私は唄う
―あらざらむ この世のほかの思ひ出に
いまひとだびの あうこともがな
私は、この短歌を詠んだ人と同じ想いを抱えている。
真っ白い部屋の中でこの短歌を唄う。
小さい頃から、身体に重い病気を持っている私は、いつ発作を冒しても可笑しくない状態だった。
だから、いつも一人ぼっちで部屋にいた。生きることを諦めようとしていた。
でも、彼と出逢って生きる喜びを知った、死ぬことが恐くなった。
小さい頃は、歩くことも走り回ることも出来たこの身体は、今では思うように動かない。それだけ病気に蝕まれていた。
薬で一時的に楽になるけど、私には分かる。
もう少しで死ぬことを。
でも、私は諦めない。
彼が私の病気を治してくれるって約束したから。
彼が医者になるのは大分先かもしれない。
でも、待ち続ける。
だって私は、彼のことを信じてるから。
だけどね、一人にしないで…。
一人だと、不安で押し潰されそうになるから。
だから、お願い。
一人にしないで…。
私は、彼を想うことを止めなければいけない。
彼のためにも、私のためにも。
でも、彼のことが好きで…大好きだから。
まだ、想っていても良いですか?
例え、この想いが貶されたって私が彼を好きなことは、変わらない事実だから。
私は、また唄うよ―。
「死」が私のこの身を包み込むまで、
いつまでも、いつまでも
真っ白い部屋の中で唄うよ―
あらざらむ この世のほかの思ひ出に
いまひとだびの あうこともがな―。
私はこの世から居なくなるでしょうが、せめて…あの世の思い出に、もう一度貴方にお逢いしたいものです。