた。信じたかった。信じていたかった。
でも、俺は…何故なんだ…俺は…。
俺がガーディアンになった理由、それは――




